「ヒップホップには恋より革命?」

「粋な夜電波」第303回は、久しぶりの「韓流最高会議」。
映画担当、ドラマ担当、ヒップホップ担当、インディーロック担当…と、それぞれの守備範囲が散逸する中、最新のコリアン・エンターテインメントについて率直な意見が交わされました。
鼎談の一部を文字起こししてみました。

菊地 はい、この番組のワタシのセコンドでもあります、ハガキ職人千葉県野田市の福島さんから…(笑)。
 (笑)。
菊地 (メールを読んで)『菊地さん、スタッフの皆さん、ヴィヴィアンさん。そして、おかえりなさい、韓さん! こんばんは。』ということで。
 帰って来た(笑)。
菊地 『美魔女・韓様のカムバックを嬉しく思うとともに、最近ヴィヴィアンさんがセクシーになられて…』
 (笑)。
ヴィヴィアン そんな…どこ情報ですか、それ(笑)
菊地 『…少し気になる今日この頃です。』というね。
ヴィヴィアン どこ情報(笑)。
 素晴らしい。いや、素晴らしい。
菊地 どうするとセクシーになるんですかね。
 やっぱヒップホップはね、セクシーじゃないと。
菊地 やっぱパク・クネ退陣デモに参加すると…
ヴィヴィアン そうなんですよ。退陣デモに参加して来たんですよ、韓国で。
菊地 やっぱそれがセクシーになる秘訣ですかね。
ヴィヴィアン そうですね。やっぱり韓国人と一緒に蝋燭を持って…
菊地 (笑)。
ヴィヴィアン 練り歩くっていう。
菊地 あの映像の中にいたんだ?
ヴィヴィアン いましたよ!…ど真ん中にいましたよ、もう。
 素晴らしい。
菊地 (笑)。
ヴィヴィアン それがあの…秘訣です!
菊地 なるほど。それがやっぱセクシーになる秘訣ですね。
ヴィヴィアン はい。蝋燭を持って練り歩く(笑)。
菊地 もう恋じゃないんだ!ってね。
ヴィヴィアン そうですよ。
 (笑)。
菊地 反政府デモによってセクシーになっていく。
ヴィヴィアン そうなんです。
菊地 すごいフェミニズムじゃないですかね、それ(笑)。
 (笑)。
菊地 あの…もうなんか死語って言ったら彼等にかわいそうだけど、「SEALDs」…
ヴィヴィアン ああ〜。
菊地 …が、日本でもまあ何かひとつそういう事しようとして、そん時に反射的に掴む音楽がヒップホップだっていうのは…
 うんうんうん。
菊地 ここんとこ…しょうがないですよね。ワタシ実は今年の正月三が日、香港にいたんですけど。
ヴィヴィアン ほう。
菊地 正月も革命は休みなのかな?って思って行ったんですよね(笑)。ま、旧正月だから正月関係ないんだけど。
 (笑)。
ヴィヴィアン はいはい。
菊地 ま、革命…お休みでしたけどね。簡単に言うと。香港的には。
ヴィヴィアン ふーん。
菊地 ただ、香港は雨傘運動の時にヒップホップに手を出さなかったじゃないですか。香港にヒップホップシーンが無いという言い方もできますけども。
 うん。
ヴィヴィアン ええ〜!…言われてみたら…そうですね。
菊地 でも韓国ではモロ出してるわけですよね。
ヴィヴィアン そうですね。
菊地 ライブも盛り上がってるわけでしょ。
ヴィヴィアン いや、だからデモも…一番の目的はヒップホップライブを観に行きたかったんですよ(笑)。
菊地 ですよね(笑)。
 大っきなステージあって…
ヴィヴィアン いや、すっごい…
菊地 やっぱ恋じゃないですか!(笑)。
 さっきのイ・ランちゃんとかも、すごいデモ行ってましたよ。
ヴィヴィアン でも凄い盛り上がりで。お客さんが普段のライブ以上に盛り上がって。アーティストと一緒に「退陣しろ〜!」って叫びながら、ライブ盛り上がるっていう。
菊地 しかもそのクオリティが高いんだよね。
ヴィヴィアン 高いですね。なんかあのライブ出れるのって、やっぱり選ばれしアーティストらしいんですよ。だから、やっぱハイクオリティな人たちが出て、凄い盛り上がって良かったです。
 うん。
菊地 まあねえ…今、現にリアルな生活が苦しい人たちには、ちょっと言えないですけど。もう54にもなって…アガッて、もうね…閉経したオッサンの…
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 繰り言として聞いてもらいたいんですけど、大韓民国…今羨ましいですよ。国情が荒れに荒れて、エンターテインメントが盛り上がって、民主主義が盛り上がってるって状況が。
ヴィヴィアン うーん。
 日本もでもヤバいからねえ。
ヴィヴィアン そう。日本も今の状況で…
 なんか騙し騙しで…十分ヤバいのに。
菊地 そうですよね。日本もほんとヤバいんだけど、だからエンターテインメントが率直に盛り上がるっていうような感じが、ちょっと無いですよね。
 そういう回路ではないんですよね。
ヴィヴィアン そうですね。あとやっぱ「SEALDs」って、それ専用に出て来た人たちだったけど、韓国の場合、もともと売れてたり有名だったりっていうアーティスト達が、いろいろ大統領の問題で揉めてる時に、それ関連の曲出したりステージやったりして盛り上がったって、そこがやっぱ違うかなって。
菊地 そうですね。まあ、要するにサブカルチャーってのは一種…もう言われなくなりましたけど、カウンターカルチャー…対抗文化って言われて…
 はい。
菊地 カウンターカルチャーって言われてた時代のものを、完全に今持ってますよね、大韓民国
ヴィヴィアン そうですね。うんうん。
菊地 日本は完全に失ってますよね。あの…いい意味でも悪い意味でもなく。
ヴィヴィアン うんうん。
菊地 ただ単に。現象として。完全にカウンターカルチャーじゃなくなってるんで。
ヴィヴィアン うーん。
 良くも悪くもそういう回路が…だから良い悪いじゃなくてね、そういう回路ですよね。なんでか不思議ですけどね。
菊地 うん。惜しかったですけどね。「SEALDs」のトップの人が、顔がKREVAに似てるって事だけですよね。ヒップホップとの関連としてはね。
 知らない(笑)。
ヴィヴィアン (笑)。

