「ジャズと格闘技」

サイコロジカル・ボディ・ブルース解凍 (白夜ライブラリー001)

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先日の「粋な夜電波」は、菊地先生のTHE OUTSIDER観戦のために、生放送ではなく事前の収録によるものでした。
昔からの菊地ファンの方なら、先生が格闘技にも造詣が深いことは周知の事実なのでしょうが、自分のような「夜電波」が始まってからのファンで、音源や著作を追っかけるのもやっとの人からすると、「そんなとこにまで及んでいるのか〜」と驚いているのが正直なところです。
実際、最近菊地先生が表紙になったものでも、格闘技関連の雑誌とかまでは購入に至っていません。しかし時々ラジオで前田日明氏について熱く語られるのを聴いて、少し興味が出てきているところでもありました。

ちょうどそんな時、自宅のHDレコーダーのおまかせ録画で、「菊地成孔」をキーワードに設定していたら、先日スカパーで放送された「BAZOOKA」が録れていたので、ちょっと見てみたら、菊地先生が普通に授業されていたので笑いました。
内容も格闘技の技術についての解説や対戦の展開予想とかではなく、「OUTSIDER」というキーワードに関連して、アートと音楽の話に持っていったので、熱心な格闘技ファンではない自分が観ても大変面白かったです。
アウェイ感が漂う中、テレビ的なアドリブによる茶々を入れられつつ、講義スタイルで話を進めるのは、確かにやりにくそうでしたが、帰りのタクシーの中で泣くほどではなかったと思います(笑)。
ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

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なぜジャズミュージシャンが格闘技にも精通しているのか、というと、これは菊地先生が例外ということではなく、意外にそういう方も多いのではないかと思われます。
やはり入り口はマイルス・デイビスがボクシングをやっていた、というところからなのでしょうか。
先日のメソッド初等科の授業でも、菊地先生が「2次ケーデンス」についての解説をされる時に、「通常のコード進行がパンチ一発でいくところを、間に2次ケーデンスを挟み込むことによって、1、2、3…ジャブ、ジャブ、ストレートという感じにして、バリエーションを増やしていく」というような喩えをされていて、それが非常にわかりやすかったのですが、ボクシングの間の取り方などが音楽に通じるところがあるのでしょうね。
思えばジャズのインプロビゼーションというのも、自分の中に様々な演奏のバリエーションを用意しておいて、それをその場でその時に応じて、パンチやキックのように次々に繰り出していくようなものだともいえますし、ましてソロの掛け合いともなれば、相手の出方次第で演奏も変わってくるのも当然なことなのだと思います。
おそらく菊地先生は1曲の音楽を聴くように格闘技の一試合を観られていて、一枚のアルバムを聴くように一回の興業を楽しまれているのではないでしょうか。
純粋に格闘技だけ好きな方も、脳内での動きは同じなのかもしれませんが、それを言葉に置き換える時のアプローチの角度が異なるので、アートや音楽に絡めて説明しても、ピンとこない人が多いのかもしれません。
ただ自分のようなサブカル好きには、そういうところから格闘技に興味を持ってもらう話法というのは有効だと思いました。
ただ、ジャズを通して黒人文化に詳しくなってくると、どうしても不良文化や対決の姿勢みたいなものを避けて通れないところがあって、それがなぜか日本だとヤンキー文化と切り離せないところになるのが厄介でもありますね。
もともと「喧嘩が強いからなんだっつーのさ…」と隅っこでブツブツ言ってるような奴だったからこそ、サブカルに走ったりもするわけで(笑)。
やっぱり、元々が不良のケンカが発展したという「THE OUTSIDER」は、まだ怖くて観れませんや…。
ミンガリング・マイクの妄想レコードの世界 アウトサイダーソウルアート (P-Vine Books)

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