「どの国でもどんな音楽ができる星。」

「粋な夜電波」第296回放送は、急遽「特集/国籍不明。どの国でもどんな音楽ができる星」。
なかなかラジオでかかることのない楽曲を紹介。2時間しか寝ていないヘロヘロの状態でなされた解説の一部を文字起こししてみました。

GOOD LIFE (IMPORT)

GOOD LIFE (IMPORT)

本日は「特集/国籍不明。どの国でもどんな音楽ができる星」と題しまして、一聴だに「どこ産」だか分からない…違った意味での不思議な音楽を特集いたします。
そうそう、私は彷徨えるジャズ・ミュージシャン…菊地成孔と申します。お見知り置きを。
深夜、そして色々あった今日という日の終わり。寒さの極みから、ほんのちょっとだけの温度の上昇という、スローモーションにも似た変化を、音楽と共に小一時間ばかり、ごゆっくりご堪能ください。
口上明け、1曲目が始まるまでに、お気に入りのリカー、お気に入りのリーフ、お気に入りのフィール…を御用意くださいませ。
それでは「貴様ら、『オリンピックを本当にもう一度やる』…と言うのなら、来るべき1964年の東京に向けた、大人の夜の世界…泰然自若、余裕綽々と参りましょう。あらゆる、あらかじめ改善された記憶とともに。」

はい、デイム・ファンクなんかを思い出させるヘヴィな低音、そしてこの後展開されるトーキングボックスなどなど…タイトルも「Boogie with me」。英語ですが、果たしてどこのバンドでしょうか。お聞きください。

(曲)

Boogie with Me

Boogie with Me

はい。このユニットですね、チーム名ですね…「MODOGSTA」といいまして、メンバーの名前はDJ MOFAK、DOGG MASTER、BASTA BROWN。
さて、ここまで聞いてもまだ「西海岸かな? あるいは意外とこれがサウスなのかしら?」とか思ったりするかもしれませんが、なんとフランスでございまして。
フランスを代表するギャングスタ・ファンク」。「ギャングスタ・ファンク」っていう、要するに「ギャングスタ・ラップ」ではなくて…何て言うんですかね…「悪者のファンク」があるわけですよね(笑)。
実はこのシーン、非常に活況を呈しておりまして、一部の好事家の間では「最もダンスミュージックとしてホットなのは、今フランスのギャングスタ・ファンクシーンだ!」と言われております。
そうですね…ちょっと前にフランスのダフト・パンクなんかが流行らせた、ヴォーカロイド的なものを、70年代の産物でありますトーキングボックス…トーキングボックスってのは、口にパイプくわえて歌うんですけど、これの名人のことをトークボクサー」って言うんですけども(笑)。
ドッグ・マスターっていう男は、フランス一のトークボクサーの名手として知られておりまして、もう年なんですけども。
このチームが結成されて、このアルバムが発表されたのが2016年ということで、何週か前にやった「2016年っていうのは名盤が多産された年」だという事を表しています。
改めまして、もう一度紹介します。
フランスの「ギャングスタ・ファンク」のシーンで最大の人気を誇る、DJ MOFAK、DOGG MASTER、BASTA BROWNの3人が作り上げました「MODOGSTA」というスーパーユニットで、タイトルが「Boogie with me」。
フランス産ということで…CMです。

