「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」


本年度のアカデミー作品賞にもノミネートされている、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(原題:Extremely Loud & Incredibly Close)」をレイトショーで観てきた。
ジョナサン・サフラン・フォアによる原作小説については、タマフルの推薦図書特集で伊藤聡氏が紹介されたのを聴いて、「自分が好きそうな話だな」と思ってはいた。原作本を買おうとも思ったが、すでに映画化もされて日本公開もまもなくだということを知って、あえて「9.11で親を亡くした少年の話」ということ以外は詳しい内容をインプットしないままにしておいた。
とはいえ、スタッフに連ねられた名前を観て、観る前から作品のクオリティについては間違いないと踏んでいた。
主人公の両親をトム・ハンクスサンドラ・ブロックが演じ、脚本も「フォレスト・ガンプ」のエリック・ロス。監督のティーブン・ダルトリーは「リトル・ダンサー」の監督でもあるので、これはもう主人公オスカーを演じた天才子役少年のトーマス・ホーンを世に送り出すための完璧な布陣だったと言ってもよいのではないか。
とにかくオスカー役のトーマス君が素晴らしい。
U2の「WAR」のジャケットの少年のような、訝しげな表情をしながらも真っ直ぐに見つめてくるあの純真な目、その眼力だけで引き込まれてしまう。
もともと自分は、とにかく「いじらしい話」というのがたまらなく好きで、それも「一見バカバカしいことだが、本人にとっては重要なことを、あえてやる」とか、「周囲は誰も理解してくれないが、孤独に耐える」とか、「本当は逃げ出したいが、なけなしの勇気を振り絞る」といった要素が入っている話には、どっぷり感情移入してしまうのだった。
そのすべての要素が入ったこの作品、それをこんなに目がキラキラした少年が生き生きと演じるのだから、心をわし掴みにされないわけがないんだな。
少年をこっそり支える、祖母の家の間借り人で、言葉が発せないなど謎が多い老人を演じたマックス・フォン・シドーの演技も素晴らしく、その表情だけで多くのことを語りかけていて、佇まいを観ているだけで胸が熱くなる。
個人的には早くも2012年ベスト級の評価をしたい作品だった。
映画では少年の話にクローズアップして描いたらしいが、原作小説は多角的な視点も入っているらしいというし、いずれ読んでみよう。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

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