「JAZZANOVAの功罪。」

「粋な夜電波」第378回は、またしても「ジャズ・アティテュード」。
とりとめもない与太話と、最高の音楽。これがこの番組のトーン&マナーのスタンダード。
ジャズ特集が固定化されようが、急遽特集の回になろうが、番組の面白さは変わりません。
オープニング明けのトークと、ジャザノヴァの新譜を紹介したところを文字起こししてみました。

Blue Sky

Blue Sky

はい、「菊地成孔の粋な夜電波」。ジャズミュージシャンの、そしてですね…
最近、急にあの〜…うーん、言っちゃうと場所バレちゃうかな、ま…いいやバレちゃってもね。事務所のすぐ隣の、最初スタンドバーだった所がですね、まったく同じ店のまま営業を拡張しまして、クラブになりまして(笑)。
クラブになるって、どういう事か?…別にただ単にでっかいスピーカー入れてDJ入れただけなんですけど。もともとスタンドバーだった場所がクラブになった…クラブだって言い張ってるだけなんで。結局どうなるかっていうと、騒音が外に漏れてですね、さらには客が外に漏れるんですよね(笑)。
クラブ営業してるの夜中なんで、場所柄…もうワタシ歌舞伎町じゃないですからね、もうちょっと固い所にいますから。もう夜中になったら辺り一面ピシャーッと閉まっちゃってますんで。もうそこだけからガンガン音出してるから、そもそも誰も住んでないって感じの所で、苦情も出ないんでしょうけどね。
とにかくもう…ゲロ吐いちゃってるんですよね、その店がブワーッて…1件だけ(笑)。まあ、二丁目からね…二丁目からの位置言うと分かっちゃいますけど、二丁目から流れて来た外人ですよね。ほぼほぼが白人なんですけど。
あの…白人どうのこうのって話じゃないですけどね。もう二丁目で飲んで、飲み疲れて、あるいは二丁目で揉めて、揉め疲れて。ほいで流れ流れて、「あ、ここに飲めるとこある。クラブあるんだ。」っつって来て。で、朝方にナンパしたりしてる…要するに、簡単に言うと…クソ外人ですよ、クソ外人!(笑)。
ま、別に…日本に観光に来てる…ね、海外からのお客様をクソ呼ばわり、SHIT呼ばわりするつもりはまったく無いですけれども。普段…ま、要するにどこの国だろうと、クソ外人ですよ。あんな酔っ払った状態のね。
酔っ払った白人ほどクソなものはないですからね(笑)。「いや、酔っ払った黒人や酔っ払った黄色人種だって、クソはクソだろう!」って言われたら、それはそうなんですけども。あんま「クソ、クソ」言っちゃいけませんけどね。


ま…とにかく白人ですよね。で、そんなクソ外人溢れるスクエアにワタシの事務所がありまして。事務所で静かに…人生の機微などを考えながら、いかしたエッセイなんか書いちゃったりして(笑)。そいで、編集者の方にパッと送信して。
「さあ、外でちょっと一服…なんでしょうね…強炭酸水でも飲もうかな、暑い夜だ。」なーんつって、おもてに一人降りると、もう…どーでもいいようなクソエレクトロニカが「ブッキャ、ブッキャッ…」って流れてて、クソ外人がブワーッていっぱいいるんですよ(笑)。
コンビニ行くのに信号渡んないといけないんで、信号の所に立ちまして。そうすっと、ものすごい視線を感じたんですよね。
視線はね、皆さんもよく感じられると思いますけど、後方からの視線です。厳密に言うと、左後方からの視線なんですけれども。
左後方から非常に熱い視線を感じまして。それがどうやら白人男性からのものだということが、なんとなくですね…「菊地’s EYE」によって、こう…分かってしまったわけですよね。
白人男性の…まあ、2メートル近くある、もう酔っ払ってクソ化している白人男性の視線を感じたわけですよね。
まあ…振り返って「ハロー。」なんか言った日にゃあ、何が起こるかわかんないですからね。
喧嘩だって事になりゃあね、まだそんでもマシですよ。マシって…良くないですけどね、やっちゃあね。やっちゃ良くないけど、まだ喧嘩ならマシですけど。抱きつかれたりした日には、どうしたらいいかわかんないですよね。その…二丁目から流れて来た可能性も十分ありますから。ちゅうのは、まあ…チューしてる奴らとかも見てるんで(笑)。
ヤベエなあ…と思って。早く信号渡っちゃえ…と思って。でも時差式でボタンでなかなかね、ボタン押して…で、道幅が広いんで、さっと駆け足で渡っちゃおうってわけにいかないんですよ、やっぱり。車の通りも多いんで。
なので、もうこれ信号待ちするしかないんですよね。で、じーっと待ってると、ジトッとした視線を感じまして。「ヤベーな、ヤベーな、ヤベーな、やだな〜。」と思って、青になってパッと飛び出したら、そいつがサササッと前に出たんですよね。


