「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」



1日映画サービスデー、せっかくなのでもう一本。
久しぶりのシネクイント。そのうち観ようと思いつつも、なかなか渋谷に来る機会がなくて、後回しになっていたJBの伝記映画をようやく。
タマフル」でのJB特集も聞いて、この作品がなかなか素晴らしい出来になっているという評判も聞いていたし、とにかくライブシーンで次々とJBのナンバーが大音量で流れたら盛り上がらないはずがない。
そう思ってかなりハードルは上がっていたのだが、実際に観たら、これがまた傑作で最高だった。
ジェームス・ブラウンのその破天荒な人生は、いろいろ有名なエピソードもあったりして、なんとなく知ってはいたが、いくら貧しい少年が音楽でのし上がって行くサクセスストーリーだとはいえ、JBの才能はもう最初から圧倒的で、成功してからも個人的にいろいろトラブルを起こしてはいたけれど、その音楽はずっと突出したままで、スーパースターのままこの世を去ったという印象があるので、そんなに起伏に富んだストーリーになるのかな?とも思っていた。
劇映画としてより、ドキュメンタリーのほうがインパクト強いのでは?とも。
観る前に、キャストやスタッフに関する情報をほとんど知らなかったので、こんなにしっかりした…というか、アカデミー賞とかで賞を狙える正統派の作品になっているとは思わず、JBのファンだとかそういうこと関係なしに、1本の映画として素晴らしい出来だわと、観賞後あらためて感心した。
まずはとにかく、主演のチャドウィック・ボーズマンジェームス・ブラウン成り切り度がハンパなく、歌もダンスも完璧で、喋り方もそっくりで驚かされる。
実際のライブシーンは本物の音源を使用しているようだが、演じている時の地の歌もそっくりなので、まったく違和感なく、まさに若い時の本人を観ているような気になった。
よくぞこんな人を見つけてきた!と驚くべきなのか、役作りのプロフェッショナルさに脱帽すべきなのか、まあその両方だけど。脇も、マネージャー役にダン・エイクロイド、伯母役にオクタヴィア・スペンサーなどでしっかり固められていて、俳優陣の演技はみな素晴らしい。
スタッフについても、JBを心から尊敬するミック・ジャガーがプロデューサーを買って出たというのが、宣伝的にもこの映画の売りのひとつになっているが、どれほど重要な役割を果たしたのかはよくわからないけど、彼の名前があることで、一流どころが揃えられたというのはあると思う。
「ヘルプ 心がつなぐストーリー」は未見だが、高い評価を得た作品だったそうだし、その監督テイト・テイラーの手腕というのも、この「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」でも存分に発揮されているようだった。
エピソードの構成が見事で、単純に時間軸通りに進めても面白味がないが、あまり時間を前後させ過ぎても混乱するし、何よりJBがスターになっていく過程の勢いが削がれる。その点、たびたび挿入される幼少時のエピソードが、実はその時その時のJBの心境と状況に関連している。作品の冒頭が、晩年のJBが起こした事件から始まるというのも、ラストに繋がるいい伏線になっていた。
ただスーパースターJBの成功を追うだけでなく、この作品の実はこちらが軸になっているのが、盟友ボビー・バードとの友情物語だ。
音楽的にもJBの片腕としてなくてはならなかった存在だが、あらためてこうしてクローズアップされたことで、彼あってのジェームス・ブラウンだったのだなと、しみじみわかる。彼との確執や和解がこの作品のドラマ的なハイライトだ。
ドラマ的には、描かれる母親との関係も見どころのひとつ。単に美談だけで固めなかったところが、この作品に深みと厚みを増している。
しかし、そんなことよりもとにかく音楽だ。これはやっぱり映画館で大音量で鳴るJBのサウンドの中で、身体を揺すりながら観たほうがいい。
前日観ていた「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が、まさに血湧き肉踊る大興奮の傑作だったが、自分にとってはまさに「マッドマックス」級にアガる最高の映画だった。
JBのようにシャウトできたらいいな〜とも思うが、もしそうなったら一晩中叫び続けて通報されるなあ。