「映画監督になるはずが…。」

「粋な夜電波」第297回はフリースタイルながら、「エロくなさそうで妙にエロい音楽」を集めた小特集の回になりました。
もともと映画監督志望だったことにまつわるエピソードを語られた部分を文字起こししてみました。

Those Who Throw Objects at the Crocodiles Will Be Asked to Retrieve Them

Those Who Throw Objects at the Crocodiles Will Be Asked to Retrieve Them

はい、え〜…「菊地成孔の粋な夜電波」。ジャズミュージシャンの、そしてですね…
これ、言っちゃって大丈夫ですかねえ?…最近、「映画に出ないか?」と誘われておりまして(笑)。しかも「非常に有名な方の役で。」ということでですね、断るのに必死な…菊地成孔が、TBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。
絶対やりたくないから出ないんですけど(笑)。まあまあ…近い将来、もし出てたとしたら、「金…札ビラで顔叩かれたな。」と思ってください。
はい。というか、ワタシじゃなくて吉田沙良さんに、いい加減もう声優でも女優でもいいですから、仕事をどなたか振ってくださいませんか?…どなたも振ってくださらない場合は、またワタシがコントで使うしかなくなってしまうんですけども(笑)。まあ、それはともかくとしてですね。
最近、もう仕事ばっかししてて。
この番組始まった頃のほうがね、若干暇だったんですかねえ。
ずーっとファミレスいて人間観察とかしてる時間ありましたからね。最近その時間も無いんでね。
だから大した面白い話も無いんですよね(笑)。
というわけで、今日はメール…ま、普通ラジオはそういうもんなんですけどね(笑)。メール中心でいってみましょうか。
あまりにもこの番組メール読まないんで、メール受け付けてないんじゃないかと思ってる方が多いんじゃないかと思いますけど。


(中略)


