「インターステラー」



IMAXで「インターステラー」を観た。
夏ぐらいから盛んに予告編をやっていたので気にはなっていたが、クリストファー・ノーラン作品は大風呂敷を広げ過ぎで、情報過多、冗長で当たりはずれもあるからな…と、観に行くのを躊躇していたのだった。
ネタバレを避けたためか、予告編ではあくまでも必ず生還すると約束した娘と父の絆の物語としての側面が強調されていたようで、宇宙に行ってから何が起こるのかはほとんどわからない。
しかしやたら評判がいいようだし、Twitterで絶賛のコメントを目にした中でも、「後半30分の怒濤の展開が圧巻!」みたいな声が多いみたいなので、これは何かあるぞと急に期待値も上がった。
前半、食料不足が深刻化する状況でトウモロコシ農家となったクーパー(マシュー・マコノヒー)は、実は元宇宙飛行士で、極秘にある計画を進めていたNASAの秘密施設にたどり着き、ブランド教授(マイケル・ケイン)に協力を要請される…という導入部分は、なかなか本筋が見えてこないまでも、主人公の家族の関係性と現在置かれている絶望的な状況を丁寧に描いていた。
自分たちを捨てて宇宙に向かう父を恨む娘・マーフ。でも今行って希望を見つけてこなければ、いずれ地球は滅ぶ…とも言えず、もどかしい気持ちを抱えたままの旅立ち。「必ず帰る」と約束したものの、宇宙の時間の流れはかなり遅くなるため、娘が生きているうちに会えるかどうかもわからない。なんとも切ない別れのシーンはグッとくるものがあった。
そこから、あれよあれよという間に出発、冷凍睡眠してる間に目的の場所へ。端折るところは大胆に端折る、ノーラン演出。
土星の近くにあるブラックホールがワープゾーンのようになっていて、そこをくぐり抜けると別の銀河に繋がっている。既に先行隊が何人かその先で人類が住めそうな星を探していて信号を送り返しているという。
ご都合主義な感は否めないけど、なにせ物語のスケールが大き過ぎるので、全部を語るにはとにかく急がないと。
理論物理学者のキップ・ソーンが関わり、最新の宇宙理論に基づいたシミュレーションにもなっているらしいが、どれぐらい現実味があるのか全然ピンとこない。
水のある惑星に降り立ったが、巨大な波に襲われるという予想外のトラブルも発生して…という、絵的な見せ場もあるにはあるが、誰がどの星にいてどういう情報があって、星の距離と航路にどういう問題があって、こうしてたら地球上で時間がどれだけ進んでいて…という複雑な状況を、宇宙船内での乗組員どうしの会話で説明されるので、理解するのがとにかく大変だ。
まあ、とにかくなんやかんやあって、鍵を握るマン博士に出会えた、と。
事前にあまり情報を入れずに観ようとしたので、このマン博士役がこの人だとは知らず、結構ビックリした。
そこから意外な展開になり、実は…という秘密が明かされたところで、かなり面白くなった。
しかし、そこからさらに何次元の世界かよくわからない状況になっていくとは…もう何がなんだか。
時空を超えた状況を絵で見せるというのは、やはり「2001年宇宙の旅」への挑戦なのか。
いや、これでいいんだっけ?…ありえるとかありえないとかそういう問題じゃないんだっけ?…理論的には起こりうるかもしれないけど、それをビジュアルで見せようとするとこうなるんだっけ?…そもそも生命、いや、人体って維持出来ていていいんだっけ?…と、何もかも腑に落ちないまま、物語は無理やり伏線を回収して一気に収束する。
なんという力業。強引だけど、やっぱすげえ。
なんか呆気にとられて、感動的なはずのラストも…泣くって感じじゃなくなってしまった。
いやでもこれはすごい映画だわ。2014年、リアルタイムで観れて良かったと思えた。
ノーランが、1本の作品の完成度を高めるというタイプの監督でないことはよくわかったけど、想像力の飛躍の度合いとか過剰なメッセージとかで、ここまで観る者を圧倒させるのだから、やっぱりすごい監督なのだと思う。
映画としての良し悪しは、かなり俳優の名演技によるところが大きくて、今回もマシュー・マコノヒーアン・ハサウェイが主演の時点でもう8割成功な感じもする。
今となっては「ダークナイト」もヒース・レジャーの名演しか印象に残らないし。キャスティングが何より大事ってこと?

インターステラー (竹書房文庫)

インターステラー (竹書房文庫)

映画を観終わってから、町山さんの解説を聞くのも楽しみにしていた。
「STORES」で販売している、町山智浩の「映画その他ムダ話」、難解映画解説の「インターステラー」の回。ネタバレ有りの49分、みっちり解説してくれていて聞き応えがあった。
これを踏まえて、いずれもう一度観たい。