「『チャパクア』に似るかな?」

「粋な夜電波」第260回放送はフリースタイル。
渦中の都知事のワインセレクトにアドバイスするなど、意外な話題も飛び出す中、今週も他ではなかなか聞けない隠れた名盤を紹介。
フィールド・レコーディングの音源に合わせて、菊地先生がサックスを重ねてみたという実験的な音源もオンエアされました。その紹介部分を文字起こししてみました。

チャパカ組曲

チャパカ組曲

あ、うまく次の音源に繋がりましたねぇ。
スター・ウォーズ」のロケ地は、今や観光地と化しているのですね。モロッコですね。
ワタシ、モロッコ行った事あります。なんと驚くべきことにはですね(笑)…マネージャーの長沼も同行してました、その時にはね。モロッコにね。
全部のタジンと、全部の串焼きの羊と、全部の食後のチョコレートケーキに、が入っているという凄い国ですけどね、モロッコはね(笑)。
えーと…何の話だったっけ?…つまりモロッコに音楽の着想を得に、取材旅行に行ったんですね。
ロッコに着想を得に行った人間はワタシだけではありませんで、日本人だったらロバート・ハリスさんなんかね、もうモロッコ専門ですけどもね。
まあ…いろんな人が行きました。作家の中で有名なのは、やっぱポール・ボウルズでしょうね。「シェルタリング・スカイ」。
ポール・ボウルズってね、あんまり知られてないんだけど、音楽家くずれなんですよね。楽家になりたかったの。まあ、実際アマチュアとして演奏もしてた人なんですけど。
ポール・ボウルズが、1956年にフィールド・レコーディングしてるんですよ、モロッコで。ポール・ボウルズっつったらモロッコですからね。
その、ポール・ボウルズの録音したモロッコのフィールド・レコーディング集が、なんと…失礼…59年でした…59年…それだって相当古いですよね、59年の録音物が、まあなんと2016年…今年ですね(笑)…に、4枚組のCDになって売り出されまして。ワタシ、早速買ってみました。
まあ〜まあ〜…美しいですよねえ。箱が。
箱物いっぱいありますけど、ワタシもずいぶん箱物持ってますけど、これが一番美しい…っていうか、美術的な価値があるんじゃないかなっていうぐらい綺麗な…。
タイトルはさっぱりしてて、「MUSIC OF MOROCCO:RECORDED BY PAUL BOWLES, 1959」と書いてありますけども。
ここにフィールド・レコーディングされているわけですよね。4枚組だから、相当音数入ってます。
で、同じようにモロッコの音楽に取り憑かれたジャズミュージシャンに、オーネット・コールマンがいます。
最近亡くなりましたね。1年前だか2年前だかですよね。オーネットも長寿だったんですけどね。
で、まあ…オーネット・コールマンが…これはジャズファンなら誰でも知ってる、もうモロッコの話してオーネット・コールマンっつったら、「あ、チャパカの話すんだな。」って、ジャズファンは…すれっからしの方は思うと思うんですけど。
「チャパクア組曲」っていう有名なアルバム出してるんですよ。
これは、すごい簡単なレコーディングで、あの…モロッコに行って、街はちょっとわかんないんですけど、モロッコって大体どこの街行っても、そういうその…何っつったら…旅芸人みたいな人も、民族音楽の人も、もう手当たり次第演奏してんの。まあ、アフリカだからね。言ってみりゃ。モロッコたれども、アフリカなり…といったところで。そこら中で演ってるんですよ。
で、その人たちの演奏に…その人たちに幾らか握らせて、その前で自分でサックスを吹くわけ。オーネット・コールマンはアルトサックス奏者ですから。
サックス吹いて…で、共演ですよね(笑)。共演っていうか何て言うか。
まあ、道端で演ってる人にお金払って、その前でサックス吹いて、一緒に録っちゃって、そいで…それをアルバム2枚組にしたの。
それは何のために作られたアルバムかっていうと、映画のね…サントラのために作ったんですよ。
ところが、納品したところね、監督に突っ返されまして(笑)。「こんなもん使えるわけねぇだろ!」っつって、突っ返されまして。
しょうがねえから音だけでも出そうっていうんで、映画音楽としての側面は切り離されまして、純粋にアルバムとして…音楽作品として、「チャパクア組曲」っていう名前で、残ってんですよね。
それは今言ったような、非常にイージーであり、シンプルでもある録音方法で録られたんですけど。
ワタシもまあ、せっかく…今日ね、リハの帰りで、ちょうどサックス持ってたのね。で、今日モロッコのフィールド・レコーディング流すっていうのは決めてたんで、せっかくだから、オーネット追悼…とは言いませんけどね、そんな大それた事は言いませんが。
ちょっと実際に、オーネットと同じように、金こそ渡してないですけど(笑)、そっちはそっちの都合で演ってるモロッコの、土地のミュージシャンの人の演奏の傍らで、勝手にフリージャズのサックスを吹いたら、「チャパクア」に似るかな?…っていう実験を、今TBSのスタジオの中でおこなったわけですね。ええ。
本来だったら、こういう実験ってのはNHKのスタジオの中でおこなうべきだと思うんですけど(笑)。TBSのスタジオでおこなってみました。
はい、ちょっと聞いてみていただきたいと思いますね。
はい、ポール・ボウルズが1959年に、自らフィールド・レコーディングしたものが、2016年にCD化された、その中の1曲と、共演してみました。お聞きください。
(曲)

Music of Morocco: Recorded By

Music of Morocco: Recorded By

…はい、まあ…結果的に言うと、我ながら…あまりにもオーネット・コールマンの「チャパカ」とのそっくりさにビックリですけどね(笑)。
やっぱ同じ方法を使うと、同じ結果が得られるんだ…という、化学だか数学だかみたいなことになりましたけどね。
ワタシとオーネットは全然似てないんですけど(笑)。聞き口はかなり…似てますね。

シェルタリング・スカイ (新潮文庫)

シェルタリング・スカイ (新潮文庫)