「『ジャズ100年』とはいうけれど。」

「粋な夜電波」第324回放送、今週もジャズアティテュード。
マニアックなジャズ解説も、話として面白いので、つい引き込まれてしまいます。
今年が「ジャズ100年」と言われていることについて語られたトークの一部を文字起こししてみました。

ジャズ・レコード100周年記念コンピレイション(ジャズマンが選ぶ25曲 選盤/選曲・菊地成孔)

ジャズ・レコード100周年記念コンピレイション(ジャズマンが選ぶ25曲 選盤/選曲・菊地成孔)

Thelonious Monk Quartet with John Coltrane at Carnegie Hall

Thelonious Monk Quartet with John Coltrane at Carnegie Hall

今年はですね、「ジャズのレコーディング100年」って、一番最初のオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドによるEP…EPじゃねえや…あの時はアセテート盤より前だな…ま、すごい古いですね、100年前だからね。
の、レコーディングから100年経ってる。なので、「ジャズ100年」、「ジャズ100年」って、一瞬こう…いろんなレコード会社とかが言おうとしたんだけど。
でも、いざ「ジャズ100年」って言っちゃったのに、フタを開けてみると、100年前の音源…ま、ま、ま…博物的に100年前…博物学的にっていうか博物館的にっていうか、100年前の音源とかはボーンって残ってるかもしんないけど、80年前の音源とか95年前の音源とかってのは無いから、貫通的に100年分の音源があるようなイメージになっちゃうでしょ?…「ジャズのレコーディング100年」って言うと。でもね、無いんですよ。
で、ワタシもコンピ作ったの。作らされたっていうかね。ユニバーサルさんから、「菊地成孔が選ぶジャズ100選」かな?…ま、このタイトルも適当ですけどね。ほんとの名前じゃないですけど(笑)。
なんか、選んだんですよ。で、選んでわかったことは、「ジャズ100年」って言ってるんだけど、結局レコーディングが集中してるのは60年代・70年代の20年間だけじゃん!って思ったっていうね。
ま、ま…ゆって50年代入れて30年間だけなんで。「ジャズ30年」ですよ、実質上。それを「ジャズ100年」って謳っちゃってるんで。
まあ…この問題は、結構誰からも…言ってみれば、ものすごく脇が甘いわけです。脇甘いですよ。だって、「100年って言うんだからさあ…。」って誰だって想像するじゃない。ジャズのことあんまり知らない人が。
だけど、「じゃあ、総覧しましょう。カタログから。」っつって、50年代・60年代・70年代で、ほぼ終わっちゃってるわけなんで(笑)。
「全然『ジャズ100年』じゃないよ!」っていう…ツッコまれもしない、この寂しさね。炎上すらしないっていう、この…ジャズの寂しさを(笑)…噛みしめるわけですが。
ただ、今年はセロニアス・モンク生誕100年」、ほいでジョン・コルトレーン没後50年」っていうね。なんかもうきれいに…一気に脇が甘く無いですよね。一気に脇堅くなった上に、すげえ気が利いてますよね。ピタッと合ってるわけね。
で、しかもですよ。モンクとコルトレーンって言ったら、ジャズファンなら…って、まあ、そうですね…ビギナーの方にゼロから説明しても、ただ単に大して面白くもない話が何分も続くことになるんで、端折りますけど。
ジャズファンなら、モンクとコルトレーンっつったら1957年なんですよ。1957年しか無いです、後にも先にも。モンクとコルトレーンの前に1957年無し、1957年の後にモンクとコルトレーン無し!…ちゅうぐらい(笑)、アニバーサリーイヤーなのね、二人にとって。
で、その1957年から60周年ってことなんですよね。…59かな?…61かな?…1多いか少ないかわからない男ですけどね(笑)。だから、すごい気が利いてるの。
「モンク生誕100年」「コルトレーン没後50年」、そして「伝説の57年から60周年」ということで、まあ…57年のライブ盤を聞いていきたいと思います。
「ライブ・アット・カーネギーホール」1957年、セロニアス・モンクジョン・コルトレーン
これは、もう有名な発掘音源で、ずーっとこのライブは「ものすげえ、ヤバいライブだった!」と言われてたけれども、「音源は無いんだ。残念だな。」って言ってたのが、突然出てきたんですよ。
それが2005年ですね。すでに12年前です。干支一回りですけども。
なんとね、資料室の…何て言ったらいいの…資料室にある、こう…茶封筒みたいなのに包まれた缶、テープ…オープンリール・テープなんでカンカンみたいな缶に入ってるんだけど、その山の中からズラッと出てきたのね。
「あっ!」って言ったら、「モンクとコルトレーンだ。あの伝説のあれが突如出てきたわ。」っつってデジタル・リマスターして、ものすごいいい音で製品化されたのが2005年ですね。
過去、ワタシのラジオ番組でも何度もかけたことあるんですが……よいしょ、よいしょ…あっ、しまった!まだCDJの中にヒンデミットとアンドリュー・ヒルが入ってました(笑)。
ヒンデミットがね、アンドリュー・ヒルの薫陶を受けたって話も、ソース出せって言われると難しいんだけど。これも伝説の類だからね。でも、ちょっと聞いてみてください。試しにね。
まあ、このジャズアティテュードの気楽さね。


(中略)


ま、この2曲が似てるからっつって、薫陶を受けた証拠に何にもならないですけどね。
はい、というわけで、ジョン・コルトレーンに戻りましょう。
あまりにも、ほんと素晴らしいです。何回聞いても、ほんとハンパないんで。とにかく音の解像度がハンパないです。なんか、言っちゃブルーレイみたいなね、感じですよ。
後でね、同じ57年のファイブ・スポットのほうの盤かけますけどね。カーネギーホールのほうを聞いていただきましょう。
ジョン・コルトレーンセロニアス・モンク、アーメド・アブダル・マリク、シャドウ・ウィルソン。特にこのドラムスのシャドウ・ウィルソンのプレイは素晴らしいですね。
1957年11月29日に録音されたものが、長年…ミッシング音源だと思ってたものが突如倉庫室から…大掃除してたら出てきたっていうものの、CD化されたものです。
曲名は「ブルー・モンク」。

セロニアス・モンク・ウィズ・ジョン・コルトレーン

セロニアス・モンク・ウィズ・ジョン・コルトレーン