「『ガンダム』で忙しすぎて。」

「粋な夜電波」第298回はフリースタイル。真夜中に聞きたいドープな音楽を特集。
番組冒頭の近況報告と、エンディングの曲紹介の部分を文字起こししてみました。
とにかく今は「ガンダム」でお忙しいそうです。

オリジナル・サウンドトラック「機動戦士ガンダム サンダーボルト」/菊地成孔

オリジナル・サウンドトラック「機動戦士ガンダム サンダーボルト」/菊地成孔

まあ…特に話す事は…無いですね(笑)。
先週に引き続き…無いです、これは。なんも無いですね。
それは何でかっつーと…ガンダム」が忙しすぎてですね。もう、今日もこのスタジオ来る前までが「ガンダム」、終わったら「ガンダム」ですからね。ええ。
今回はね、ほんっとに…何ヶ月やってんだろう、俺…「ガンダム」(笑)。こんなに「ガンダム」長くやるとは思いませんでしたけどね。力入っちゃって、力入っちゃって。
「1(ワン)」がね…「サンダーボルト」っていう、「機動戦士ガンダム」のサブストーリーっていうの?…何でしょうね、スピンオフとも違うんでしょうね。
もう全然ワタシ、そこらへん知らないんで。言われるがままに仕事してるだけなんですけど。
あれですよ…「1」の評判が、なんか良かったみたいで。それで「2(ツー)」になったんですね。で、「2」作ろうってことになって。
ほんでもう…まあ、「1」の評判がいいと、だいたい「2」はコケるっていう…なんかそれはアニメとかじゃなくて、映画でも何でもそうなんですけど。
「続・なんとか」「なんとかかんとか・2(ツー)」ってのは、だいたいダメって言われる、ひとつのその…芸能の、ひとつの決まりみたいなのがあるんですね。
まあ、そうなっちゃいけないっつーんで。「1」は結構気楽に作ったんで。気楽って言っちゃいけないんですけど(笑)…適当に作ったって意味じゃないですよ。気分を楽に作ったんですよね。
「2」は「もう全然聞き応え変えるんだ!」って、もう気張っちゃってねえ。「ものすごい作り込むんだ!」って自分で…こういうの自己拘束って、自分で自分のことを拘束するって言いますけど、自分で自分のこと縛り付けちゃって。もう気合い入っちゃって、気合い入っちゃって。
ガンダム」のOSTっていうのは、半分がジャズ、半分が歌もの…なんですよね、ポップスなんですけど。
今回のはね、「1」と全然違うんで。ジャズのほうは、ものすごい作り込んでるわ、編成はでかいわ。で、ポップスのほうは…まあ、大雑把にオールディーズみたいなものをサクッと…オールディーズ好きですからね、50’sポップスとかね…アメリカン50’sポップスとか好きなんで。もう「〜的なもの」というのでサクサクサクッと作ったのを、今回はいろんな題材で…。
歌手はね…シンガーの方は、この番組でもお馴染みの吉田沙良さんも初参加。初っつったって「2」ですけどね…参加されますし。ジャズドミュニスターズのファンの方には、I.C.I.こと市川愛さんも引き続き参加…というような感じで。辻村くんにも振りましたね。まあ…「オマエのレーベルのタレントを(笑)…一種のバーターだろ、これも。」って言う方もいるかもしれないぐらいね、全然違うんですけど。そんな感じですね。
今もう…それでね、朝起きると「あっ…『ガンダム』。」って「ガンダム」の事考えてる自分がね(笑)。53歳にして、こんなに長い間、アニメもマンガも見なかった男が、朝目がさめると「機動戦士ガンダム」の事を考えながら起きるっていう…ね。寝る前も「機動戦士ガンダム」の事を考えながら寝るっていう日が来るとはね。思いもよらなんだ…って感じですけどね。


(中略)

COUP DE TETE

COUP DE TETE


と、まあ…そんな感じで。「何が粋で何が野暮だよ。」って話ですけどね。
そんな「喋りにゾーンが入った!」とかじゃないですよ。ただ単に疲れてハイになっているだけですけどね。
そんなハイになっている最中ですけども、ほんとに「昭和は遠くなりにけり。」と言われてから、だいぶ長いですけど。ほんとに「遠くなったな…。」って思う気分…何て言うのかな、ひしひしと近づいて来るっていう…「もう前からわかってはいたけどね。」っていうね。
ま、恋の終わりとかね、親の死に目と一緒ですよね。いよいよ…って時が来るわけですよね。
あの…あれですよ、番組がこのシーズンで終わるという事を暗喩しているのではありません!…念のために(笑)。
コントの時はね、いつも…だいたいね、軽いコント…特に夫婦物で笑えるやつの時は、ワタシはジャズをBGMにしてるんですけど。これはジャズのオリジナルのCDから持ってきてるんじゃなくて、「Woody Allen’s Movies」…これはもうプロダクツとしては5〜6種類あるんですけど。
ウディ・アレンの映画ってのは必ずジャズが使われるんで、それだけを集めたコンピってのがいっぱい出てるんですよ。それをほとんど買い集めて、それで自分のコントの時には「Woody Allen’s Movies」…要するにウディ・アレンの映画に使われたジャズの曲を流しているというスタイルをとっておりまして。今回初めて白状しましたけどね。
ですので、毎回毎回いろんな曲かかるんだけど、結局それはウディ・アレンのコンピからかけている…ということですね。
というわけで、そうですね…先週「藤村俊二さんに…」ということでしたけれども、追悼はやめているとはいえですね、今日も同じく「Woody Allen’s Movies」より、最後締めくくる曲としてはですね…
「昭和も終わっていくな…。」という気分と共にですね、めったにこの…コント用に取ってるCDなんで、こっからエンディングに持ってくって事はほぼ無いんですけれども、今日はそれで締めたいと思います。
ハリー・ジェイムス・アンド・ヒズ・オーケストラ…マイルスが最初に憧れた白人のジャズですけどもね。まあ、素晴らしいです。
「You Made Me Love You」という…意味深というか、ちょっとした洒落た…これこそ粋な言い回しの英語ですよね。訳すとこうなりますってのは野暮ったいから言いませんけれども。
というわけで「菊地成孔の粋な夜電波」、ジャズミュージシャンの菊地成孔がお送りしてまいりましたが、また来週ということです。
来週は、先ほど申し上げた通り、J- シティポップ…AORの黄金期の音楽をノンストップでお送りします。
では本日の締めに、去り行く昭和に対し送りたいと思います。ハリー・ジェイムス・アンド・ヒズ・オーケストラで「You Made Me Love You」。

I've Heard This Song Before / Hits of Harry James

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