「狂い咲きサンダーロード」


休みの日になーんにもする気が起きず、ふとビデオで観てみた。
石井聰亙監督の名を一気に知らしめた1980年制作のこの作品は、日本のカルトムービーの傑作として今でも語りぐさにされることが多い。
とにかくぶっ飛んでる!ということはうっすら知っていたが、実は最初から最後まで通して観たことがなかった。
若くして亡くなった山田辰夫氏の狂気が凄まじく、若者の明日なき暴走を描いたというひと言では片付けられない、強烈なアナーキズムが強く印象に残る。
観る前は、ちょうど先日観た「TOKYO TRIBE」が、「狂い咲きサンダーロード」の最新アップデート版のような感じでもあるのではないか?と、ふとそんな気がしたので、さすがに古くさい80年代の暴走族の映画も今観たら楽しめるのではないかと思っていたのだったが。
意外にも、今のこの右傾化が進んでいるような現状を踏まえて観てしまったがために、痛快な作品として単純に楽しめなくなってしまっていた。
特に自省もなく「気に入らねえ奴は全員ぶっ殺す!」という、山田辰夫演じる暴走族の特攻隊長・仁の暴れっぷりがどんどんエスカレートして、最後は自警団のような右翼団体と、バズーカまでぶっ放す銃撃戦を繰り広げるのだが、今のこのご時世ではこれを「いいぞ!やっちまえ!」とは思えないよな〜。
観終わってwikiで調べてみたら、この作品は近未来の架空の都市での出来事という設定だったらしい。…言われないと気付かなかった(笑)。80年代当時のリアルな若者を描いたものだとばかり、てっきり…。
荒唐無稽なバイオレンス・ムービーとして共通するところは確かに多いけど、これに比べると「TOKYO TRIBE」の方が全然無邪気なもんだと思えてしまう。
なんだろう、終始不穏なこの感じ。想像力の欠如によって、実際にこの仁と同じような無軌道な暴走を行なう奴が現れてもおかしくないという現状が、うすら恐ろしいというのもあるし、いつの時代だって「何もかもぶっ壊したい!」という怒りのエネルギーはそこかしこで燻っており、我々はただ社会に飼いならされているのだという絶望を突き付けられて憤懣やるかたなし!という感情の持って行き場に困っているというのもあるだろう。
ただ、この鬱屈したエネルギーを作品に込めようとしても、平成の現在に山田辰夫のような目つきができる役者は見当たらないだろう。