「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」


入江悠監督の「SR サイタマノラッパー」シリーズ、北関東三部作(?)完結編の「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」を観た。
渋谷のシネクイントでの上映が今週の金曜までということだったので、仕事が終わってから間に合うべく、ダッシュでパルコ3へ。
ラストウイークは日替わりで監督や主演俳優らが上映後に舞台挨拶をされるということもあってか、平日の21時過ぎからのレイトショーにもかかわらず、結構な入り。
自分は遅ればせながら、つい先日、シリーズ第一作に当たる「SR サイタマノラッパー」を観たばかりで、まだ「2」も観ていない。しかし、今作は一作目の続きに当たるストーリーで、「2」を観ていなくても問題ないということだった。
その内容はなんと、一作目でIKKUとTOMに見切りをつけて「SHO-GUNG」を脱退して上京することにしたマイティのその後の話。
悪い連中に散々利用されたあげくに、夢もプライドもぶち壊されたマイティが、衝動的な怒りでとった行動が原因で、逃亡を余儀なくされる…という、一作目のゆるくコミカルなトーンとガラリと変わり、激しい暴力ありのシリアスなストーリーが展開される。
埼玉のフクヤを飛び出して2年、あれからマイティがどうしていたかというのを、前半の短い時間で無駄のない展開でわからせ、感情移入させる手さばきは見事。
追い詰められて行くマイティのシリアスな状況とうって変わって、途中からIKKUとTOMが登場すると、ゆるい笑いが生まれ、途端に観客をホッとさせる。馬鹿にされながらもなんとかラップを続け、夢を捨てなかったふたりに、ようやく同志と呼べる仲間が出来るエピソードは、笑いながらもグッとくるものがある。
圧巻はやはり後半のライブシーンと同時進行でマイティをカメラが追い続ける、長回し。この一連の流れを、ステージもストーリーも一切止めることなく撮り続けたこのシーンが、どれだけ凄いチャレンジだったかというのは、自分にもわかる。
…ただ、この凄いシーンも、話の部分に対しては、やはり無理のある撮影方法で、あちこちにツッコミどころが生じてしまったのが残念だ。あれ以上を望むのは酷だということは十分承知の上で、今回はマイティにぐっと感情移入して、ストーリーの部分での推進力が大きかっただけに、「早く逃げなきゃ!」「車、遅っ!」「なぜそこでみんな待つ?」とか、どうしても思ってしまって、実際に起こっていることとしてのリアリティは損なわれ、かなり気持ちが冷めてしまったのは確かだ。
ただ、作品そのものを壊すほどではなかったと思う。それは、もう…その役というより、IKKUでありTOMであり、マイティ以外の誰でもないという、彼らの実在感がスクリーンから飛び出しそうなほどだったからだ。脇を固めていた役者もすごく良かった。(悪い奴はほんとに悪くて怖くなったほど)
そして、再び長回しによるラストのシーン。すべてを計算し尽くした上で、さらに何が起こるかわからない、ここでの緊張感はすごい。
まさに今ここで生まれるリアルを掴もうとする、役者の熱演、制作者たちの熱意とその志の高さに、胸を打たれずにはいられない。
シネコンでヒットしている…ことになっている凡百の国内向けドラマ映画とは、はっきり一線を画す。この作品で再び入江悠監督は、自主制作映画の、日本映画の可能性の扉を大きく開け放った。
個人的に残念に思ったのは、ついこないだ一作目を観たばかりだったということ。ちゃんと一作目を公開時に観ていれば、あれから2年経ったということに深い感慨を抱いて、もっとこの作品に没入できたのに!
…あらためて、今の今まで「SR」観てなくてすいませんでした!

SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者 O.S.T.

SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者 O.S.T.

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