「怒りのパワーを音楽に。」

「粋な夜電波」第196回放送は、久しぶりの「韓流最高会議」。
韓東賢さんとヴィヴィアンさんをゲストに迎えて、K-POP、K-HIPHOPについて徹底討論する60分。
人によって好き嫌いも分かれる韓国カルチャーですが、番組で紹介されたものはどれもクオリティの高いものばかり。
先入観や固定観念を取り払って、自由に音楽を楽しもうというムードに満ちた充実の内容でした。
番組後半の、韓国文化から感じる「恐さ」のエッセンスについて語られた部分を文字起こししてみました。
(※日韓合作ラップ Keith Ape『It G Ma』について語られた部分は、miyearnZZ Laboさんのサイトですでに書き起こしされていましたので、そちらでお読みいただけると思います。)

Illionaire Records - 11:11 (Deluxe Edition)

Illionaire Records - 11:11 (Deluxe Edition)

Paloalto - Chief Life (韓国盤)

Paloalto - Chief Life (韓国盤)

戒厳令

戒厳令

菊地 はい、Rinbjo Feat. Paloalto で「反駁」という曲でしたけれども。ま、このPaloaltoさん…ここでは何て言うんですかね…アングリーといいますかね…
ヴィヴィアン はい。
菊地 ラウドな感じで。
ヴィヴィアン 珍しく。
菊地 珍しいですよね。ほんとは…って本当も何もないんですけど(笑)…
 (笑)。
菊地 実際会うと、まあ…何て言うんですかねえ…ぬいぐるみみたいなね…
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 可愛いぬいぐるみみたいなね。
 優しそうな感じですよね。
菊地 優しそうなね。
ヴィヴィアン 赤ちゃんみたいな顔ですよね。
菊地 そうそう(笑)。赤ちゃん顔ですよね。文字通りのベビーフェイスなんですけども。これは…ちょっといろいろ…テーマが「怒り」「恐怖」なので、「それでいってください。」って言った結果…
 うん。
菊地 やっぱり…大韓民国の方のパワーってのはすごいな!と。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 すごいな〜と思って圧倒されまして。送られてきたものを…
 うん、うん。
菊地 普段はこんな人なんですよってのを、ちょっと聞いてみましょうか。
ヴィヴィアン はい。
菊地 Au revoir」聞いてみましょうか。Au revoir」はフランス語で、いくつかある「さよなら」の表現のひとつですけども。聞いてみましょう。
(曲)

菊地 はい、…と、まあ…こんな…これも、まあ…凄みあるっちゃありますけどね。もっとハッピーなのもいっぱいありますよ。
 これ、でも…好きです!
菊地 ああ〜、これ好きですか。
ヴィヴィアン おっ!
菊地 なんと!…不感症が治りましたか?
 いやいやいや…
ヴィヴィアン (笑)。
 治ったとかじゃないけど…。
菊地 (笑)。
 これは好きです。いいと思いました。
菊地 ほんとですか。ああ…いいですよね。
 うん、いいです。
菊地 えっと…そんな中ですよ。またもや、シンクタンクであるヴィヴィアンさんが仕掛ける…
ヴィヴィアン はい。
菊地 はい、よろしくお願いします。
ヴィヴィヴァン はい、4月29日、水曜日なんですけど、祝日です。
菊地 はい。
ヴィヴィアン この日、渋谷のduo Music Exchangeで、なんと…
菊地 duoに進出!
ヴィヴィアン duoに進出です!
菊地 結構な…進出ぶりですね。
ヴィヴィアン 結構…な、はい。韓国で今一番…アンダーグラウンドなんだけど、ちょっとメジャーに片足突っ込んでるような感じで、一番人気を博している「Illionaire records」っていうレーベルがあるんですけど、そこのDok2とThe Quitte…この二人のライブを渋谷duo Music Exchangeで行います。
菊地 はい、この「行います!」と明言しているのは、なぜかというと…ヴィヴィアンさんが行うわけだからですね(笑)。
ヴィヴィアン そうです。
 (笑)。
ヴィヴィアン 実は去年の10月もこの二人のライブやったんですけど、その時も大盛況で。
 うん。
ヴィヴィアン で、本人達が「また日本でやりたい。」っていうふうに言って来たので。
菊地 はいはいはい。
ヴィヴィアン 「じゃあ、やりますか!」って…
菊地 ヴィヴィアンさん、もうぶっちゃけ…何て言うか…日本に数少ないアンバサダーの一人ですよね。
ヴィヴィアン そうですね(笑)。
菊地 完全にそうですよね。
ヴィヴィアン はい。
菊地 逆の人いないのかな〜と思いますけどね。
 うーん。
菊地 逆の人いてくれよ…という気持ちですよ。
ヴィヴィアン いない…ですね〜。
菊地 まあ、ぜひ!…あ、1曲聞きましょう。
ヴィヴィアン はい、Illionare Records (Feat. MC Meta)で「연결고리 (YGGR)」。
(曲)

