「ジャズ・トランぺッターに移入するということ。」
「粋な夜電波」第290回放送はスペシャルウイーク。
『菊地成孔のジャズ夜話〜映画公開記念!菊地成孔が、マイルス・デイヴィス&チェット・ベイカーの映画を語る』と題して、「マイルス・アヘッド」と「ブルーに生まれついて」について解説されました。
番組最後の曲紹介前のトーク部分を文字起こししてみました。
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あのね、今回はね…強権にまとめるわけじゃないんですけど。
どっちもね…片や、やっぱりね、ちゃんとマイルス…ドン・チードルはマイルスにすごく移入してるし、イーサン・ホークもものすごいチェット・ベイカーに移入してる。それは同じ病理を抱えたジャズ・トランペッターに移入してるんだけど。
片やね…「少年ジャンプ」で、片やもうちょっと病的な話になってんの。
「少年ジャンプ」は楽しいですよ。バンバン鉄砲撃ってね、追いかけあって、謎解き、宝の奪い合い…大アクション映画ですよね。無邪気ですよ。元気で無邪気。あの…(当時のマイルス本人は)病気でいっぱいいっぱいなんですけどね(笑)。病気や怪我でいっぱいいっぱいなんだけど、まあ…元気で無邪気。
で、片方は…もうちょっと病的な設定になってんの…悪夢みたいな感じになっちゃってんだよね。その中で、「チェット・ベイカーはそんなに悪くなかったよ。」っていう。
そういう意味で、白人の病み方と黒人の病み方っていうのを、こう…やっぱ、移入した先が分かれてる。マイルスとチェット・ベイカーそのものだとも言えるんですよね、映画自体が。そういう意味では、忠実とも言えます。アーティストの幻像にね。
まあ、ちなみに…チェット・ベイカーの映画「ブルーに生まれついて」に出てくる奥さん…ね。ジェーンは、どっから出てくるかっていうと、ジャズファンなら誰でも知ってるウィリアム・クラクストンっていう人の写真集…これがチェット・ベイカーを…
まあ、インスタグラムの世の中ですよね。「これから写真は石油の代わりになる。」と言われてる世の中ですけど。一枚の写真が時代を変えるってこと、ありますけども。
ウィリアム・クラクストンが撮った、チェット・ベイカーの浜辺で恋人と…恋人が寝そべっててチェット・ベイカーが優しく寄り添ってる有名な写真があるんですけど、その写真から取ってきてるからね(笑)。
で、その写真は作り物ですよ。ドキュメントじゃないの。いかにもチェット・ベイカーを良く見せるための、チェット・ベイカーのタレントイメージに合った、作りの写真なんですよ。
その有名な写真から飛び出してくるわけですからね(笑)。貞子のように、ブワーッと飛び出してくるわけです、奥さんが。
だから…それは無いでしょ?…っていう。「いや、イーサン・ホーク…それは無いだろ。」って思うんですけど。
まあ、でも…そのぐらいしたくなっちゃってるんですよね。だから、かなり夢ですよね。
というわけで、どちらの作品も…ジャズファンであればあるほど噛み応えがある映画ですし、ジャズファンでなくても楽しめる映画だと思います。実際、興行成績も「BORN TO BE BLUE」も凄いいいんでね、日本で。…らしいので、お薦めできます。
「BORN TO BE BLUE」は公開中、「マイルス・アヘッド」はこれから公開ということになります。
というわけで、本日のお別れの曲は…まあ…かけたくないな!っていう(笑)。こんなね、AM・FMも含めて「聴取率の王」と言われているTBSラジオのスピーカーから毒が流れていくっていう事の(笑)…責任を「オマエは取れるのか?」って言われた時にね、「まあ、何らかの形で取りましょう!」としか言い様がないんですけども。
その名も「Let’s Get Lost」。チェット・ベイカーが完成の直前に謎の死を遂げた、彼を追ったドキュメンタリー映画のタイトルでもあります。「さあ、失おう。」って曲ですからね。
「もう、これから手に手を取って一緒に地獄に堕ちようぜ。」っていう悪魔の囁きが、今から3分40秒にわたって流れますので(笑)…そちらを聞きながら悪夢を見てください。
「菊地成孔の粋な夜電波」、そろそろお別れの時間でございます。来週はですね、そうですね…何にしようかな?…「NON STOP 菊地成孔」で!(笑)。自分の作品を1時間、ノンストップでDJしようかと思います。
はい、じゃあ来週は「NON STOP 菊地成孔」で。ま、それがあれですよね…今回の毒に対する禊という感じですね(笑)。
ほんとにね…80年代、これカフェとかでガンガンにかかってたけどね。おかげでバブルとか変なもん呼び出しちゃて、みんなおかしくなっちゃったと思いますよ。
はい。チェット・ベイカーの有名な曲ですが「Let’s Get Lost」を、この番組で初めてプレイすることになります。
おやすみなさい。
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