「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡



先週のRinbjöの「戒厳令」リリースパーティーに行く前、TOHOシネマズ日本橋で「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を観たので、その感想。
数々の映画賞のあらゆる部門にノミネートされ、日本公開前からかなり高く評価されていたし、町山さんの解説もラジオで聞いていたので、必ず観ようと思っていた一本ではあった。
その後も第87回アカデミー賞の作品賞をはじめ、各賞をほぼ総ナメするなど、評価は上がる一方。
菊地先生も大絶賛されていたので、逆にハードルが上がり、「イニャリトゥ監督は難解なイメージがあるし、自分には理解できなかったらどうしよう」と思うほどだったのだが…。
実際に観てみたら、いやこれがもう大傑作。誰が観ても、これが映画史に残る一本になったことは疑いようがないのではないだろうか。
映像、脚本、構成、演技、音楽…すべての要素がいちいち「最高!」と叫びたくなるほどのクオリティで、とにかく素晴らしいとしか言いようがない。
何がどう素晴らしいかというのが、素人の自分には説明できないのだが、単純に「何から何まで面白いよ、これ!」と、いろんな人に薦めてまわりたくなるほど。
ワンカット超長回しに見える映像にも驚きの連続で、どうやって撮ってるんだろう?と不思議に思いながらも、とにかく画面を眺めているだけでもまったく退屈しない。
ブロードウェイの演劇の舞台裏という、なかなか観れないところのドキュメントのようにもなっているので、扱われている内容もすごく興味深い。
そもそも、かつてスーパーヒーローを演じて一躍スターになったが、その後ヒットに恵まれず、過去の名声で生きながらえて屈辱的な思いをしていたが、役者として再評価されたいと強く願って一念発起する老俳優…という主人公の役柄を、かつてティム・バートン版の「バットマン」シリーズで有名になったマイケル・キートンが演じること自体が、ドキュメンタリー的な要素を含んでいる。
共演の俳優の演技も喜怒哀楽の振れ幅が大きくて、舞台演劇に出演する俳優として説得力があり、文句なし。
特にエドワード・ノートン、最高。鼻持ちならないイヤな奴だが、舞台の上では天才的…というキャラクターも魅力的だが、彼のふるまい、表情がとにかく面白くて、何度も爆笑させられた。

ストーリーも、限定された時間の中で巻き起こるドタバタの中に、様々な人間ドラマが凝縮されており、さらにそこに主人公が取り憑かれている妄想が具現化した映像も加わるので、緊迫感もありながら展開も早く、それでいてすごく想像力も刺激する。
最初のうちは、「この超能力の設定、必要かな?」とか、「父と娘の話、むしろ邪魔になってないか?」と思っていた部分も、ラストで一気に昇華される。
しかもそのラストは、映像では実際に見せないのだ。
主人公の娘が見た…あのエマ・ストーンの大き過ぎる瞳に映ったものは、観客が想像するしかない。そこがまた心憎いばかり。
シーンが切り替わる時に鳴らされる、アントニオ・サンチェズのドラムソロは、強く印象に残ったし、この作品の中で重要な役割を果たしている。このドラムソロを中心とした音楽も素晴らしかった。
とにかく何もかも最高なのだが、それでも自分程度じゃ、この作品の素晴らしさの五分の一も理解できていないんだろうな…とも思わせるような深みがあり、何度でも観たくなる作品。
陳腐な言い回しだが、これほんとに「生涯ベスト級」の一本になったなあ。

Ost: Birdman

Ost: Birdman