「入門にも最適な、粋なジャズ・アティテュード」

「粋な夜電波」第153回放送は、先々週からの予告通り、全編ジャズの番組。
「ジャズ・アティテュード」は金曜深夜に移動してからの新規リスナーの方々にもやさしい、入門編にも適した内容となりました。
興味深いエピソードを交えた解説とともにオンエアされた楽曲をきっかけに、ジャズリスナーがさらに増えると思われます。
番組冒頭の部分を文字起こししてみました。

バラード

バラード

はい、「菊地成孔の粋な夜電波」。ジャズミュージシャンの菊地成孔TBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。
毎月第一週は「粋な夜電波・ジャズ・アティテュード」と題しまして、100%ピュアJAZZの…ま、ジャズ番組ですね…として、お送りさせていただくことにしております。
え〜…というわけで、もう情け容赦なく、ジャズ番組だということでネタもジャズネタだけでいきますけども。
ちょっと前の話なんですけど、ワタシのイベントで新宿PIT INNでDJ…大西順子さんが引退されたんで、まあ…DJならやっていいだろうってことでDJやって。で、演奏がスガダイロー君という…もう今若手のピアニストで…もう若手じゃないですけどね、相当高い位置にいるスガ君と、大西さんと三人で。スガ君の演奏があって、ワタシのDJがあったんで。
で、三人で打ち上げで呑むじゃないですか。
で、ワタシ元々…騒音難聴でですね、後で聞きますけどDCPRGってバンドをずっと長くやってたおかげで、騒音難聴になりまして(笑)。左耳がほとんど聴こえないんですけど。
そうすっと結局どうなるかっていうと、喋り声がものすごくデカくなるんですよね。でっかい声で…なんかすごい…たまにいるじゃないですか、レストランとかで突き抜ける人とか。みんな「あ〜、うるさいな。」って感じで見てるんですけど、ワタシは「あ〜、わかるな〜。」っていう(笑)。「多分あの人難聴なんだろうな。」って感じなんですけど。
難聴じゃなくて、ただ躁病っていうか、ハイになってひたすら声がデカい人もいますけども。
ワタシそういう感じで、ものすごいデカい声で菊地凛子さんがさぁ!」とかっていうタイプなんで(笑)。「あの…ちょっとちょっとちょっと…。」って、有名な人の名前出てきたりするので、行きつけの店だったりすると、すぐ個室に通されてしまったりするタイプなんですけど(笑)。
「あ〜、なんかサーヴィスいいな〜。」とかって思ってたら、声がデカいだけだったっていうことなんですが。
そんなワタシがですね、「なんか…ずいぶんデカいな〜、この人の声!」って思ったのが大西さんの声で(笑)。
で、大西さんがスガダイロー君に「あんた、声デカいわよ!」ってキレてたっていうね(笑)。
三人で喋ってたんすよ。ものすごいデカい声で喋ってて(笑)。
で、ワタシはまあ…エレクトリックの、しかもオーケストラで耳潰したんで、まあ…名誉の負傷だと思って、まあこれはしょうがないんですけど、鼓膜ってのはなかなか再生しないでね。しょうがないんですけど。
大西さんとスガダイローさんはですね、アコースティックしかやらないはずなんですよね。やってこなかったはずです。まあ、遊びで弾いたりしたことはあるかもしれないけど。
なんで、あの二人はアコースティックピアノの自分のモニターの音量で、自分の耳を潰したっていう、ワタシよりはるかに名誉の負傷が深い人でですね。ピアノ1台で潰しちゃったんだっていう(笑)。
全員「自分は難聴だ。」っつってましたから、もう…うるさくてしょうがないですよね(笑)。
で、ものすごい呑むんで、ものすごい酔っ払っちゃって。
それでまた大西さんのディスりがすごいんですよ(笑)。右から…古今東西ディスっちゃうんで。
で、スガダイロー君って方は…ま、そん時は初対面だったんですけど、まあ何ていうか…ナイスガイっていうか、いい意味でも悪ぃ意味でも、とてもスケベな男でですね(笑)。
大西さんが毎朝泳いでるんだっつったら、「俺もそこに行くんだ!」っつって頑として譲らなくなっちゃって(笑)。「一緒に泳ぐんだ!」って言い出して。
ほんでもう…ものすごいデカい声で、ディスるわエロいわで、ワタシもなんか…自分でも覚えてないんですけど、喋りまくるわけですね。
周りに居る人が騒音難聴になりそう!…って言われてしまったという、菊地成孔がお届けしております。TBSラジオをキーステーションに。


