「嘆きのピエタ」
仕事帰りにBunkamura ル・シネマに、キム・ギドク監督の「嘆きのピエタ」を観に行った。
火曜はサービスデーということで、急いで行ったが残席わずか。上映時にはほぼ満席になった。
キム・ギドクファンってこんなにいたんだ?と、ちょっと驚いたが、やはり「ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞受賞!」という箔が付いている影響が大きいのだろう。
自分も最近になって、キム・ギドク作品をDVDとかで後追いで観始めているにわかファンなので、実は新作をリアルタイムで映画館で観るのは初めてだったりする。
良くも悪くも監督の個性が強く出過ぎる作風なので、人によって好き嫌いは分かれると思うが、自分が今まで観た作品はどれも面白かった。
リアリズムに徹するわけでもなく、かといって独創的な物語にファンタジー性があるかというと、そんなことはなく、人が目を逸らし続けている無惨な現実を、独自の視点からグロテスクな寓話に作りかえるというか、そんな作風の監督だと思っている。
今回の「嘆きのピエタ」も、残忍な暴力も平気で振るう冷酷な借金取り立ての男・ガンド(イ・ジョンジン)の前に、「生まれてすぐにあなたを捨てた私を許して」と懇願する、母親だと言いはる謎の女・ミソン(チョ・ミンス)が現れて…という、これまた業の深いエグイ展開になりそうなストーリー。
大いに期待して観たのだったが、結論からいうと、この作品には自分はいまいち乗れなかった。
「そんなわけねえだろ!」的なツッコミを入れ出したらキリがないのは最初から分かってるのだが、今まで絶妙なところで踏みとどまっていたリアリティ・ラインが、さすがに自分の中でもキープできなくなってしまい、かなり冷めた視点で観てしまった。
(「サマリア」で、蛇行する乗用車にまで感情移入して泣いた、この自分が…)
ちょっと話の運びが雑というか、登場人物にもう少し丁寧な演出を加えないと感情移入しにくいのでは?と思った。
「こうしてこうなったら驚きでしょ? こいつが実はこんな奴だったらキツイでしょ? ほれほれ!」と、ギドク監督が自分の妄想をどんどんスクリーンにぶつけていきたくて仕方なくなったのか、ちょっと独り善がりが過ぎると感じた。
キム・ギドク監督に「あなたの映画、独り善がりですよ。」と今さら言うことの不毛さは十分承知しておりますが…(笑)。
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