「イノセント・ガーデン」


仕事帰りに新宿に寄って、パク・チャヌク監督の「イノセント・ガーデン」を観た。
新宿に武蔵野館系列の「シネマカリテ」というミニシアターが新しくオープンしたことは知っていて、いずれ行ってみたいと思っていたのだが、観たい作品でレイトショーでちょうど時間が合ったのが、このタイミングだったのでようやく初来館。
駅ビルのすぐ近くの地下1階でアクセスも良く、21時台のレイトショーがあるというのは貴重なので、これからちょくちょく利用することになりそうだ。
座席数は少ないが、椅子が背もたれも肘掛けも柔らかでしっかりしていて、なかなか快適。



自分も「オールド・ボーイ」で衝撃を受けて、そこから韓国映画にハマったくちで。
パク・チャヌク監督作品はほとんど好きだし、これからの活躍にも大きく期待している。
そのパク・チャヌク監督の初のハリウッド作品ということで、出演者も韓国の俳優ではなく、言語も英語。
韓国の俳優でないどころか、ミア・ワシコウスカニコール・キッドマンマシュー・グードといった、なかなかの豪華キャスト。
どういう内容の作品なのかは事前に全く知らずに観に行ったが、かなり期待していた。
主人公の少女インディア(ミア・ワシコウスカ)の、最愛の父が急死し、その葬儀のシーンから物語は始まる。
遺された広大な敷地の屋敷に、母と娘の二人で暮らすことになるのだが、母親(ニコール・キッドマン)との関係はうまくいっていない。
そこに葬儀の時に現れた叔父、つまり亡くなった父親の弟であるチャーリー(マシュー・グード)が、屋敷に居ついてしまう。
長らく海外を旅行していて消息不明だったというチャーリーは、ミステリアスな人物だが魅力的でもあり、母も娘もなぜか惹かれてしまい、奇妙な関係になっていく…というストーリー。


最初からとにかく構図の凝った、スタイリッシュで美しいシーンが続き、パク・チャヌク監督の得意なテクニックをふんだんに使っていることがわかる。
しかしあまりにも「どうだい、上手いだろ?」と言わんばかりの、ひと捻り工夫した画面構成と、思わせぶりな演出が続くのが、だんだん鼻についてきて、「これ全編このもったいぶった感じが続くのかな?」と不安になるほど。
キャストは豪華だが、基本的に屋敷とその周辺の森のシーンが多いため、莫大な制作費が投入されたとは思えず、そんなにスケールの大きな話でもなさそうだ。
だからその分、見せ方で工夫しているのだろうが、ちょっと映像テクニックのひけらかしのように思えて、中盤ぐらいまでは、ややうんざりしかけていた。
しかしそれはこの作品がどういう方向に進むのか、まったく知らなかったからで、物語に入り込んでいくにつれて、「ああ、なるほど。これはサイコ・スリラー的な映画なのかな?」と分かってきて、サスペンスフルなストーリーに緊張感を維持するために、映像効果を駆使しているのだと納得できるようになった。
謎の男チャーリーの正体が次第に明らかになっていくにつれて、ドラマもどんどん盛り上がっていく。
(「マッチポイント」「ウォッチメン」「シングルマン」と、なにげにマシュー・グード出演作をよく観ていることに気付いた。この人のミステリアスな魅力は毎回強く印象に残る。)
父の死に塞ぎ込み、母親に反抗心を抱いていた少女インディアが、急速に成長していく姿もスリリングだ。
伏線もきっちり回収し、ラストでは冒頭のシーンの意味も分かるという、まさに「やっぱ、上手いわ、さすがだわ、パク・チャヌク…。」と唸らずにはいられない作品だった。
ハリウッド作品になっても、強烈な暴力描写と怨念のこもった心理描写は、やっぱり韓国映画って感じもした。
結局、かなり楽しんで観れた一本でしたよ。

Stoker

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