「最遠地について。」

「粋な夜電波」第288回放送は、現代アルゼンチン・ジャズ特集。
Real Book Argentina」からリリースされていた2枚のコンピレーションアルバムを紹介。
12年前に訪れたこともあるブエノスアイレスへの思いを語られた部分を文字起こししてみました。

Esquire (エスクァイア) 日本版 2005年 01月号

Esquire (エスクァイア) 日本版 2005年 01月号

Don Remo

Don Remo

Buey

Buey

え〜と…そうですね、アルゼンチン…あのね…
前口上の中に挿み込みましたけど、「地球の裏側、ブラジル」って必ず言いますよね。「日本の裏側、ブラジル」。
「ブラジルの方、聞こえますか〜?」っていうネタもありますよね(笑)。地上に穴掘ってね。
あれは…ま、ま、ま…別に物申すとかじゃ全然ないですけど、実際は違います。
地球儀買って…ワタシ実際やってたんですけど、東急ハンズなんか行くと、フワッフワの地球儀とかね、あるいはね…ゴムで出来た地球儀とかがあるんですよ。つまり何ができるかっつーと、針が刺せるの。
針刺して…東京に長〜い針刺して、「何で長〜い針なんか持ってるんだ?」って言われると、答えに窮しますけどね。持ってるんですけど(笑)。
そいで、グイグイグイグイッて針刺して入れていくと、プツッと反対側に出ますよね。ブラジルには出ないんですよね。ブラジルは外れてます、やっぱり。
我らがベーアー首相がマリオとなって貫通した、あの土管はですね、真ん中辺…熱かったと思いますけどね(笑)…こう、地球の真ん中通ったらね。あの土管、だから真っ直ぐじゃないですね。ちょっと曲がってるんですよ。
どこに出るかっていうと、アルゼンチンのね…国内にも出ないの。アルゼンチン沖ですね。アルゼンチン沖はね、アルゼンチン海盆っていって…「海のお盆」と書くんですけど…アルゼンチン海盆っていうでっかい海盆があるんですけど、その中に出ます。もしああいうふうに…そうですね…東京から真っ直ぐ真裏にトンネルを掘ったらですよ。
これ、ワタシ自分で何回も計測したし、巻尺使ったり針で刺したりして、あとは最後計算したりしてね。
何でかっていうと、ワタシはですね、南米で…まあ、そこかしこ行きましたけど、一番思い出深い場所がブエノスアイレスでして。アルゼンチンの。
ソロ・アルバムの2作目を、ブエノスアイレスとパリと東京で作ったんですよね。「南米のエリザベス・テーラー」っていう…「ELIZABETHE TAYLOR EN AMERIQUE DU SUD」…ま、これタイトルはフランス語になってるんですけど、「南米のエリザベス・テーラー」っていうアルバムを作って。このアルバムのために「ペペ・トルメント・アスカラール」っていうオルケスタを実演用にこしらえたという流れがあるんで。
ま、絶対に無いですけど、「another sky -アナザースカイ-」って番組あるじゃないですか。「アナザースカイ」から「どっか行きませんか?」って言われたら…絶対無いですよ、無くて言ってますよ(笑)。無くて言ってるので、何て言ったらいいのかな…「あー、俺のこと、どっかメジャーリーガーが指名してくれないかなぁ〜。」っていうネタありますけど、あれと同じで部屋で勝手に考えてるだけなんですけど(笑)。
もし「アナザースカイ」から話が来たら…来ないんですけど、来たら「ブエノスアイレスに行く!」って言います。で、「ブエノスアイレス行って、あそこ行って…ここ行って…ここ行って、泣かして…笑わして…。」って決めてんの。頭の中に脚本全部出来上がってるんですけど(笑)。
ブエノスアイレスですら、地球の日本の真裏ではなく、シビアに言うと海の上に出るんだけど。
じゃあ、ブエノスアイレスに針突っ込んでね、針刺してね、グイグイグイグイッて押して、どこに出るかっつったらね、なんとね…北京なんですよ。
ウォン・カーウァイって監督いますよね。香港の監督ですけど。ウォン・カーウァイが、ある種の絶頂期の終わりに…って言ったら映画ファンに怒られちゃうのかな?…その名も「ブエノスアイレス」っていう、ゲイのカップルが地の果てまで逃げて愛し合うっていう映画を撮るんですけど。
これは北京の本当の真裏が…真裏ってことはつまり一番遠い所ですね、「最遠地」です。「最遠地」は「最も遠い」ね。だから、「ここから最も遠い場所」…地球の。
北極や南極っていうのは極地ですし、行くの大変です、確かに。ですけど、遠い近いで言えば、まあまあ…そこそこ近いですよね、北極行こうと思ったら。ただ行きづらいだけで。
だから本当の真裏…一番遠い場所ってのは地球儀の真裏のことですから。それはやっぱり北京の真裏にブエノスアイレスがあるって事に、すごいインスピレーションを受けたと思うんですよ。ウォン・カーウァイが。
で、その結果、有名な南のバー…「バルスール」か、「バルスール」っていう小ちゃいバーね、タンゲリアですけど。タンゲリアってのはタンゴ屋さん…タンゴを聴かせる、ダンサーも出るんだけど。
ワタシもそこ行ったんですよね、「バルスール」ね。そこでロケしたのが、ウォン・カーウァイの「ブエノスアイレス」ですね。
で、この「最も遠い場所だ。」っていうこの感覚ですよね。だから日本人はもうアルゼンチンまで行っちゃったら、もう後は何処行ったって…ロス行ったって、ペルー行ったって、キューバ行ったって、アイルランド行ったって、まだ近いって事になっちゃいますから。だからもう…一種のデカダンですよね。
ワタシ、一番遠いとこ経験してるんで。しかも、帰途はね…独りだったんですよ。
何時間かかると思いますか?…今だったら何時間かかるんだろう。
ワタシが行ったのは2004年ですから、12年前。わー…12年も経つんだ…に行ったの。
ほいで…片道にね、50時間かかりましたね(笑)。真ん中でね…ブラジルで、すんげえ8時間ぐらい待つんだよね、リオ・デ・ジャネイロで。まあ、それはともかく…その8時間もね、一人でウロウロウロウロして、空港内の中で。楽しかったですけどね。一人で帰って来ましたけども。最遠地までひとり旅したっていう経験を持った…菊地成孔がお届けしております。
ま、せっかくですから、その時に録ったアルバム…全然「現代アルゼンチン・ジャズ」じゃなくて申し訳ないんですけど(笑)。この後もかけますんで。
「南米のエリザベス・テーラー」から…だから、現代アルゼンチン・ジャズどころか、11年前の…あ、ちなみに…ごめんなさい、話ころころ変わりますけど、さっき聞いたのも今年のアルバムじゃないです。「ENSAMBLE REAL BOOK ARGENTINA」が出たのが2011年。これからまた聞いていきます、その続編が2013年。いずれにしたって相当前ですね。
でもそのさらに前です。2005年のアルバムです。ワタシのソロ・アルバムの第二作なんですけど。「南米のエリザベス・テーラー」…この時まだペペ・トルメント・アスカラールが無いので、ソロ名義なんですよね。
菊地成孔で「南米のエリザベス・テーラー」より、「南米のエリザベス・テーラー」。

南米のエリザベス・テーラー(DVD付)

南米のエリザベス・テーラー(DVD付)

Gouáp

Gouáp

Contemplación

Contemplación

Ensamble Real Book Argentina

Ensamble Real Book Argentina

ブエノスアイレス [DVD]

ブエノスアイレス [DVD]