「ライフ・オブ・パイ」


ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』を観た。
普段映画は一人で観に行くのだが、めずらしくこの映画にはうちの相方も興味を示したので、しかもIMAXで観たことないというので、どうせならとIMAX 3Dのエグゼクティブシートで鑑賞した。
もともと観たいとは思っていたけど、ちょうど今度の「シネマハスラー」の賽の目映画にも決まったことだし。
冒頭の動物園のシーン、いろんな動物たちが大画面で、3Dで観れて、ああもうこういう動物を観れるアトラクションとしてだけでもオッケーという感じ。リアルだし、非リアルでもあるし、不思議な映像。
その後展開されたストーリーも、その「絵づら」ありきだけど、ダイナミックな展開もあって、全く退屈することがなかった。
現在の大人になったパイ氏が語る回想〜という流れは、先に今の姿映したら、物語の「この先どうなる感」が削がれてしまうのでは?と心配になったが、これは逆で、どこまでが本当に起こったことかわからないような壮大な話を聞かされている、聞き手のカナダ人作家の脳内で、さらにイマジネーションが膨らんでいるのを、観客も同様に体験しているというかたちになっているからこそ、「ちょっとやり過ぎじゃないか?」と思わず笑ってしまうほどの、スケールのでかい自然現象の映像を心から楽しむことができたのだと思う。
とにかく映像に圧倒されたという点で、これこそIMAX 3Dで観るべき映画だと思えて、十分に満喫した。
最後の方で、すべてを語り終えたパイ氏が、実はこの話を信用してくれない人に向けて語ったもうひとつの話というのも話し、聞き手である作家にどちらの物語の方がよいか選ばせるというシーンがあり、人が物語を共有することについて、作り手からのメッセージを感じた。
個人的にはこの聞き役のカナダ人作家、のちにこの「パイの物語」の小説の原作者となるであろう人の、顔がとても好感の持てるいい顔だったところが、大きなポイントだった。こんな突拍子もない冒険譚を聞かされて、疑うとか冷やかすとかでなく、素直に戸惑っている表情、本当に続きが聞きたくて仕方が無いという表情が時折映ることで、自分も一緒になってこの物語に入って行くことができた。
こういう顔の日本人俳優がいたら、村上春樹の「回転木馬のデッドヒート」の映画化も可能なのでは?と、ちょっと思った。