「ポスト非リア充時代のための吾妻ひでお」


吾妻ひでおという漫画家のことは知っていたし、それこそ70年代後半に週刊少年チャンピオンで連載されていた作品とかは読んでいた記憶もある。(個人的に80年代は少年サンデーの全盛期だったが、70年代はチャンピオンの全盛期だったと思っている。)
しかし、数年前に「失踪日記」が話題になった時はじめて、「あ、そんなことになってたんだ…」と驚いて、それまでこの作家のことをすっかり忘れていたことにも気がついた。
その後も、特にあらためて作品を読んでみようという気になることもなく、今まで過ごしてきたのだが…。
まさかここへきて、菊地成孔先生関連で、吾妻ひでお氏の作品を再び読むことになるとは思いもしなかった。
そもそも、いわゆるオタク文化とはあまり接点がなさそうな菊地先生の活動の中で、監修を務め、解説も書き下ろした作品集を出版するほど、吾妻ひでお氏のファンだったことを、最近になって知ったのだった。
唯一コンプリートしていて、自ら「吾妻ひでお原理主義」を名乗るほどの熱烈なファンだというのに驚いたが、それを聞いても、なぜ、吾妻ひでおだけが菊地氏にとって特別なのか?という疑問が残る。
とりあえず菊地成孔ファンとしては「先生が薦めているのなら…」というミーハーな動機で、この(なぜか「でんぱ組inc.」の夢眠ねむさんが表紙の)作品集を買ったわけだが、刊行記念の対談イベントも行なわれるということで、そちらの参加券も購入した。
6月22日にリブロ池袋本店にて、吾妻氏本人と菊地先生のトークが聞けるという、またとない機会。この対談を聞けば、なぜ菊地先生が吾妻氏の作品をこよなく愛しているのか、その秘密が明らかになるのかもしれない。今から楽しみだ。
この作品集を買って、肝心のマンガより、真っ先に前書きと解説を先に読むという、作家本人に対しては失礼な入り方をしてしまったが、解説を読んでいるうちに吾妻作品に対する興味も湧いてきたのも確か。
小学生の頃、チャンピオンで「ふたりと5人」や「ちびママちゃん」を読んでいた記憶もぼんやり蘇ってきたし、不条理ギャグやシュールなSFという世界観も、今再評価されてしかるべきだと理解し始めている。
同時に、菊地成孔氏を入り口とするなら、吾妻ひでお作品単体としてではなくて、筒井康隆氏を経由することは避けられないということにも気付いた。
またも知っているようで実はほとんど知らない巨人が立ちはだかることになり、興味が尽きることはないが、掘って行くにはそれなりの覚悟が必要そうだなあ。