「アジョシ」


もともと観たいと公開を心待ちにしていたのだが、シネマハスラーの今週の賽の目映画ということもあって、台風直撃の日にもかかわらず「アジョシ」を観に行って来た。
ウォンビン主演ということで、場内は中年のオバちゃん達の姿が目立ったが、午前中の回だからか台風だからか、東京楽天地シネマズのスクリーン3は半分以上が空席。
それにしても、韓流スター目当てのオバちゃん達はこの作品がバイオレンス映画だということを知ってて来ているのだろうか。以前イ・ビョンホン主演の「悪魔を見た」を観た時にもそう思ったのだが、お目当ての韓流スターが出るというだけで来たオバちゃん達が、残酷過ぎる暴力表現に卒倒しないかやや心配でもある。
テシク(ウォンビン)は、過去になにかしら秘密を抱えているようで、無愛想で寡黙な男なのだが、「質屋のおじさん」として、隣に住む少女ソミに慕われている。
ソミの母親はクラブダンサーで荒れた生活に身をやつし、ソミのことを構ってやれない。友達からもイジメを受けている孤独なソミに頼りにされているテシク。
ある日、麻薬の取引に居合わせたソミの母親は、隙を見てブツを横取りして逃げる。それを入れた鞄をテシクの店に質に入れたことが組織にばれてしまい、母親は拉致される。その時一緒に連れ去られたソミを助けるため、犯罪組織の抗争に巻き込まれていくのだが…。
「レオン」をふまえた今となっては、特に真新しいストーリーでもないが、麻薬を扱う韓国マフィアと、臓器売買にまで手を出す中国系の組織との裏切り合いや、犯罪組織を追いながらもテシクのことも敵視して立ちふさがろうとする警察との絡みが複雑で、なかなか先の読めない展開になっていく。
細かく張られた伏線によって、説明過多にならずに徐々にテシクの正体や、敵のキャラクターが明らかにされていくなど、緊張感を保ったまま話は進む。見事な運びだったと思う。
そしてこの作品の見所は、なんといっても鍛え抜かれた肉体のウォンビンが見せるアクション。ただカッコいいだけでなく、暴力の残虐さから目をそらさない徹底した描写で、鬼気迫るものがありド迫力。
実際に、自分が最もグッと涙をこらえたシーンは、ラストの感動の場面ではなく、クライマックスのまさに闘っている場面だった。暴力描写を徹底しているがゆえに、ひとりの少女のために「命を賭けている」リアルさが伝わってきたからなのだろう。
観客を泣かそうとしてスローを多用するあざとい演出もあるにはあって、あまり好みではないのだが、作品を台無しにするほどではなかった。強いて言えば、エンドロールで流れる歌がちょっとダサくて、そこで気持ちが冷めた。
しかし、それにしてもウォンビンの演技よ。これが「母なる証明」(ワタシの心のベストテン第一位の映画)で、まだあどけなさの残る白痴の青年を演じていた人と同一人物とは思えんよ、ほんとに。本格派の役者としてのウォンビンに感服。ちょっと虜になりそうだわ。

母なる証明 スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]

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映画を観終えた後はそのまま9階に上がって、楽天地スパの天然温泉&サウナでのんびり。ロウリュで汗をかいた後に生ビール飲んだりして、まさに「おじさん(アジョシ)的」な休日を満喫したのだった。
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