「魂を揺さぶられた映画の音楽。」

先週、菊地さんインフルエンザ発症のため、急遽過去の内容を再放送した「粋な夜電波」、第349回は無事にパーソナリティ復帰。最新のアフリカ音楽の特集となりました。
大熱演の壮絶なコントもありで、盛りだくさんの内容。これが日曜の早朝に全国に流れているのかと思うと、TBSラジオおそるべし。
番組最後のトーク、大絶賛の映画「わたしは、幸福(フェリシテ)」のサウンドトラックを紹介されたところを文字起こししてみました。

CARNIVAL III: THE FALL AND RISE OF A REFUGEE [CD]

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というわけで、ジャズミュージシャンの菊地成孔がお送りしてまいりました「菊地成孔の粋な夜電波」、そろそろお別れの時間でございます。
本日最後の曲は…まあ、そうですね…ワタシが久しぶりに結構本気で旗振ったんですけど、これはもう「旗振んないと誰も観ねーよ。」っていうぐらい地味な映画なんで旗振ったんだけど。
その「誰も観ねーよ。」のわりに素晴らし過ぎんですよ。まだ公開中かな?…全国のどっかでは。東京ではもう終わったのかな。
「わたしは、幸福(フェリシテ)」というね、番組でも紹介しました。
ワタシ、監督とも対談しておりまして。劇場用のパンフレットでは、ワタシとアラン・ゴミス監督の対談が、なんと4ページにわたって載っているということなんですけども。
キンシャサを舞台にした映画なのね。で、カサイ・オールスターズ…さっきから名前がよく出てますけど、Konono No.1とかコンゴトロニクスっていうような、ちょっと前に流行ったワールドの…曲球みたいなのにハマった人は聞いたことあると思いますけどね。
コンゴでやってる、親指ピアノをアンプリファイしたエレクトリックバンドですね。このバンドと、あとはキンバンギスト・オーケストラっつってね…キンバンギスト・オーケストラというのは、オーケストラを作るの。そのオーケストラもアマチュアですよ。で、楽器も完備されてないし、練習もなかなかままならないし、なにせアフリカ人ばっかりだから、あまり上手くはないの。けど、めったくそ感動するんですよね。
で、最初はね…エルサルバドルだのコロンビアだので成功して、特に…やる事がなくてギャングスタになっちゃって身を滅ぼしちゃってる子ども達に音楽の良さを伝える…すごい熱意がある、昔で言うところの宣教師だよね、これ。簡単に言うと。その先生方がクラシック音楽を伝えることで、悪くなりかけた子ども達を前向させる、生きがいを無くした人達に生きがいを与えるということで、非常に素晴らしい…ヨーロッパでクラシックをやる、日本でクラシックをやるということとは全く違った…要するに社会参加か…のプログラムとして非常に成功したの。
で、キンバンギストっていうのは、それのキンシャサ版で、アフリカ大陸にある…まだ活動しているオーケストラとしては唯一のもんだと思うんですよ。
で、彼らがアルヴォ・ペルトっていうね、架空の…実際にはどの具体的な宗教にも存在してないんだけど、神は信じてる…だからアルヴォ・ペルトは架空の…架空っつったら変なんだけど、どの神に対してでもないすべての神に対する賛美歌ってのを作ってる人なのね。それだけじゃないんですけど。アルヴォ・ペルト自体はエストニアの作曲家ですけど。
で、カサイ・オールスターズの、ちょっと色っぽくて、ちょっとダミ声のね、ダンスミュージックとしての音楽と、一方でキンバンギスト・オーケストラの非常に静謐で、そしてちょっと不器用で…ま、言っちゃヘタウマなんだけど、その音楽が交互に鳴る、本当に素晴らしい映画です。
なんらかのかたちで、ソフト化でも何でもいいですから、必ず観ていただきたいですね。
ワタシが今年一番魂が揺さぶられた映画の一つです。それのオリジナル・サウンドトラックが届きました。
今から聞く曲は、まあ…ざっと聞けば、下手くそな混声合唱ですよ。ですけど、これもキンバンギストの運動の中で行われたもんで、映画で観ると迫力が凄いです。
こういった曲を聞いた時にね、連想するのは…まあ、あれでしょうね…ホールでさ、クラシックのホールで…なんでしょうね、おめかしじゃないですけど…モーニングとかタキシードを着た、あるいはドレスを着た、男性女性がこう「ハア〜」って歌ってるとこでしょうね。
これ画観たらびっくりしますけど、テントの中の…もう石がゴロゴロしてるところに、民族衣装を着た老いも若きもが集まって、これ歌ってるんですよ。これはもう画を観ると、何つーんすかね…涙を禁じえないですね。
わたしは、幸福(フェリシテ)」サウンドトラック、これちなみに2枚組で、1枚がリミックスになってるって、すごい贅沢な物なんだけど。この中からリミックスじゃないほう、映画で使われている中で、キンバンギスト・オーケストラのいくつかの演奏の中から、あえてオーケストラではなくて、混声合唱団のほうを聞いてお別れしたいと思います。
これも今のアフリカの音楽のリアルな運動の一つ…ま、非常に細い一つですけどね。聞いていただきたいと思います。
もし興味がある方は、音源あるいは映画に必ず当たってみてください。キンバンギスト・オーケストラの曲は3曲聞けます。そのうちの1曲をお届けしたいと思います。
ま、非常に長い…賛美歌の形式が付いてますけど、簡単に言うと「O Immanuel」…イマニュエルという天使に向かって歌っている楽曲ですね。そちらをプレイして、本日お別れしたいと思います。
それでは「わたしは、幸福(フェリシテ)」オリジナル・サウンドトラックより、キンバンギスト・オーケストラが擁する混声合唱団による「O Immanuel」。

わたしは、幸福 サウンドトラック+REMIX (解説付き)

わたしは、幸福 サウンドトラック+REMIX (解説付き)


Ngikhumbule Khaya

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