「ビアンの方へ、ミュージックプレゼント。」

「粋な夜電波」第204回はスペシャルウィーク。大好評企画「ミュージックプレゼント」が、今回も大盛り上がり。
番組の一部を文字起こししてみました。

Comment te dire adieu

Comment te dire adieu

え〜…アイドルさんのゲストとかもいらっしゃりません。独りでスタジオに立っております(笑)。
今週は「菊地成孔のミュージックプレゼント」。大切なあの人に曲を贈りたいというオーダーに応えまして、ワタクシ菊地成孔が渾身の選曲をして、その人のためにオンエアさしていただくという企画に相成っております。
2曲目いきましょう。…あ、先ほどの1曲目はですね、リミックスですので。ま、リミックスっていうか、単にターンテーブル2台使いの遊びですけどね。
マリア・カラスと…オペラとエレクトロですよ。エレクトロはARCAっていう人の曲ですけども。
(中略)
えー、ゲイの方々…いわゆるね、ワタシはマイノリティって言葉、遣いたいような遣いたくないような…誇りを持って遣いたいというような感じですけど。いわゆるセクシュアル・マイノリティの人々…の中で、オカマちゃんキャラ…ゲイの人々っていうのは、ある意味女性をリードしていく立場って言いますかね、マラソンでいう伴走者っていうか…ようなところがあって、完全に少なくともテレビ文化の中までは、もう定着文化になりましたよね。
もう、初期の頃の美輪先生出て来た頃は、バケモノ扱いですからね。カルーセル麻紀さんかね。あれから幾星霜、いわゆる市民権を得た…というような言い方でいいんですかね。…なわけですが、レズビアンの方々は、まだまだアンダーグラウンドだと、いうところもあります。
ワタシ、毎年毎年、レズビアンのタレントの方で、強度があって人気が出る方が一人出れば、形勢は逆転するんで…形勢逆転って言い方もどうかと思いますけど(笑)。
つい一昨日ぐらいですか、正しい名前を忘れてしまいました、ごめんなさい、間違えるかもしれませんけど。渋谷区ですね、あれは…同性パートナー…区の条例かな?…みたいなが出て、結婚…ウェディングドレスでね、女優さんとモデルさんが「結婚します」ってんで。
で、まあ…素晴らしいなと思うのは、あれでこう…ウェディングドレスのお揃いで、公然とキスなんかされてるお二人が、「あの条例は使わない。」って仰ってるのね。あれ、素晴らしいですね。
法務上の整備が整ったので行く…とかじゃないんだって。我々は理念的に、最初からそうなのです…ということで、「あの条例を使わずに婚姻届を出しに行くけど、ダメだったら、またゼロから始めるけど。」って言ってましたね。
非常に勇敢で素晴らしい…にこやかに楽しそうにお話されてましたけども。あれ、心うたれました。
え〜…レズビアンの方がどんな…まあ、新宿的に言うと「ビアン」っていうんですけど(笑)、ビアンの人々が何を好むのか?…今回悩みましたすごく、ほんとに。一所懸命選曲…真剣に考えちゃってね。
これにしました。非常に有名なフレンチポップです。さよならを教えて」。フランソワーズ・アルディですね、カタカナで言うとね。
ま、聞けば…ほとんどの方が知ってる曲だと思うんですけども。
「comment te dire adieu」ですよね。「さよならの言い方を教えてくれ」と。せつない、普通の歌謡曲です。
ま…捨てられちゃうのね、男の子にね。ま、ここを女の子だと思って聞いていただけるとありがたいんですけども。
とにかく、歌詞の内容は…いろいろあるんだけど、いろんなフランス語の吟情たっぷりの詩があるんですけど、テーマとしては「いきなり振られたんで、せめて理由を教えてよ。」って言ってる歌なんです、これね。その理由とは何か?っていうようなところに…あの…(笑)。
あとは時代ですね。68年の曲なので、このメールにあるおネエさん…ワタシと同年輩だってことになると思うんですけどね…が、若い頃に聴いたんじゃないかな?…っていうのもあって。
ま、いろんな総合的に…これ全然、フランソワーズ・アルディがビアンであるとかじゃないんですけどね。ただね、顔が…検索していただけるとわかりますけど、いわゆるフランス人の女性にたまにある…「綺麗なんだけど、完全男顔」っていうね。あっちの系統ですよね、シャルロット・ゲンズブールとかね。…の感じです。
というところもあり、ルックス、時代、あと楽曲の感じですよね。こういう感じがちょっと…Lの方好きなんじゃないかな?…しかも年配の方は…っていうような、ま…ワタシの妄想ですけどね。
というわけで、アサドンさんのリクエストに御応えしまして、ずいぶん…30年近く前にね、左手をガッチリ握って放さなかった(笑)…完全にそちらのおネエ様ですよね…今はもう妙齢のオバ様になってると思いますけど…幸せに…
ま、幸せに暮らしてらっしゃると思いますよ。セクシュアル・マイノリティの人のほうが、マジョリティだけど何にもない…っていう人に比べると、パワフルですからね。だから元気にやってられると信じますが。
ま、ちょっと昔の曲でも聞いて、懐かしく思っていただければと思います。「さよならを教えて」、フランソワーズ・アルディ
(曲)

はい、届きましたでしょうかね。「あら、懐かしいわね。」って感じで聞いていただけると、ほんとにね…嬉しいですけども。
ま、時代ですよね…68年ですもんね。ワタシですら5つですよ。
あの…何語であろうと、バッとラジオで流れてリスニングって難しいと思いますけど、途中でセリフが2回出てきますよね。で、そん中に韻を踏んでるんですけど、商品名が出てるんですよね。「je ne veux」に対して「kleenex」って。それ、ティッシュのことなんですけど(笑)。
まだね、クリネックス・ティシューが最新の…何って言ったらいいのかな…コスメ商品みたいな感じで、それを歌詞の中に出せば、ちょっとオシャレ…ぐらいな感じで、「クリネックス」って言ってますね。
それはまあ…要するに、「クリネックスで自分の涙を拭くんだ。」と、セリフで言ってるんですよ。
「あなたに私の涙を見られるのは嫌だ。」と。だけど「クリネックスで目を覆っていれば、見られないかもね。」っていう。で、さよならをするんだ、と…受け入れるんだ、というような歌詞ですけどね。