「これからは『意識失う系』?」

「粋な夜電波」第203回放送は、シーズン9の実質的初回のフリースタイル。
久々の歌舞伎町WBO話も飛び出した、通常営業ならではのリラックスムード。
番組中のトークの一部を文字起こししてみました。

To Pimp a Butterfly

To Pimp a Butterfly

はい、どうも。え〜…「菊地成孔の粋な夜電波」。ジャズミュージシャンの菊地成孔TBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。
え〜…本日はですね、シーズン9が始まって、初回が「テーマ曲選考会」、2回目に菊地凛子さんa.k.a. Rinbjö がやってまいりまして。正規のシーズン9の初回が実際のところ今回だというような…。
で、1回やったら、来週がもうスペシャル・ウィークというですね、比較的忙しい…なんかシーズンの始まりですけど(笑)。
テーマ曲は、前回「不採用にする」と言って…(笑)、前回じゃねえや前々回「不採用にする」と言って流した、スタン・ゲッツを採用することにしました(笑)。
こういうのを何っつーんですかね、復活当選っていうんですかね。
都度都度言ってますけど、ワタシ自分のO.A.も、なんかそれ以外の動録とかいただいたりするんですが、聞かないんで(笑)。よっぽどのことがないと聞かないんですけど、前回は聞いたんですよ。実際自分の声が乗るとどの曲が一番いいのかな?と思って。
で、リアルタイムで選んで「絶対使わない」って曲が、一番良かったんで(笑)。自分の判断力ってのはなんなんだろうって思ったワタシですけども。
というわけで、このシーズンは基本スタン・ゲッツの…ま、悪漢ですよね…「あっかん」ってのは圧倒的な「圧」に「巻」くじゃなくて、悪いって意味ですけども。〈悪漢〉スタン・ゲッツの映画音楽で、お送りするわけですが。ま、気分を変えたい時にはね、なんか違うものにしようと思いますけども。
ま、気分を変えるといえばですね…
ワタシ、「歌舞伎町出ちゃった出ちゃった」って言ってますけど、実際出ちゃった…住所的には出ちゃいましたけどね、ただまあ…いつも申し上げてる通り、歩きゃ行けるんで、たまに「昔よく行った店に行ってみよう」なんつって、これは厳密には歌舞伎町じゃなくて歌舞伎町の入口なんですけど。
靖国通りってありますよね。靖国通り伊勢丹メンズの裏口があったりバルト9があったりする、あの靖国通りですから、歌舞伎町っていう魔界に入るボーダーのとこですよね。…なんですけど、一応靖国通りとはいえ、歌舞伎町の入口のところには、やっぱオーラがあるんで。
ケンタッキー・フライドチキンがあるんですよ。それはね、4時までやってるケンタッキー・フライドチキンなんですよね。
で、あそこで「あー…なんかもう…やみくもにケンタッキー・フライドチキンが食いたい!」とかいう時があるんですよね。なんか大人になっていろんな…「大変だなあ。」とかね。「今月の…」あの、代表取締役ですからね(笑)…ま、おもちゃの代表取締役ですけどね、「おもちゃの兵隊さん」みたいなもんですけど…、やっぱ「会社が今月ちょっと赤字だ」とか「先月はちょっと良かった」とかなんとかかんとか…あるじゃないですか。
まあ、そういうことが大人になるとありますから、そういう時のストレスでね、ケンフラを思い切り…2バーレルも3バーレルも食ってやりたい!って時があったりして、よく行ってたんですけど。まあ…めっきり行かなくなって。
で、「久しぶりにあそこ行ってみよう」って思って、3時半ぐらいに行ったんですよね。夜中のね。もうあと30分で閉店って。
そしたら行列なんですよ、もう(笑)。「やっぱすげえな、歌舞伎町!」って思って。
「圧」が違う…と思って。なんかこう…地鳴りっていうかね。
もう…並んでるんですよ。並んでるうえにね…ワタシの前に並んでる人が(笑)…まあ、何て言ったらいいんだろうな…その…検索するかコンビニで探していただきたいんですけど、「SOUL Japan」っていう雑誌があるんですけど、それは今はだいぶ少数派になっちゃったのかな?…いろんな形でエリアがこう…多極化してコアな人は少数派になっちゃった…まわりくどい言い方ですけど、不良の雑誌なんですけども(笑)、ヤンキー雑誌ですよね、ま…「SOUL Japan」に出てるコーディネートで上から下までキメてる…んだよなっていう方が前に並んでて。
で、まあ…後ろには、仕事をハネた…ま、懐かしいですよね、ほんとにね…昔はワタシの生活圏にはそういう人しかいなかったんで…仕事をハネたキャバクラ嬢の方が。まあ、ストレスの溜まる仕事ですから…あんまり太っちゃいけないんですけど、やっぱどうしても「夜中ケンフラ、ドカ食い」ってのは、やりたいとこなんでしょうね。
