「病的にハッピーフィール。」

「粋な夜電波」第320回放送は、〈けもの〉のニューアルバム「めたもるシティ」特集。
自信作をリリースできることへの青羊さんの高揚ぶりが微笑ましい、楽しいトークが弾みました。
オンエアされた楽曲もどれも素晴らしく、2017年の夏のムードを決定づけるかのようなポップアルバムになりそうですね。
アレンジを担当したベーシストのトオイダイスケさんも交えた御三方のトークの一部を文字起こししてみました。
※勝手ながら文中読みやすくするために、バンド名をあえて括弧くくりの表記にしています。

めたもるシティ

めたもるシティ

菊地 ま、何の芸もない…この時期、何の芸もない出だしですけどね…もうクソ暑いですねえ。いかがして暑さをしのいでおられますか、お二人は。
青羊 水分をとにかく摂る(笑)。
菊地 (笑)…トオイくん…
青羊 あと…
菊地 あ、あと…何ですか?
青羊 あと…今年ハマってるのが、湯むきトマトを…よく食べる。
菊地 よく食べる。
青羊 はい。
菊地 それは水分補給と同義ではないのですか(笑)。
青羊 ああっ…なんか…砂糖をかけて、ちょっと元気になる…みたいな感じで。
菊地 なるほど。同じ水分を摂るにしても、湯むきトマトに砂糖というのをお薦めしている…ということですね。
青羊 はい、そうですね(笑)。
菊地 わかりました(笑)。トオイダイスケさんは…いかがですか。
トオイ え〜…ひたすら寝てますね。
菊地 なるほど。
トオイ 寝るに限る。
菊地 わかりました。で、「この二人は一体誰だ?」と思われる方もいらっしゃると思いますが(笑)。この夏、やはり日本人の涼を取る…という意味でもですね、我が「TABOO」レーベルがリリースラッシュ中でございまして。先月末には日本語ラップ界のクソ」と呼ばれているジャズドミュニスターズ(笑)…の新譜が、なんとなく先走るようにしてリリース、そして今週来週と〈ものんくる〉…そして〈けもの〉の新作ですね。〈けもの〉は、いちおう形上「メジャー移籍第一弾」ということになりますけども。まあ、「TABOOレーベルのリーサル・ウェポン…最終兵器と言われている〈けもの〉(笑)…の、何日だ?
青羊 はい、19日ですね。
菊地 19日ですね。はい、水曜日ですか…にリリースされる「めたもるシティ」。「めたもる」が平仮名、「シティ」がカタカナであることから、パッと目が「ドラえもん」みたいに見える…という効果を狙っているということをはっきり名言している青羊さんですけども。リーダーの青羊さん…
青羊 はい。
菊地 今日は、あの…台本が一切無くてですね、全編フリートークなんですけども、どういうお気持ちで今臨まれていますか。
青羊 えっと…一刻も早く曲にいってほしいです。
菊地 わかりました(笑)。じゃあ、さっそくいきましょう。


(イントロ)


菊地 はい。ワタシの今年の夏、寝苦しい時の涼の取り方は、この曲を聴いて寝るということですね。〈けもの〉のニューアルバム「めたもるシティ」の1曲目、「オレンジのライト 夜のドライブ」です。お聞きください。


(曲)


菊地 はい、というわけで「菊地成孔の粋な夜電波」。TBSラジオをキーステーションに、東京港区赤坂、力道山刺されたる街より全国にお送りしております。今週は7月19日リリース、〈けもの〉のニューアルバム「めたもるシティ」特集ということで、ゲストは〈けもの〉のヴォーカルの青羊さん、そしてアルバムの音楽的ディレクターでもありますトオイダイスケさんに来ていただいております。お二人よろしくお願いします。
青羊トオイ よろしくお願いします。
菊地 というわけで、今週は盤のCMであると同時に、番組も今からCMです。


(CM)