(中略)

Zion.T アルバム - OO

Zion.T アルバム - OO

菊地 まあ、多様化してきちゃいましたね、ほんとにね。
ヴィヴィアン 多様化してますね。
菊地 多様化すると同時に、さっき言ったように…あのね、クオリティが低いものが全く無いですよ。逆に怖いぐらいで。
ヴィヴィアン うん、うん。
菊地 あらゆるもんが凄くなっちゃったね。
 うーん。
菊地 だから、テレビドラマとかご覧にならないでしょうけども、僕…アメリカのも日本のも観ますけど、インドやパキスタンのも観ますけど…
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 大変ですよ。韓国が今、世界一ですよ。
ヴィヴィアン へえ〜。
菊地 圧倒的。間違いないです。うん。
 うーん。
菊地 アメリカで今テレビドラマ史のいろんな記録を塗り替えてるっていうのに「エンパイア(『Empire 〜成功の代償』)」ってドラマがあって…
 うん。
菊地 これはブラックミュージックで成功する人たち…ファミリーの、血で血を洗う抗争を描いたドラマなんですけど、ちょっと古いもん。
ヴィヴィアン ふーん。
菊地 韓国のドラマのほうがね、もっとエッジですよ。
ヴィヴィアン へえ〜。
菊地 すごい良く出来てて。特に…あれです…いかに韓国のテレビドラマを作ってる人たちが、ヌーヴェルヴァーグとかを研究してるかってのが、はっきりとわかる。すごい勉強家が作った…
 いや、だから…映画にしても音楽にしても、アタシが観たり聴いたりするものがそういうものが多いのかもしれないけども、すごくインテリジェンスを感じるんですね。
菊地 感じますよね。
ヴィヴィアン ああ〜。
 うん。それはすごくあります。
菊地 だから、まあ…ある時代のように…それこそ先ほど韓さん仰言ったように「インテリジェンスがあれば…」っていう時代もあったんだけど、今の韓国が凄いのは実質もあるっていうさ。
 うん。
菊地 インテリジェンスがあるうえに、要するにノーリテラシーで観ても相当凄いっていう。
ヴィヴィアン うーん。
菊地 要するに、アスリート的な凄さも同時に持ってるんで。
 なるほどね。
菊地 Jay Parkなんか聴くと、もう別にいいもんね。ジェイ・パークで。
ヴィヴィアン ジェイ・パークでいいですよ!
菊地 ジェイ・パークでいいよね。
ヴィヴィアン うん、ジェイ・パークでいい。
菊地 ジェイ・パークでいい。
 ジェイ・パーク?…パク・ジェボム
ヴィヴィアン そうそうそう。
 「今年の音楽人」だもんね。
ヴィヴィアン あ、そう。受賞しましたね。
 韓国大衆音楽賞…「今年の音楽人」だから凄いよね。
ヴィヴィアン うん、うん。
菊地 だってBruno Marsでもいいけど、別に。ブルーノ・マーズだっていいよ。
ヴィヴィアン ああ〜、はいはい。
菊地 ブルーノ・マーズだっていいけど、じゃあジェイ・パークが代用食か?っつったら、別に全然そんな事ないよね。
ヴィヴィアン あ、でもなんかそうですね。大衆的に見てもいいし、大衆的なものが嫌いな層もいるじゃないですか。アンダー志向の。
 うん、うん。
ヴィヴィアン そういう人が見ても「悔しいけど、すごくいい!」みたいな。
菊地 そうそうそう。
 うん。
菊地 しかも、女性二人の前で言いづらいですけど、PVでヌキたい人にヌケるようなPVを提供してるっていう意味で…
 うん、うん。
ヴィヴィアン ああ〜。
菊地 ジェイ・パークはそういう意味ではね、なんか…要するにイビサとかにクラッチしてる人たちにも応えてるんだよね。
ヴィヴィアン うんうんうん。
菊地 すごいキレイな人がすごい水着着たりするから。ジェイ・パークのPVって。
ヴィヴィアン ああ〜。はいはいはい。そうですね、アタシ手伝ったミュージックビデオが…ジェイ・パークのミュージックビデオ…
菊地 はいはいはい。仰言ってましたね。
ヴィヴィアン それがそう。すごい水着着てすごいボディで…ってやつです。
菊地 ホテルで夜さ…ジャグジーみたいな所で光が…
ヴィヴィアン そうです、そういう系の。
菊地 あんなんヤバいですよ。あれはだって、あのクオリティでもう別にいいや…っていう。
ヴィヴィアン そうですね。欧米人の女性にもすごいウケがいいんで。ジェイ・パーク。
 うん。
菊地 凄いですよね。やっぱ…韓国は国があの通りなので、まあ…非常にエンターテインメントが活気付いてるっていう事が…
ヴィヴィアン はい。
菊地 まあ、あまりに図式的とはいえ、まとめというところですよね。
 (笑)。