「レボリューショナリー・ロード」


「レボリューショナリー・ロード」というタイトルだけ聞くと、「革命の道」?と、なんか壮大なスケールの戦記物を想像してしまいそうだが、これは実際にアメリカにある通りの名前。主人公夫妻が暮らす郊外の住宅街の通りで、「あんなところに住みたいわ〜」と憧れられるようなところで、ささやかな幸せを象徴しているのだと思われる。
以前「ブルー・バレンタイン」が公開された時に、「タマフルライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル)」の放課後ポッドキャストで、この作品について徹底討論するという番組もあって、その中でよく引き合いにだされていたのが、この「レボリューショナリー・ロード〜燃え尽きるまで」。2008年のサム・メンデス監督作品。
レオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレットタイタニックカップが、夫婦役として再び共演したことで話題になった本作、このキャスティングは明らかに意図的なものだろう。
純愛を全うしたカップルとしてある種理想化された二人が、今回はこれでもかとばかりにお互いを罵り合い、致命的なまでに傷つけ合う夫婦を演じているのだから。「タイタニック」でのイメージを逆手に利用して、そのギャップだけでも衝撃を受けることは間違いない。
「ブルー・バレンタイン」とよく比較されることからも、夫婦崩壊ものだとはわかっていたが、その非情っぷりは半端じゃない。ただでさえ、自分の中では高慢で勝ち気な嫌な女の役のイメージが強いケイト・ウィンスレットだし、中年になり、もはやかつての美少年のイメージは薄れつつあるディカプリオが、よりによって最悪のタイミングで、言わなくてもいいことを言い、しなくてもいいことをして、お互いのことを思いやるふりをしつつも、結局は自分のエゴで相手を傷つけてしまう。
舞台となっているのは1950年代高度経済成長期のアメリカだが、現在の我々でも十分に思い当たるところのある、観ていて心が痛い映画。むしろ女性が強く自己主張するところなどは、当時の背景に忠実にというより、現代よりに演出されているのではないだろうか。
自分勝手が過ぎる主役の二人はデフォルメされているものの、結末を観て後から感じることは、誰の身にも起こりそうなことであり、誰が悪いというわけでもなかったという苦い思いだ。
教訓があるからといって、わざわざハッピーでない映画を観る必要があるのかと思われるかもしれないが、役者の熱演、練られた脚本、美しい映像など、作品の完成度は高く、この不幸な話の中でも人生の中で輝いている瞬間は必ずあり、そこを救い上げようとする真摯な姿勢が感じられて、観て良かったと必ず思える作品だ。

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