「『新宿菊地シュラン』でお薦めのトラットリア。」

TBSラジオ菊地成孔の粋な夜電波」第264回放送は聴取率調査のスペシャルウィーク
『新宿菊地シュラン★菊地成孔が通う【新宿のうまい店】史上初!音楽付きラジオグルメガイド』と題して、新宿の美味い店を紹介しながら、その店や料理にマッチする音楽をオンエア。
菊地先生十年来の行きつけのトラットリア「プレゴプレゴ」を紹介されたところを文字起こししてみました。
「ビュロー菊地チャンネル」の「偽Instagram」にも、よく料理の写真がアップされているお店ですね。いずれ行ってみたいです。

Champion Sound (Reis) (Dlx)

Champion Sound (Reis) (Dlx)

と、まあ…こんなキャンプな話は例外的でして。
今、新宿は…ていうか、東京は…ていうか、日本は、もう料理の重さは重からず軽からず…ね、絶妙で。皿…全皿、店にあるのは全部美味くて。ワインの品揃えも適度に良く、しかも安くて気が利いている。ついでに厨房の子も給仕の子もみんなイケメン。数少ない女性スタッフもみんな綺麗…っていうね。完璧なトラットリアが掃いて捨てるほどありまして。
これはアイドルのサバイバル戦争に匹敵する激戦状態なのは、まあ…地方の方でも御存知の通りだと思いますね。
世界中探してもこんな国無いです、ほんとに。
さて、ここまで喋れば、ワタシの古くからの御贔屓筋におかれましては、「そろそろあそこの名前が出てくるな。」と、もうニヤニヤしてる方もいらっしゃると思いますが、御察しの通りでございまして。
本日2軒目の御紹介は…一回しか言わないですよ…「トラットリア プレゴプレゴ(PREGO PREGO)」ですね。「プリーズ プリーズ」ね、「プレゴ プレゴ」はね。
ここはもう常連になって十年以上ですし、一時期は週3で通ってまして。多い日は週6ぐらいありましたよね。
最初はまだガキくさかった店員たちも、もうすっかりたくましくなりまして。「最低でもあと30年はよろしくね。」といったところなんですけれども。
いわゆるポスト90年代スタイルのトラットリアとしては、新宿で最も古く、そして最も美味い。ま、ぶっちゃけ…恵比寿の「イル・ボッカローネ」…ね。今でも健在ですけどもね。日本で最初にでっかいパルミジャーノの塊にブロードで炊いた雑炊ぶち込んでね、練って練ってリゾットにして、直接皿に提供する…あれと、スカンピね…手長エビですね、あれを提供したことで、日本におけるイタリア料理史に名を刻む名店があるんですが、あそこのパクリですけどね(笑)。常連特権でラジオで言ってしまいましたけどね。
ただね、未だにフレッシュなメニュー作りと、あとやっぱり新宿っていう人がどんどん回転していく街…でデートした帰りのカップルさんや、新宿者の女子会の皆さん…もう新宿としか言いようがないローカリティで、大変な活気がありまして。もうパクリとは言わせない…ね。下手したら本家超えてんじゃないの?というね。奇しくも本家超えの話が続きました。
ディスクユニオンの新宿ジャズ館にCD買いに行く…ね。まだそんな事やってる…ワタシもやってますけど(笑)。なんて好事家の皆さんね、あそこの隣の1階がファーストフード天ぷらの「てんや」…のビルの4階ですんで。
ロバート・グラスパーのね、残念なマイルスのリミックス盤でも買った帰りにでもね(笑)、チラッと今「軽ディス」が入りましたけど。もうちょっと仕事してよ、グラスパーって感じですけど。え〜…寄ってみてください。
はい、お一人様でも全然オーケーです。「もう食えねえや!」ってほど食って、一人3000円いかないです。
ここで実際流れてるのがですね、これがですね…ハードバップボサノヴァと並ぶ万能BGMであるところの、売れ筋R&Bなんですけど(笑)。
これはあの…ま、大向う特権でね、ラジオで言っちゃいますけど、店長はじめ料理人の多くが元ヤンっていうね、元ヤンキーっていう(笑)。
夜中に行ったりすると、「菊地さん、聞いて下さいよ。」って喧嘩の話になるっていう、若い頃した…。
もう全員がね、いい子たちで。もう最高のシチュエーションなんですけど。
ま、そういう側面も影響してるんだかしてないんだかね、R&Bとにかく最強なんで。とりあえず現状ではフィットしちゃってるんですけれども。
ここはひとつ、もう一声のマリアージュということで。
「ポスト90年代式」らしく…あの〜この用語はですね、80年代に原宿の「バスタパスタ」で勃興したイタリア料理革命ね、その前までの70年代は暗黒時代でしたから。「キャンティ」なんてね、伝説の店ですけど、相当ヤバい料理出してましたからね。
…を受けて、90年代にイタリアに修業に行ったの、大量の日本人が。
その日本人の料理人がイタリアで直接勉強してくると、勤勉なんで、凄い腕をつけて帰国したわけですね。で、彼らが帰国して一斉に始めて、まあ…90年代後半から00年代初めにかけて、東京のトラットリアの水準がグーンと三段ぐらい上がるんですけど。一種の革命後モダニズム運動ですよ、これね。…なんですが、それはまあ、「90年代式」とワタシ呼んでるんですけど。
ま、90年代合わせで、ちょっと渋谷系のDJみたいなことになっちゃうんですけど(笑)、「やっぱ…今またこの辺りかな?」っていう…ね。
はい、エンリオ・モリコーネいきましょうかね。
ヘイトフル・エイト」…タランティーノのね、あの映画でアカデミー音楽賞もらいましたけどね。まあ…オリジナル・サウンドトラックより、その前のタランティーノ「ジャンゴ」に提供した昔の曲のほうが、はるかに良かったですけどね(笑)。まあ、あそこは名誉賞っていうとこでしょうかね。
まあ、あれですよ…クインシー・ジョーンズとエンリオ・モリコーネ…お互いお爺さんですけど、あの抱き合ってるところとかね、感涙無くして見れませんでしたけど。まあ、余談はともかく。
ガチガチの勝負デートだと思うとね、ちょっと軽やかで洒落過ぎてますけども。仲良しの軽くて楽しいデートなんかには、もうピッタリですね。
90年代の小西さんとかのね、お洒落レア盤呪い…も解けた昨今ですから、若い方に90年代に流行ったイタリアン・シネ…「チネ」って言うんですけどね…「チネ・ジャズ」なんて言うんですけど、そういった物がどう聞こえるか…ね。
どうパスタに合って聞こえるか。ペペロンチーノに合って聞こえるか。楽しみですね。
では、はい、お聞き下さい。

エンニオ・モリコーネ・イン・ラウンジ

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One Hundred 50's Favourites

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