毎週ちょっとずつジャズを入れたり入れなかったりっていうペースできたんですけど、「固めてジャズの番組をやってほしい。」という声大きく、リスナーの皆様から。
そして「まとめて、毎週のようにジャズの番組を、やってくれるな。」という声、「やるな!」という声大きく、批評家の皆様から(笑)…っていう感じでですね。
まあ、もしリスナーの方におかれましても、評判がよろしくないようでしたら、また昔のペースに戻って、ジャズは番組全体に溶け込ませるようにし、リスナーの評判が良かったら、毎月恒例にしたいと思いますけどね。
ま、その場合はとにかく、ネタも全部…今出たようにジャズ関係しかないんで。
「俺、もう全然分かんないから眠いわ。」っていう方と、「いや、分かんないけど面白い!」っていうね。
ワタシの人生の目的は「分かんないけど面白い。」ってことを広める(笑)…地球全体に広めることなんで。
一人でも多くの方が「分かんないけど面白い。」ってことになっていただけるといいな〜と思って番組をやっておりますし。
ま、そもそもジャズミュージックっていうのが、パッと聞いてすぐ分かる音楽だったとしたらですね、もっとたくさんの人が聞いてると思うんですよね(笑)。
あれはあの…「分かんないけど面白い。」って時間に耐えられる人間だけが、乗り越えてこられる音楽ですので。
最初は誰にとっても…日本語ですら難しいですもんね。分かんないですもんね。
だんだんだんだん分かってくる喜び…っていう。パッと分かるってのがポップスですよね。ま、どっちもそれなりの良さがあると思います。


はい、いきなりですけどね。まあ、ジョン・コルトレーンのライブの、しかもブートではない復刻音源ですね。
57年のセロニアス・モンクとのカーネギーホールが6〜7年前に話題になりましたが、まあ…あれからいろいろ出してまして、最近盤になったものがあります。
これはですね…ドイツですね。あ〜、リーデルホールだ。これ、行ったことありますよ、ワタシ。シュトゥットガルトですよ。
シュトゥットガルトの惨劇!〜猪木対ローランド・ボック」…あ!しまった、ジャズじゃない話しちゃいました。
ジャズとプロレスの話は食い合わせがいいようで悪いので、ジャズとプロレスの話は盛るとですね、一気に20世紀に戻ってしまいますので、絶対盛らないようにしたいと思います。
え〜…「シュトゥットガルトの惨劇!〜猪木対ローランド・ボック」ですね(笑)。まあ…サディスト対マゾヒストっていうかね、どっちがサディストでどっちがマゾヒストかということは、プロレスファンの方ならお分かりかと思いますけども。プロレスの話はここまで!という感じで(笑)。
え〜、63年…これは言うまでもないビートルズ前夜」ですね。64年になりますと、アメリカでもビートルズがデビューすることで、ジャズミュージックってのが、いきなり我が世の春から、突然ピンチを迎え出す、と。ポピュラーミュージックとして、という意味ですけどね。
だからジャズはもうアート化せざるをえなくなっていく…という形が、音楽産業…音産の中で起こるわけですけれども。
シュトゥットガルトで、ジョン・コルトレーン…まあ、63年のジョン・コルトレーンといえば、ジョニー・ハートマンと一緒に演ったりですね。
ま、とにかく誰でも知ってる、あの「バラード」…「Ballads」ですけどね、「バラード」っていうアルバムがありますよね、アドリブを一切吹いてないっていう。
あの「バラード」と同じ年ですので、まあ…比較的ソフトな年と思われてますね、63年。あ、ちなみにワタシの生まれ年ですけどね。
ですが、ライブではこんなことしてた…っていう。
まあ、黄金カルテットですよね、第一期のね。ジョン・コルトレーン(ソプラノサキソフォーン・テナーサキソフォーン)、マッコイ・タイナー(ピアノ)、ジミー・ギャリソン(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)。
とても素晴らしい演奏で、非常にアフリカ的なリズムというか…今から聞くのはですね、「インプレッションズ」という有名な曲ですが、実際の演奏は28分36秒です(笑)。約29分ですよね。
今回はその盤から、ジャズファンの皆様にはこの…2枚組ですけね…「Complete Live in Stuttgart 1963」というアルバムで出ておりますので、お買い求めいただくとしてですね、今夜はワタシが編集した…何分に編集したかっていうと、それでも9分なんですけど(笑)…テーマ、ピアノソロ(マッコイ・タイナー)、ベースソロ(ジミー・ギャリソン)、それからサックスソロになって、サックスソロの後にサックスとドラムのデュオになって、それでテーマになる…という。コルトレーンが出てくるのがですね、20分過ぎっていうですね(笑)。凄まじい状況なんですけど。
これをコンパクトにラジオエディットしてみましたので、聞いてみてください。
え〜…菊地少年、生後6ヶ月ですね。1963年の11月です…11月4日ですね。まだワタシがションベンとか漏らし放題だったでしょうね(笑)、6ヶ月ですからね。泣くわ漏らすわ…って時に、コルトレーンも泣いたり漏らしたりしてたような状態だった(笑)ってことを、お聞きいただければと思います。
ジョン・コルトレーン・カルテットで「Impressions」。


Complete Live in Stuttgart 1963

Complete Live in Stuttgart 1963

WOW

WOW

スガダイローの肖像

スガダイローの肖像

※文字起こしの「NAVERまとめ」あります。