菊地 はい。では、率直な…また…
 えっ?
菊地 2発目ということですけど、書記長!…こちらはいかがでしょうか。
 うーん…すごく好き…ではない!
菊地 (笑)。
ヴィヴィアン ちなみにこの曲、つい先週、韓国で一番大きいヒップホップのサイトがあって…
 うん。
ヴィヴィアン HIPHOPPLAYA」って言うんですけど、そこの今年の曲に選ばれました。
 うーん。何て…うまく言えないんですけど…恐いんですよね。
菊地 まあ、そうですね。
ヴィヴィアン あー、まあ…そうですね。
菊地 そう、そう。恐さ…ね。それねえ…Kムービーが入って来た時、キム・ギドクとか…
 うーん。
菊地 ああいうのが入って来た時、ワタシいまだに…韓国の映画は恐いんですよ。
 ああ〜。
菊地 でもね、TVドラマは全然恐くないの。うん。
 うーん、なんだろ?
菊地 初期の頃はね、単なる…最初の頃、何て言われてたっけなあ…Kハリウッドじゃねえや、Kアクションとかなんとか言われてた、結構スパイ物でドカーンとかいう…のですら恐いし。
 うん。
菊地 人間ドラマもね、人の恨みとかの重みが…全然違うな、日本と!と思って。
 (笑)。
菊地 宮部みゆきさんどころじゃねえやっていう、恐さがあって…
 うん。
菊地 やっぱね、韓国のカルチャーで、日本人がなんか今ネガティブになる部分があるとして、それを具体的なことじゃなくてエッセンスとして取ったら、やっぱ恐さってあると思うんですよ。
ヴィヴィアン うん。
 うーん。
菊地 うん。先日ね、アカデミー賞の発表がありまして、あの…面白いんでもう7回目ぐらいですけど、何回も言いますけど、犬の鳴き声を模した…
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 局が完全中継したんですよね。
 ええ。
菊地 今年ですね、受賞式で…ま、あれなんですよね…ちょうど公民権から50周年だということで…キング牧師の…(『SELMA(原題)』)
 はい。
菊地 なんとしかし、このアカデミー賞ノミニー作品を日本は公開してないんですけど。公開予定も立ってないんですよ。
 うん。
菊地 ですが、アメリカではたいへんな…特に主題歌がジョン・レジェンドとコモンがやってるんですね。
ヴィヴィアン うん。
菊地 で、この主題歌がとんでもないパワーを持ってて、長いアカデミー賞の授賞式の中でも、全員がスタンディング・オベーションして、ほとんどの人がガチ泣きしたってのは、そのシーンだけだったんですけど。
ヴィヴィアン うーん。
菊地 そのシーンに込められてるのは、やっぱりね…怒りっていうか…
 うーん。
菊地 やっぱ凄いですよ、怒りを超えてっていうか(笑)…笑いながら言っちゃいけないですけど、あまりのことに笑ってしまうぐらいの…
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 凄いパワーなんですね。
 うん、うん。
菊地 で、あれもね…何にも知らない子どもが聞いたら、恐いと思うんですよね。
 うん。
菊地 あれのコモンの魂の演説も、聞きようによっちゃ恐いと思うの。
 うん、うん。
菊地 だからやっぱり、世界中でアフロアメリカンの人たちってのが最初に、その怒りみたいなものを…っていうか、聞いたら恐がられるかもしれないものってのを、美的に、あるいはコミカルに、セクシーに、音楽に変えたっていうのを最初にやったと思うんですね。
ヴィヴィアン うん。
菊地 だから、我が国が発してる事ってのは、格差社会とか言ってますけど、韓国における格差や、北米における格差とは比べ物にならないじゃないですか。
 うん。
菊地 あるいは中華人民共和国における格差とかとは。
ヴィヴィアン うん。
菊地 ま、ま…比べ物にならないって言っちゃいけない、大変な格差なんだって言われたらそれっきりですけど。
 うん、うん。
菊地 やっぱ格差ってものの中から出てくる怒りとか、いろんなその…パワーっていうものが、音楽になってるかなってないかっていうのは、お国柄だと思うんですよね。
ヴィヴィアン うん、うん。
菊地 で、日本が柳腰ではんなりした国…ね、「カワイイ」ってもんが世界中にどんどんどんどん行っちゃっているってのは、ある種しょうがない。これから日本はやっと…
 うん。
菊地 言い換えれば、ソウルミュージックだとか、韓国の音楽…特にヒップホップみたいなもの…に、通じる…
 うん。
菊地 ひょっとしたら、恐いやもしれぬぐらいの、パワーってものを持っていくのかどうかってのは、これからの我が国のね…
 うん。
菊地 特に音楽の…大きな問題だと思うんですけど。ま、どう転がって行くのか、ほんとに難しいですけどね。
 悪く言えば、没落後のね…
菊地 はい。
 没落後って言い方でいいかわかんないですけど…ま、そういう話ですよね。
菊地 そうですね。
 うん。
菊地 もう「一億総中流」とか言って、いい調子でやってた時代の名残の…「カワイイ」ってロココみたいなもんが、今世界ですごい愛でられてんだけど…
 うん。
菊地 ま、そのまま逃げ切るかどうかっていうところに…(笑)。とはいえ、今日なんかもそうですけど、日韓の…少なくとも音楽では交流…
 うん。
菊地 それもね、ハッピーフィールで「お手盛りじゃねえの?」みたいな雰囲気じゃなくて、ほんとに交流してんだって感じが出始めてますから。
ヴィヴィアン うんうんうん。
菊地 ま、ま…そのことをね、Paloaltoさんのことも含めてですけども、まあまあ…これから刮目して見て行きたいと思いますけど。
 はい。
菊地 え〜…今日だいぶこぼしましたんで、Podcastイッソヨ…ってことでですね(笑)。
ヴィヴィアン はい。
菊地 どこがオンエアに使われるかわかりませんが、オンエア聞いた方もぜひPodcastも聞いていただきたいですね。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 あの…我々、韓流最高会議は「韓国万歳!」という集団ではないので…
 (笑)。
菊地 ダメなもんはダメと、フェアにジャッジしている感じですので。