「世の中持ち回り。」

「粋な夜電波」第151回放送。
ちょっとお疲れ気味の菊地先生を癒した意外な1曲とは?
大仰な鼓舞ではなく、冗談めかしつつも、多くの人を励ます言葉をそっと添える…深夜帯になったことによって、真夜中の迷える魂を震わせる、まさに「粋な夜電波」になりました。
番組エンディング前のトークの部分を文字起こししてみました。

シャロン

シャロン

さて、じゃあ、もう…あっという間に…今日最後の曲となってしまいました。
まあ、そんなこと言ったら、「オマエも焼きが回ったよな〜!」って言われてもしょうがないんですけど。
今こうやって楽しく番組をやってますけど、聞いている皆さん…何万人いるのかなあ?…10万人以上いると、こう…局の方から聞いたことありますけど、すごい数ですよねえ。
そのうち、楽しく生きて、何の問題も不安も無く、もう「絶好調!」…それが「もう20年以上続いてます!」って方は、100人ぐらいしかいないと思うんですよね。ひょっとしたら10人かも。場合によってはゼロかもしんない。
大抵の方は…ツラい…ですよね?
こんなこと…ワタシ、ラジオで…ラジオだけじゃないですけど、私生活もそうですけど、弱音を吐くっちゅうことが、あんま…めったにないんですけど。
めったにないってのは、ワタシが強くて偉いとか、そういうんじゃなくて、なんか…ダメなんですよね。元々が。育ちだと思いますけど。
ワタシね、去年の大晦日に、恩人…ていうかね、すごい影響を…
これラジオで言うまいと思ってたんですけど、すごい影響を受けたね…ま、この人だけで夜電波3回は保つ…いや、もっと保つ…というね。
ワタシの話がそこそこ面白いって言ってくれる方、いらっしゃるんですけど、ワタシ自身は、全然ワタシの話面白いと思えないんですよ、普通だと思ってるの。
ていうのは、その人がいたからなんですけど。
その人は、誰でも人生に何人か持ってる「笑いのマイスター」っていうか、マイスターっていうか…多分あの人、人間じゃなかったと思うんですけど…神様?だったと思うんですけど。
その…神様がワタシには二人いるんですよね。で、一人はまだ生きてるんですけど、そのうちの一人が大晦日に亡くなったんですよ。
亡くなったんですけど、大晦日が誕生日なんですよ、その人(笑)。
で…人死にを笑っちゃいけないんですけどね。
「あの人大晦日が誕生日で、あんな面白い人で大晦日が誕生日なんだよ。」ってゲラゲラ笑ってたら、大晦日がそのまま命日になった、落語みたいな人なんですけど。
亡くなる十日前に見舞いに行ったらね、「やあ、久しぶり!…最近なんか面白いことない?」って言ってたんですよね(笑)。死ぬ直前に。
で、まあ、そういうこともあったり、あと…新宿PIT INNって店でね…ワタシはそこでデビューしたんですけども。
そこで長年、ワタシがデビューした時から、一貫してPAやってた方が亡くなったりして。
まあ、いろいろ…知り合いが亡くなったりしてですね、比較的短い…ワンシーズンの間に亡くなったりして。
あとプライベートでなんやかや、ちょっと疲れて…。
で、整体行ったんですよね。ほいで整体行って、整体の片山洋次郎先生って方に、さすがに弱音吐いたんですよ。
そしたら「ハハッ!」って笑って、「菊地さんでも弱音吐いたり疲れたりする歳になりましたか。」って言われて。
「まあまあまあ…悪い事があったってことは…良い事ありますよ!」って言われて。
…いや、よかったな〜って思って、さすが片山先生!って思って帰って来てね。
で、まあ…「夜電波」の選曲しようと思って。
まあ、なんちゅうことない…1曲ぐらいラヴァーズでも、そろそろ暖かくなっから、かけようかな?って思って、この曲聴いたら、まあ…涙が30リットルぐらい出てですね(笑)。ええ。もう命がどうにかなるんじゃないかっちゅうぐらい、涙が出まして。もう、スッキリしたんですよね。
何で当たるか…分かんないですよね。ホントに。
シャロンフォレスターです。CD化されたのが初めてかな?去年。ヴァイナルの方は大変な高値が付いてて、その後モノとしてどうなったか分かんないですけどね。
ま、今のワタシの気分をね、そのままお届けしたいですよ。
「ちょっとくさくさすんな〜。」とか、「嫌なこと続いてるな〜。」という方、ほんとにベタベタなこと言いますけどね(笑)、嫌な事あったら必ず良い事ありますから
あの…世の中持ち回りですからね。
こっちがウッハウッハ言ってる時に、こっちで自殺未遂。こっちはもうドーンと落ちてる時に、向こうがウッハウッハ言って、思い通りの人と結ばれた…っていうのが世の中ですから。持ち回りなんで。
自分が落ちてる時は、誰かがいい思いしてると思って。
ま、その代わりね、自分がいい思いしてる時に誰かが悪い思いしてると思うと、気ぃ悪いですけど、そこはまあまあ…ずる賢くですね、自分がいい時は世界中がいいんだ!と思ってですね(笑)。ギャルみたいな物の考え方ですけど。
「Which Craft Is Witchcraft」っていうタイトルです。これは非常に気が利いています。
「Witchcraft」ってのは魔法使いの魔術のことですね。一説によると「bitch」って言葉の元が「witch」ですね。「Witchcraft」。
で、「which Craft」ってのは、「どちらが?」って意味での「which」ってあるでしょ。で、「craft」ってのは手仕事だとか、口車とか…いろんな意味があるんですけど。
Which Craft Is Witchcraft」ってのは、まあ、これは端的にシャレになってるんですけど、一番意訳して可愛く…これ、女の子が歌う歌ですけどね…一番意訳して可愛く言うと、「どっちの口説き文句が魔術?」っていうのが、多分一番いいと思うんですよ。
そういう感じの、そこがサビになってる曲で。
…なんてことない、王道のラヴァーズ…ラヴァーズってのはレゲエのもっとポップなもんですけどね。
これをお聞きいただいて、まあ、来週もツラい人からいっぱいメールがくるんでしょうけど(笑)…わかんない、楽しみの絶頂のね、「結婚の祝いに一曲!」って方もいるかもしれませんけども。
ま、ま、ま…ワタシほんとにね、ここんとこ…ちとハードで…累積的なね、去年の暮れから累積的なハードだったんですけど、だいぶこの曲で…泣いちゃったんで。
まあ、結構ね、歩きながら泣いたりしますよ。都条例で禁じられてないんでね(笑)。
ジャズミュージシャンの菊地成孔がお送りしてまいりました「菊地成孔の粋な夜電波」、そろそろお別れの時間です。
それではまた来週金曜、深夜零時にお逢いしましょう。
来週はスペシャル企画、再来週は「ジャズ・アティチュード」でございます。
来週も再来週も…といわず、永遠によろしくお願いします。
Sharon Forresterで「Which Craft Is Witchcraft」。

※文字起こしの「NAVERまとめ」あります。