「ホドロフスキー2本立て。」



久しぶりにキネカ大森へ。
名画座で「エル・トポ」と「ホーリー・マウンテン」の2本立て。
水曜はサービスデーで1100円なので、気になっていたホドロフスキー作品を観るのに絶好の機会。

今年23年ぶりの新作「リアリティのダンス」が公開されるということもあって、にわかに再評価のムーブメントが起きているようで、先日の来日の際にはTwitter上にかなり熱の入った書き込みを目にした。
自分は全くこの人のことを知らなかったのだが、伝説的なカルト・ムービー作家らしい。(長谷川和彦的存在か?)
アップリンクでもらってきたホドロフスキー新聞等のペーパーを読んで、確かに興味を惹かれる人物だ。「ホドロフスキーのDUNE」も気になるが、まずは本人監督作品の代表作を観てみなければ。

公開順は前後するが、先に「ホーリー・マウンテン」。
…え?…カルト・ムービーってこういうこと?
いきなり黒ずくめの導師が両脇に従えた女性2人に呪術的な儀式を執り行い、裸にひん剥き剃髪するところから始まって、荒れ地で倒れていた顔が蝿まみれの男が不具者の小人に助けられて…。
ギョッとするようなエログロ描写が満載でかなりショッキングなのだが、確かに初めて見せられたシーンの数々はいちいち面白い。
その後、複数の男女が錬金術師に導かれて聖なる山を目指し、さらにオカルティックな修行に励んでいく…。
いやあ、これはヤバイ。完全に新興宗教の洗脳ビデオを見せられているようだわ。
延々シュールなシーンが続くので、中盤あたりで眠ってしまったが、目が覚めてもまだエログロな儀式は続いている。あまりにもバカバカしくて笑ってしまうようなところもあるので、これは大真面目に観ない方がいいのでは…と思って、冷やかし半分でいちいち脳内でツッコミを入れながら観ていたらだんだん楽しめるようになってきた。
最終的に聖なる山の頂上に到達し、師が「諸君らは真の魂を手に入れた!」的なことを述べたので、それで終わりかと思ったら、まさかのメタ視点導入。観客を欺くような、まさに文字通りちゃぶ台を引っくり返すオチには驚いた。
これはあくまでも映画だぞ。君たちは君たちの現実を生きるべし!というようなメッセージで、一気にこのホドロフスキー監督のことを信用できるようになった。あー、よかった…。

先に「ホーリー・マウンテン」を観てよかったのかもしれない。
強烈なホドロフスキー入門体験をふまえたおかげで、2本目の「エル・トポ」はだいぶ楽しみ方も分かってきて、どぎつい映像にも慣れて、落ち着いて観ることができた。
まあ、それでもやっぱり狂ってるよ、どのシーンも。
後半からの意外な展開もなんじゃそりゃ〜という感じだが、この人の作品は普通の映画製作のセオリーとかは全く当てはまらないのだから仕方が無い。
この宗教的なメッセージを真に受け過ぎるとかなり危険なことになりそうで、実際作られた69年以降のカルトの発生に大きく影響を及ぼしていそうでもあるし、2014年の今、ある程度相対化された評価も出そろった状況で観れて良かったのかもしれない。
あまりにもぶっ飛び過ぎていて、好きか嫌いかと言われると、よくわからないとしか答えようがないのだが、1日費やしてホドロフスキー体験をしたことは良かったと思う。
この奇抜な映画を観ることで、凝り固まりつつあるアタマを少しはやわらかくできたのではないかな。(松本人志監督も、どうせならこれぐらいやらないといけなかったのではないかな…と、ちょっと思ったり。)
そして2014年の現在、ホドロフスキー監督がどんなメッセージを投げかけてくるのかにも興味がある。「リアリティのダンス」もぜひ観てみたい。

アレハンドロ・ホドロフスキー DVD-BOX

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