「悪いやつら」

月曜がメンズデーのシネマート新宿で「悪いやつら」を観た。
チェ・ミンシクとハ・ジョンウのW主演のヤクザものと聞いて、「これはかなりヘビー級の映画になるのではないか」と、公開前から期待していた作品。なかなか時間が合わずに、ようやく観ることができた。
個人的にナ・ホンジン監督作はあまり好みではないのだけれど、「チェイサー」「哀しき獣」の二本で主役級俳優としての地位を確立し、彼が主役ならとにかく観るべし!と思わせるまでの存在となったハ・ジョンウ。今回は拳ひとつで成り上がって行く、カリスマ性もある武闘派ヤクザの頭・ヒョンベを熱演。男が惚れる男を説得力を持って体現していた。
そして、まさにこの人こそ「彼が出る映画にハズレ無し!」と言っても過言ではない、韓国映画界きっての演技派、チェ・ミンシク
この二人が揃い踏みだから面白いに違いないと。で、観たらやっぱり面白かった。
〈以下、ネタバレ含みます〉
ヤクザの世界でこの二人がのし上がって行く、サクセス(?)ストーリーなのかと思ったら、ノ・テウ大統領の宣言から始まった、90年代の警察と暴力団の激しい戦いを描いた、社会派な作品でもあった。
原題は「犯罪との戦争 悪いやつらの全盛時代」というらしい。
冒頭でチェ・ミンシク演じるチェ社長と呼ばれるイクヒョン(韓国人の名前はややこしいな。)が逮捕されるシーンから始まり、回想シーンのような形で遡って二人の出会いが語られる。
元々はせこい悪徳税関職員にすぎなかった小人物のイクヒョンが、覚せい剤横流ししようとして出会ったヒョンベと親戚だと分かってから、ヤクザ世界に足を踏み入れ、どんどん増長していく。
仁義を重んじるヒョンベと対照的に、自分がうまく立ち回ることしか考えていないイクヒョンの外道っぷりが、笑えるけど腹立だしくもあり…。
どんな嫌われ役も厭わないチェ・ミンシクの役者根性には、毎度毎度感心するが、今回のこの役もゲスいゲスい!(笑)。
虎の威を借る狐というかそれ以下のくせに、虚勢を張り、弱い者には横柄な態度をとり、強い者にはこびへつらう。何度も人を裏切っては、痛い目にも合うくせに、無様なまでに命乞いをし、裏ではまた嘘を並べて根回しし、保身に必死になる。…よくもまあ、ここまで下衆な人物を演じ切れるものだと、半ば呆れるくらい。
親切なクムジャさん」「悪魔を見た」の殺人鬼の役もドイヒーだった。この役も…ミンシク氏本人になんの得も無いんじゃないか?と思ってしまうほどだが、映画を観終わると、結局はこの「チェ・ミンシク 力(りょく)」に全部持ってかれてしまったという強烈な印象を残すのだ。
ちなみに、チェ・ミンシクの名を世界に轟かせた、パク・チャヌク監督の大傑作「オールド・ボーイ」のハリウッドリメイク版の公開が控えているが、どうしても期待感が上がらないのは、彼を超えられるとは思えないからなんだよな。…ジョシュ・ブローリンの役者根性も凄いとは思うけれど。