スペシャルウィークは第300回なので)「300人で1曲を聴く!」っていうね。300人で…そうね、「関白宣言」を聴く、とかね(笑)。そういう感じでいいんじゃないですかね。
300人で星野源さんの「恋」を聴く!…まあ、そんなの300人で星野源さんの「恋」を聴く…なんて、多分昨年末に日本中のそこかしこで起こった事だと思いますけどね。だから、それはやめましょう。
「300人で聴くべき曲」…今、何でしょうね。やっぱね、「夢飛行」ですかね。「夢飛行」じゃなかったら、もう「夢一夜」しかないですよね、もうね…梅沢富美男さんの(笑)。
300人で聴く…「夢芝居」だ!…「夢一夜」はアレだ、アレアレ…アレっちゃいけねえや。「夢一夜」はあれですよ、南こうせつさんですよ、「かぐや姫」の!
オレ、だって…あれだもん。ずっと映画監督になるつもりで、8mmカメラを誕生日に買ってもらう予定が、ステレオセット…
電器屋にふらっと寄ったステレオセット…あ、あ、「電器屋にふらっと寄ったステレオセット」じゃねえや(笑)。ふらっと寄ったのは俺だっつーの!…「電器屋にふらっと寄ったステレオセット」って、なんかもうシュールレアリスムみたいですけどね。
電器屋にふらっと寄っちゃったのね。そしたらそこにステレオセットがあって。「TANNOY」とかね。すごかったですよ。「マランツ」とかね。すんげえステレオセット置いてあって。自慢の…電器屋の親父に…ステレオセットで聞かせてもらったのが、「夢一夜」だったんですよね!…南こうせつさんの(笑)。
その時に生まれて初めてステレオってことを知ってですね、「音が右と左に別々に鳴っている〜!」と思って。「こっちからギターが、こっちからキーボードが!」なんつってね。
真ん中から、こうせつさんの歌がね、聞こえてきて。切々と。いや〜…もうほんとにね、南こうせつ」っていう名前が、もう既に歌が切々としている事を、音で表していると思うんですけれども。
それで魂持ってかれてしまって。「もうカメラ要んない!」っつって。「ステレオセット買って!」っつったのが運の尽きで、この商売やってるっていうね。大正解ですけどね。
でもまあ…やっぱ「因果は巡る糸車」と申しましょうか。筒井康隆先生の御芝居じゃないですけど、「諦めてこっちの道行って大正解」っていうのは、やっぱりこう…過去の亡霊っちゅうか、やって来ますよね。
この年になって「映画に出ろ。」って言われるとは思いませんでしたけどね。
あの…「映画監督になれ!」って言われた事は1回あるの。
それもね、丁重にお断りしました。
えーとね…亡くなったね、あの方。荒戸源次郎さん。
もう亡くなったんで、時効…っていう言い方も変ですけどね。
荒戸源次郎さんが映画プロデューサー…晩年は監督もされてましたけど、映画のプロデュースもされていて。
荒戸源次郎さんに呼び出されたのよ。ある日。
新宿のパークハイアットのピークカフェっていう、新宿で打ち合わせなんかする人はよく使う…ね、特にお金持ち系の人がよく使う、立派なウインドービューが…東京中が見渡せるっていうカフェがあるんですけど。
そこで荒戸さんに呼び出されて…「ああいう口調の方ですから…。」っつっても有名じゃないでしょうけど。
「あの〜…映画監督されませんか?」って言われて。
「いやいやいやいや…(笑)。急に何をおっしゃるんですか。」っつって。「何で僕が映画監督しなきゃいけないんですか?」って言った時の、荒戸源次郎さんの根拠が…
「『cure jazz』っていうアルバムが素晴らしいから!」っていう
(笑)。
あの…UAとね、今UA何処だっけ?…言えない言えないか。海外に住んでんだけど。いろんな事情があって海外に住んでて。
一粒種…一粒種じゃねえや、UAはもう4人…産んでるかな?…長男でいいのかな?…虹郎はね…
「虹郎」なんて呼び捨てにしちゃって。ワタシ…売れっ子の芸能人で名前呼び捨てにできんのは虹郎ぐらいしかいないですからね。
てか、ガキの頃から可愛がってんのは、もう長沼(マネージャー)の倅と虹郎しかいないですから(笑)。その二人以外はもう大人になってからしか会った事が無い人ばっかりなんで。
もう…よちよちの頃から知ってんのは…長沼の倅は名前出せないですけど(笑)…「あばれはっちゃく」に年々似てきてるんですけどね(笑)。長沼の倅と、虹郎だけです。
虹郎はまだ…こん〜ななって、ちょろちょろ飛び回ってる頃から、「ニジロー!」っつって…「録音の邪魔すんじゃねえ!」っつってた仲ですからね。
…っていう話なんかをライブのMCでしたりすると、客席に虹郎がいると「キャヒャヒャー!」っつって「ちげーよ!」とか言うのが聞こえてくるんです。虹郎が嬉しそうにニコニコしてね。
はい、もう…立派な俳優になっちゃってねえ。なんですけども…
何の話してたか、さっぱり覚えてないんですけど(笑)。
えーと、300回の話だ。あ…荒戸源次郎さんの話だ。
で、荒戸さんがそういうふうに仰ってくださって。ほいで…脚本もあったんですよ、もう。
いやあ…「因果は巡る糸車」と言いますけれども、脚本が…「さる有名な小説家の方の、発表されなかった小説を脚本にしたもんだ。」っつて、バッと出されてね。
すげえなと思ったんですけど、「いやあ、ちょっと…。」っつってお断りしたんですけど。
とにかく「映画監督、あなたはできる!」って言われて、「なぜならUAと一緒に作った『cure jazz』が素晴らしいアルバムだからだ!」っていう(笑)。
ちょっと…「だいじょぶかな、この方?」って思ったまま…ね、いたんですけども。
ま…大丈夫じゃなかったですよね(笑)。
頭のネジがね、ちょっといかれたオヤジでしたよ。いかれたお爺さんでした。非常に素敵な方でしたけどもね。
はい。やっぱりそうやって一回抑えたまま、こう…元に戻ってくるもんですけど。

The Beginning of a New Birth/a

The Beginning of a New Birth/a

A Foreign Sound

A Foreign Sound



cure jazz

cure jazz