菊地 はい。突然ですけどね…吉報というわけではないんですが、「菊地成孔の粋な夜電波」でございます。前回のレーティングの結果がですね…「もうレーティングなんかどうでもいいや!」と適当に投げた「スティーヴ・リーマン特集〜『スティーヴ・コールマンでもデイヴ・リーブマンでもないよ。スティーヴ・リーマンだよ。』」というマニアックな特集をやったところですね、なんとですね〜…3〜4年ぶりですかね、同時間帯第1位(笑)…そして40代男性のトップという…ですね、廊下に貼ってもらえるん…ですよね? 久しぶりに貼ってもらえるっていうわけですね。やっぱ狙って投げてもダメですねえ。狙わずに投げると当たるっていうね。〈けもの〉売っていきましょう、これ!(笑)。
青羊 ありがとうございます(笑)。売っていきましょう。
菊地 売っていきましょう。あの…最初これ全然売る気無かったんですけどね。
青羊 (笑)。
菊地 「青羊さんさえ良ければ、そんでいいんだ!」って感じで作ってましたけども。これ、もう…いけるんじゃないですか?
青羊 ほんとですか。
菊地 ええ。
青羊 やりたい事をいっぱいやらせてもらって、結構…なんか…やり切った感が私の中に(笑)…
菊地 (笑)。ま、今の青羊さんの…アガりきってしまってしょうがないっていう様子からも垣間見れるように、この新作ですけどね。このクソ世知辛い世の中ですよね…
青羊 はい。
菊地 世界的ないろんな不安とかですね、いろんな問題が横行している中、「音楽がそれを反映しなくていいのか?」っていう感じのほどですね、ハッピーフィールに満ち満ちた…嫌味全く無し、全曲ハッピーフィールに満ち過ぎて…今のアルバムとは思えないぐらいハッピーフィールですね。
青羊 そうですかね。
菊地 ある意味、病的にハッピーフィールっていうぐらいハッピーだと思うんですけど(笑)。
青羊 私、病気ですかね(笑)。大丈夫かな。
菊地 (笑)。大丈夫じゃないかもしれません、すでにね。
青羊 いや、でも音楽がやっぱりあるから、こう…前向きになれたり…景色が変わるじゃないですか、音楽聴くと
菊地 もちろんですよ、もちろんですよ。はい。
青羊 そういうので…ありたいとは思いまんね…(笑)。
菊地 (笑)。「思いまんねん!」って言いましたけど。「ますね」と「まんねん」を間違えた…
青羊 お…お…思います(笑)。
菊地 そのぐらいね、語尾がおかしくなるぐらいハイな青羊さんの状態を…これ、もう致し方ないですよ。ジャケット見たら、みんなこれアガりますよね。
青羊 そうですね。


(中略)


菊地 え〜、ま…あらためて御紹介しますが、「〈けもの〉のお二人です。」と言いたいんですが、〈けもの〉はお一人ですね。
青羊 はい。
菊地 〈けもの〉は…そうですね、ま…40代男性がトップということで、ちょっと調子に乗って説明を省きますけど、コーネリアスというとわかりやすいですかね。
青羊 そうですね。
菊地 一人でやってるユニットですよね。
青羊 はい、そうです。
菊地 青い羊と書いて「あめ」さんと読みます。
青羊 はい。
菊地 その芸名である青羊さんが一人でやっているユニットが〈けもの〉なんですね。で、〈けもの〉はアルバムが何枚か出ているんだけど、1枚前からワタシがプロデューサーとして一緒にお仕事させていただいて、最新アルバム「めたもるシティ」が、我がTABOOレーベルから〈けもの〉の…ま、一応SONYですからメジャー移籍…「いちおうSONYですから」とか言っちゃいけないですけど(笑)…メジャー移籍第一弾ということでリリースされるわけですが。今日はその青羊さんと、このアルバムの…ま、そうですね…アレンジャー…全曲アレンジ?
青羊 そうですね。
トオイ ほぼ全曲ですね。
菊地 ほぼ全曲ですね。ほぼ全曲。で、まあ…ベーシストでもあるんだけど、東京のこういうシーンに詳しい…ジャズを中心にしたいろんなシーンに詳しい人ならトオイ君の名前を知らない人はいないと思うんですけど。トオイ君は…今メインはベーシストということになっているのでしょうか。
トオイ 半々ぐらいになってますね。
菊地 ピアノも…ピアニストとしてもやってますよね。
トオイ はい。
菊地 ピアニスト、ベーシスト、打ち込みもできる、シンセも弾けるということで、まあまあ…マルチプレイヤーであり、アレンジャーであり、今回の実質的なミュージカル・ディレクターっていうかね、方向性を定めて…まあ、青羊さんと一緒にですけども。
トオイ まあ、共同制作っていう立ち位置で…
菊地 ですよね。まあ、プロデューサーがほぼほぼ現場に行かなかったんですね(笑)。トオイ君に丸投げっていう。
トオイ いやいや…あの…最初に菊地さんが、シティポップとかAORって方向性を示してくださって…
菊地 はい。大筋だけね。
トオイ 幸か不幸か僕は、そういう音楽に対する憧れっていうのを、中高生ぐらいの時からずーっと持って…
菊地 ああ、ほんとですか。
トオイ …きたので、その僕の中のそういう要素を、「もう、じゃあ全部出し切ろう。」って最初から思っていました
菊地 全開ね。全開に。
トオイ はい。
菊地 まあ、これは…オルタナのシティポップですよね、完全に(笑)。
トオイ ええ。
菊地 普通のシティポップみたいに詞が甘くない…ってね。
トオイ ああ〜。
菊地 青羊さんの詞がヤバすぎるっていう。
青羊 甘くないですか。
菊地 甘くないですよ(笑)。
青羊 あ、そうですか(笑)。
菊地 これヤバいでしょう。
青羊 そうかなあ。