「タイピスト!/最後のマイ・ウェイ」


最後のマイ・ウェイ [DVD]

最後のマイ・ウェイ [DVD]


早稲田松竹で「タイピスト!」と「最後のマイ・ウェイ」の2本立て。
昨年公開された「ムード・インディゴ うたかたの日々」に関するトークショーの中でも「最近のフランス映画は良作が続出して勢いがある。」と、菊地成孔先生が紹介する数本の中に含まれていたこともあって、観たいと思っていた作品だった。
仕事帰りの時間との兼ね合いで、すでに「最後のマイ・ウェイ」が始まって10分ぐらいの時間に高田馬場に到着したのだったが、この日を逃すととても2本観る時間は取れそうになく、観たいのは「タイピスト!」の方だったので、まあいいかと思って上映開始後に入場。
フランク・シナトラの歌唱で世界的に有名な「マイ・ウェイ」の作者で、フランスでは国民的スターだったクロード・フランソワの生涯を描いた「最後のマイ・ウェイ」…映画としてはいい出来なのだろうとは思ったが。
嫉妬深く、見栄っ張りで、傲慢で他人を信用しない、性格的にかなり難ありのクロードは、私生活にも問題の多い人物だったが、それでもヒット曲を次々に生み出し、60年代後期から70年代初頭に歌手として、大きな成功を収める。
その、真実の姿はこうだったけども、人々は彼の才能に魅了され…という部分なのだが、個人的にその音楽自体をいいと思えず、いくら60〜70年代のこととはいえ、正直…ダセー!…と思ってしまったので、プラマイ帳消しにするほどの魅力を感じることも出来ず、ただただ嫌な性格の奴の不愉快な振る舞いを延々見せつけられただけだったのでツライものがあった。
いや、やっぱり今のこの時代に、オヤジの自己満足カラオケスタンダードの代名詞ともなった「マイ・ウェイ」は、なかなか心に響かんよ。
(ちなみに、帰宅してからクロード・フランソワについて検索してみたら、主演のジェレミー・レニエがクロード本人に激似で驚いた。それがわかる本国の人とかにとっては、すごく完成度の高い作品なのだろう。)
それとはある意味逆に、「タイピスト!」の方は、内容はシンプルなラブストーリーなのだが、主演のデボラ・フランソワがとにかくチャーミングで、やることなすこと微笑ましくて、楽しく観れた。
ドジで不器用な田舎娘ローズ(デボラ・フランソワ)の唯一の特技はタイプライターの早打ちで、彼女を秘書として採用したルイ(「ムード・インディゴ」でも主演したロマン・デュリス)がコーチ役を務め、二人で「タイプライター早打ちの世界大会」の優勝を目指す…そして二人の恋の行く末は?…という、ぬるいっちゃあぬるいストーリーなのだが、ちょっとスポ根的な要素もあるので、特訓して大会を勝ち進んで行く様子は、見ていて否が応でもアガる。
予定調和的なハッピーエンドなんだが、爽快感があって良かった。
両作品とも、いわゆる非ハリウッド映画ということは意識せずに観れて、アジアなど非欧米の国が国際的なマーケットに向けた作品を国内での興行と切り離して考えて製作しなければならないのに対して、フランス映画はそのまま広く流通していくという強みがあるので、面白い映画を作ることによりシンプルになれるのかな、と感じた。