まあ…並んでまして。で、前に座ってる方が…これ大した話じゃないですよ(笑)。久しぶりに歌舞伎町の4時までやってるケンフラに3時半に行ったら行列になってて、前に並んでる人が…
「ご注文は?」って聞かれた時に、「俺、初めてここ来たんで…」、ここってのはこの店って意味じゃないんですよね、ケンフラ自体だってことを指してるんですけど、「初めてここ来たんで、注文の仕方わかんないんだけど、俺…歯…悪ぃから、パサパサのとこやめてね。」って言ったんですよね(笑)。
たった短いこれだけの時間ですけど、さすが歌舞伎町!ってね。
なんで歯が悪いか?…それはもう、虫歯じゃないですよ(笑)。…虫歯ってことにしときますけどね。
まあ…店員さんも慣れたもんで、「はい。」っつって、特に何にも考えずに…何の特別な対応もせずに「はい。」っつって奥に引っ込んで、パサパサじゃないとこなんでしょうね、きっとね…そこを選んで、こう…渡して。それも結構大量でしたけどね、買って帰られましたけどもね。
まあ、懐かしいなという気分と同時に、ま、もうちょい…
最近…ここんとこ忙しくてね、なんだかんだで。
ま、「オマエ、いつも忙しいじゃないか!」って言われれば、そうなんですけど。
やっぱりね、2年…のプロジェクトになっちゃいましたけど、菊地凛子さんのデビューまで、いちおう漕ぎ着けるということで。
実は収録してるのがデビュー・ライブの翌日なんですよね。ま、ぶっちゃけて言ってしまうと、二日酔いなんですけども(笑)。ちょっとフラッとしてるんですよね、なんかね。
最近はね、その…いつからかって言われると難しいんですけど、51まで大丈夫だったんですけど、51過ぎてから、呑むと寝るようになっちゃって。
ま、昔…ジャズの諸先輩なんて、たいへんな年齢のね…ワタシの師匠にあたる山下洋輔なんて、もう72ですからね…上がきりがない世界なんですよね、落語界なんかと近いんじゃないですかね。ワタシの歳でもまだ中堅に毛が生えてるぐらいの世界ですからね。
で、まあ…一緒に先輩なんかと呑んだり、あるいはちょっと酒に弱い後輩や同輩なんかと呑んだりすると、宴会が長引くと、途中で休憩に入る奴がいますよね、こう…舟漕ぎ出して。ま、みっともねえ…とまではいいませんけども、まあまあ…先輩がいる前で寝たりするのはねえ…ちょっとどうかと…。ま、ま、それで咎められる恐い世界とか、そういうのじゃないですよ全然。
先輩っつったって、その…(笑)。なんだっけ、ナイツでしたっけ。浅草の先輩がいっぱいいる方ね。ナイツの塙さんみたいになっちゃいけないんですけど、先輩方はもう…面白いですから(笑)。
「テメエ、コノヤロー。なんかラジオとかやって上手くやってんじゃねえか。」みたいな感じでやって来て、「あ、どうもすいません、スイマセン。」っつって。「…カネ貸してくれ!」っていうのが…この業界ですからね(笑)。誰とは絶対に言えませんけどね。「カネ貸せ、バカヤロー。」っていう。
なんかもう…もうちょっとね、親身な…「芸が荒れちゃいけないから、そんなマスコミへの露出はセーブして、もっと練習に励めよ。」とかいう温かい言葉をいただけるのかと思ったらね、「カネ貸せ」っていう(笑)。場合によっちゃ「一杯奢れ!」ていう…キャッシュでもないっていう場合もありますからね(笑)。
まあ、そんな…話がずっとスリップしてますけど(笑)。今日ちょっと軽く二日酔いなんで。
なんですけど、やっぱ宴会の途中に寝るっていうのは良しとしなかったんです、ワタシ。良しとしないっていうより、「頑張ってそうないようにする」とかいった立派なストイックな話じゃなくて、全然…どんだけ呑んでも、呑んでる途中に寝るってことがない男だったんですよね。
それがですね、51歳を過ぎてからですね、「今日…寝てたよね?」って言われて、「すげービックリした。」って言われて、「えっ!?…寝てた?」っていう。その…自覚が無くて寝てんですよね。
「いや、そういうもんですよ。」っていう方がいっぱいいらっしゃると思うんですけど、初めて知りました。
当たり前ですけど、「ああ…眠い…眠い」…高校の時みたいにね、「あー、眠い。この先生の話つまんない。眠い…眠い…眠い…」って、だんだん夢の世界にゆっくりフェードインしてくようなことじゃないんですね。あれ…あの酒席で寝るってのはね。
パッともう…寝てる記憶がないんですよ。酔っ払ってて、「あっ!」って…だから、記憶を失くすってやつですよね。
最近の流行り言葉で、「意識高い系」って言葉ありますよね。何が言いたいかっていうと、ワタシの場合、52歳になって、「意識失う系」になったんだなってことがですね(笑)…ま、このことはわかってもらいたいなっていう。「夜電波」のリスナーのみなさんには(笑)。

THE REVOLUTION WILL NOT BE COMPUTERIZED

THE REVOLUTION WILL NOT BE COMPUTERIZED