(中略)
※歌舞伎「寺子屋」の素晴らしさについてのトークは、みやーんZZさんの書き起こしでお読みいただけます。

「いやに時間が余ったな、オレ…。」って今思ったらですね、さっき「『SERALEEZ』が終わったらCMいく予定だったのに、喋っちゃった。2時間睡眠だからな!」って…これがすでに間違ってて。
「セラリーズ」が終わった後、もう1曲あってからCMの予定だったんですよ、台本上(笑)。よかったの、「セラリーズ」が終わって喋ってて。まあ…その勘違いによって、今…あと2曲あるのが逼迫してるっていうね。
今日は、何て言うか…「この曲はどの国の曲でしょう?」みたいなね、「どの国でもどんな音楽でも作れる星」どころじゃないっていうね。
「2時間睡眠の男はボケている」っていう特集になってしまいましたけれども(笑)。
次の曲は…「この曲は一聴だに他の国の音楽に聞こえるんだけど、しかし違う国です。」っていうスタイルではなくて、最初からどこの国だかわかんない(笑)。
すでに喋れる方にはわかると思いますけど、何語で何処の国だか分かんない…そしていろんな国の音楽に聞こえる音楽です。ジャンルでいうと、なんとヒップホップなんですけどね。
しかも、アーティストのアー写見ると、もう完全に普通のアメリカのオーバーグラウンダー・ヒップホップ、どっちかっていうとギャングスタ寄りの、ワルっぽい格好でジャランジャランのブリンブリン…な格好してるんですけど。キャップかぶってますよ…野球帽ね、お父様方的に言うと。野球帽かぶってるんですけど、ニューエラかぶってんですけど。
とはいえですね、こういう音楽です。聞いてみてください。
アーティスト名はね、読みづれえな…「アーミーゴズ・スグ」っていう人です。「アミーゴス」じゃないですよ、「amigos」だったらスペイン語になっちゃいますからね。「アーミーゴズ・スグ」っていうアーティストで、アルバムがね…「ムニ・タハリシャナン」?…で、曲名が「カートゥ・クラ」ですかね?…すべて予測値ですけど。お聞きください。

(曲)


まあ…そうですね、ワタシは知って買っちゃってるし、ヒップホップの特集の時に「世界中のヒップホップがある」なんつって、特に各国のヒップホップ…
ヒップホップはね、結構ね…「ラップ」っていう形式さえ乗ってればヒップホップに成り得るんで。
バックトラック…いわゆる「ビート」って呼ばれてる、カラオケのほうですよね…は、結構幅が広いですよね。
逆にバックトラック…全体のサウンドがそうなってないとそう聞こえない、例えばジャズとかR&Bとかっていうのは、言語がその国の言葉でも、むしろメロディやサウンドアメリカ産じゃないとダメ…そういうふうに聞こえないからね。ヒップホップはそこが逆走になってるんですよね。ラップでありさえすればヒップホップなんで。
これは…タミル語、国的にいうとマレーシアなんですよね。
「アフリカの各お国柄を知れ。」とかね、ま…「秘密のケンミンSHOW」とかいって、日本の事すら我々はアメージングだと思ってるわけなんだけれども。ましていわんやですけども、「アフリカの国を全部知れ。」とかね、あるいは大雑把に「ラテン」とか言ってるけど、中米と南米と…南米でも表裏ありますからね、ペルーとブラジルでは大きく違いますから…「そういうことの区別がもっとついたほうがいい。」とかなんとか言う人もいますけど。
つかないでエキゾチックでいることも人間の楽しみですから、それはそれでいいんだけど。
マレーシアと…例えばシンガポールの差が微妙に分かんないっていう人とかも多いと思いますよね。
これはマレーシアの音楽です。タミル語、タミル系ですよね。タミル語圏の言葉を使ったタミル系の音楽…タミル音楽ってのがあって、「アーミーゴズ・スグ」ってのはタミル音楽のプロデューサー/作曲家としては非常に有名な人で。
そうですね…USオーバーグラウンドの「M.I.A.」は…「M.I.A.」はオーバーグラウンドじゃねえか?…オーバーグランドじゃないかどうかってのは、今この2時間睡眠の頭だと茫漠としてしまいますが(笑)。
オーバーグラウンドだとしますが、アメリカの音楽なんか聞いてる人だと「M.I.A.がこれ使ったよね。」っていう事で有名なものでもありますけども。
前この番組でバングラディシュのヒップホップかけたことありますよね。バングラディシュのヒップホップは、どっちかっていうと東南アジアのものに似てて、タイのヒップホップに近かったんですよ。
ですがマレーシアになってくると、3連が出てくるんで中東に近い…(中略)
何が言いたかったんだろ(笑)…タミル語は分かりませんが、解説によりますと、インナースリーブによりますと、歌っている内容は「神への愛」だそうです。それでもヒップホップ足り得るわけですよね。
こういうのを聞くと、中壮年の親父とかが「本人達、ヒップホップだって意識なんか無いんじゃないの〜?」とか、高飛車で物知ったような事言うおっさんとかがいて、「まあ、楽しかりけり。…バカ!」って感じなんですけど(笑)。
写真見れば分かりますけど、完全にラッパーのつもりですからね。
中がマレーシア人なだけで、格好ラッパーですから、もう思いっきりヒップホップだと思ってやっていますね。

L'etoile Thoracique

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