「カフカの『城』」

カフカの「城」 [DVD]

カフカの「城」 [DVD]

先日観た、園子温監督の「恋の罪」の中に、カフカの「」という小説のことが何度も登場する。
昼は大学教授で夜は売春婦の謎の女・美津子が、父親にもらって大事に抱え、何度も読み返している小説が「城」だったし、この「城はそこにあるはずなのに、最後まで城には辿り着けない」というモチーフが、「恋の罪」という作品のテーマの重要な一部でもあった。
なので、「恋の罪」を観た後で、無性にカフカの「城」が読んでみたい気分になったのだが。
…なんせカフカだし、しかも未完の作品とあれば、読んだところで腑に落ちない宙ぶらりんの気分のまま放り出されるのはわかりきっている。そのために分厚い文庫本をわざわざ買って読むのもなあ…と気後れ。
実はこのカフカの「城」を、原作に忠実に映像化した作品があるらしいと知って、そのDVDをレンタル。
それがオーストリアの監督ミヒャエル・ハネケがテレビ用に作ったというこの映画で、日本では劇場未公開だったらしい。
観てはいないがその評判はよく聞く「善き人のためのソナタ」の主演俳優ウルリッヒ・ミューエが、カフカの「城」では、その城に招かれる測量技師・Kを演じている。
役者も監督も立派なところじゃないか、これ結構映画作品としてもちゃんとしてるんじゃないか…と思って観たのだった。
…ま、観終わったところで、どう…という感想もないのだが。
やっぱりカフカカフカなままで、とことん不条理だ。何がどうして、何故こうなって?と疑問を抱いたところで、それが解決される見込みは全くないので、不毛っちゃ不毛。
しかもこの映画も、「この先どうなるのかな?」と思っているところで、突如暗転して終わってしまう。
カフカ原稿はここで終わっている」からだって。…原作に忠実にって、こういうことかいな。
まあ、でも、きっと原作小説を読み終えた後に抱く、「なんだかなあ…」という気分と、ほぼ同じ感情を抱かせたに違いないのだから、この映画は、カフカの映像化としてまったく正しいのに違いない。

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