「それでも夜は明ける」


以前、町山さんが「たまむすび」で紹介されていた「Tweleve Years a slave(12年間奴隷として)」という作品、公開時に「それでも夜は明ける」という邦題が付いたので、「あの時聞いた黒人奴隷時代の映画だ。」と、すぐには結びつかなかった。
しかし第86回アカデミー賞作品賞を受賞したことで、すっかりこのタイトルも有名になり、観に行った時はかなり多く入っていた。
決して楽しい気分になる作品でないにも関わらず、作品の質や役者の熱演などの前評判が高く、「今観ておくべき作品」と思った人が多かったことが集客に繋がっているようだ。
最近は事実を基にした作品でいいのが多いので、自分も期待して観に行った。
確かに残酷な拷問シーンも多く、理不尽な扱いを受ける黒人奴隷の姿をリアルに描くことで、観る側に痛みを感じるように作られている映画なので、観ている間はなかなかつらいものがあった。
それでもテンポのよい話運びや、画面構成の面白さなどで、観ていて退屈するような作品ではなかったので、その辺は助かった。
いくら重要なメッセージの込められた志の高い作品でも、観るのが苦痛なだけの作品では、心に残るものが半減してしまうだろうから。
個人的には、過労死した仲間の老人の葬儀の場面で、黒人霊歌の「Roll, Jordan, Roll」を歌う主人公の顔のアップのシーンが強く印象に残った。
「ブルースという音楽は、アフリカから奴隷として連れてこられた黒人の悲しみが…」みたいな解説文を読むことはよくあるが、それが実際どういう種類の感情なのかということについて、この場面を観た時ほど実感をともなったことはなかったと思う。
安易に感情移入することは(ましてや日本人が…)したくないが、こういう負の歴史にもきちんと正面から向き合って作品として残すのだという、作り手の強い決意はリスペクトする。
「最後にブラッド・ピットが善人面して出てきて…」といった批判もあるようだけれど、自分はそんなに欺瞞だとは思わなかった。まあ、その役の印象からは外れてしまうけれど、実際にこの作品の製作に「PLAN B」が関わっていて、それはリスクもともなう勇気ある行動だったわけで、そんな自分だけヒーローぶって出たいはずがないと思うんだよなあ。
彼は彼の信念をこの作品に込めたわけで。そういう作品が高く評価されて受賞して、そしてより多くの人に観てもらえるようになるというのは、素晴らしいことだと思うけど。

12(トゥエルブ)イヤーズ・ア・スレーブ

12(トゥエルブ)イヤーズ・ア・スレーブ