ちなみにワタシその時に、麦わら帽子・黒いTシャツ・半パン…もう海パンみたいなやつですよ、半パンに、サンダル履きだったのね。で、Tシャツだから左手のほうにちょっとタトゥーが入ってるのが分かっちゃったりするわけじゃないですか。夜中でも。
ほいで、ヤダな〜と思って、そんななりして…後ろから見たら女の子ぐらいのもんですよ、アタシなんか。ほんとに。あいつらから見たら。
いっそのこと…ま、同じ話になっちゃいますけどね、いっそのこと凶暴にガーンってやられたら、こっちもやり返す方法がありますからね。細いなりにね。小鼻に噛み付いたりとか、いろいろあるんですけど。
愛されたらどうしようって(笑)。萌えられてたらどうしよう…と思って、ブルブル震えながら渡ったら…そいつが俺を追い抜いて行ったの。
そしたら、そいつの格好が、麦わら帽子に黒いTシャツに半ズボンにサンダルで、左手にだけタトゥーが入ってて(笑)…「同じ格好してる奴がいるよ!」と思って見てただけってことが分かってですね…。
ま、非常に楽しかった…というわけですよね。
その後、ハローこそ言いませんけど、こっちニヤニヤしながらチラ見してたんで、「おんなじだね!」って感じで。
まあ、何て言うんですか…コントみたいなね。ペアルックっていうやつですね(笑)。でっかい・小っちゃいでペアルックでしたけどね。
はい、そんな菊地成孔TBSラジオをキーステーションに全国にお送りしてまいります。


今週は、前回に引き続き3週連続で「ジャズ・アティテュード」ですね。先に申し上げましょう。来週も「ジャズ・アティテュード」です!(笑)。
来週は「ジャズ・アティテュード JAPAN」!…日本のジャズ特集(笑)。
もう「やめてくれ。」ってのも通り越して、なんかもう突き抜けた笑いがサブから湧き起こりましたけどね。こういう事を、誰にも相談せずに一人で決めている番組でございます。はい。
えー…The Coreのね、「Shoot The Evil Dog」…録音は1年前ですけどね、ノルウェーのジャズですね。北欧もんでございます。
やっぱり、あの…当たりがデカいよね。やっぱデカい奴らがやってるから。うん。
軽く打ったって「カンッ!」ってのがね、ウチらが思いっきりスナップ利かせて「カンッ!」ってのと、連中が全体重かけて軽く落としただけで「ドンッ!」ってのと同じぐらいでしょうね。ま、そういう世界ですよ。結局ね。


はい。さあ、早速もうどんどんいきましょう。ジャズ特集ですからね。
え〜…ジャザノヴァ!(笑)。
「えーっ、JAZZANOVAかけんの?」って思ったマニアの方もいらっしゃると思いますけど、ジャザノヴァをかけるんですよ。
何でかけるかって?…ジャザノヴァが今年新譜を出したからに決まってるじゃないですか。
「ええ〜っ!」っていうね。ジャザノヴァの全盛期は20年前ですからね。
それこそ「Nu Jazz」とかね。New(ニュー)って言わないで「ヌー・ジャズ」っつったんだけど。とか、「クロスオーバー」とか…いわゆるクラブジャズですよね。
ジャザノヴァはね…ちなみに今「へー、そんなのあるんだ〜。」って人のことはぶっち切って喋ってますけどね、JAZZANOVAってのは簡単に言うと…ドイツのもんですよ。
ジャザノヴァをね、ブラジルだと思ってる人とか、イギリスだと思ってる人…多かったんじゃないかなあ。20年前も。
新作がね、そうですね…11年ぶりだそうです。SPANK HAPPYと同じじゃないですか(笑)。
ジャザノヴァはね、功罪大きいよ。
ジャザノヴァはね…いや、もちろん「功罪大きいよ。」って、ジャザノヴァは功・罪だから良いところもいっぱいあったわけだけど。
ジャザノヴァが「JAZZANOVA」って名前じゃなかったら、あんなにもクラブジャズが4つ打ちじゃなかったと思いますけどね、ワタシね。
クラブジャズってのが4つ打ちで、「結局、ラテンハウスでしょ、これ!」って言われちゃう…っていうね。上に載ってるネタがジャズのネタだっていうだけで、音楽の構造的にはラテンのハウスじゃないの?って言うのが、クラブジャズの悪口っていうか、クラブジャズをくさす人の常套句なんだけど。
まあ、別にそんでもいいと思いますけど。ただただですね、なぜクラブジャズってもんが、4つ打ちに固定されてしまったのか?…もっとファンクやヒップホップに寄っても良かった可能性だってあると思うんですよ。並行宇宙には。
ですけど、やっぱりクラブジャズが4つ打ちのラテンハウスに似てしまったのは、ジャザノヴァがJAZZANOVA」っていう名前にしたからだと思うんですよね、ワタシ(笑)。
名前はすごい重要ですからね。言霊はね。言霊・ジャザノヴァですよ。
文字通りこれはジャズとボサノヴァの融合の言葉をですね、ドイツ人が考えたわけですよね。「JAZZANOVA」っていうのをね。
はい。11年ぶりの新譜でございます。ま、とにかく聞いてください。こんな感じになったわけです、ジャザノヴァもね。ちゃんと進化してますよ。
機械使う人たちは進化が速いよね。とりあえず、目先の進化は。
Heatwave feat. Oliver St. Louis」、ジャザノヴァの新譜からお聞きください。


DOUBLE UP, PLAYS DOUBL

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エジプシャン・ジャズ

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