「長らく続いた夜帯の終わりに、適当に友達の音源をかける。」

TBSラジオ菊地成孔の粋な夜電波」第331回は、シーズン13の最終回。
来週から土曜の深夜(日曜早朝)の4時に放送時間が変わることになりましたが、収録の時間は変わらないので、今まで通りの内容になるそうですが。
「俺の外国人のお友達特集」と題して、親交のあるミュージシャンの最新の音源をプレイ。
ヨスヴァニー・テリーの凄さについて語られた、番組エンディングのトーク部分を文字起こししてみました。

ザ・セルフ

ザ・セルフ

はい。えーと、ワタシは基本的には移民の方が労働力になってくれることに対して、基本的に賛成です。
鳥貴(族)…移民だらけですよね。
子供の頃からサテー焼いたり食ったりしてた人のほうが、焼き鳥焼くの上手いかもしれないですよ(笑)。
え〜…サン君っていうね、まあ…鳥貴なんてどこにでもあるでしょ。新宿の中の鳥貴行くと…まあまあ、鳥貴だけじゃなくてコンビニなんかもそうですけど、もうやはり中・韓国の方、あるいはベトナム辺りの方が多いわけですが。
やっぱそれもね、ちょっと外れるとですね、鳥貴(族)初台店なんか行くとですね、もう中・韓国の方なんか一人もいないですよね。ま…タイ、ベトナム…東南アジアの方が多い…ほとんどになるんだけど。
サン君って子がいて。ワタシもよく行くんで、仲良いんですけど。
あの…ダイエットにいいんですよね、鳥貴は。鶏肉ばっか食うから。ホワイトミートだけでしょ。で、あそこでシメのラーメンとかご飯とか食わなきゃ、ある意味パンクラスの選手とかね、ボクサーとかのようにね。
で、そんな鳥貴に行きますと、サン君いて。胸のところにバッヂが、こう…付いてるじゃない。ほいで、自己紹介みたいなの、よくありますよね。最近だと「趣味:釣り」とか書いてあったりして(笑)。
あの…自分が何者かという事が書いてあるバッヂがあって。で、サン君のバッヂには…「いつも笑顔で接します!」って書いてあって。手書きのね、ニコッと笑った…何て言うんですか?…キャラクターみたいなのが2つ描いてあって、それが笑ってるんですよね。で、間に「いつも笑顔で接します!」って書いてあるんですけど。
サン君の笑顔を一度も見たことが無い…っていうね(笑)。
あの…ひょっとすると、あれ…もう笑ってるのかもしれません(笑)。ですけど、ちょっと笑顔に見えないんでね。
サン君、「いつも笑顔で接します!」…「うん。」と思いながらね、別にサン君ディスってんじゃないですよ。サン君、とてもいい子ですけどね。
ただ…そうですね、こっちの…解釈の問題でしょうね、やっぱりね(笑)。もう笑ってるんですよね、きっとね。いつも笑顔だとしたら、あれが笑顔ですからね。
えーと、そんなサン君に…今日、餅をね…「もちもちチーズ焼き」っていうメニューがあるんですけど、すぐ切れちゃうんですよ。で、「サン君、もちもちチーズ焼きある?」って言った時に、「アリマス!」って言われて…った時の嬉しさが半端ない菊地成孔お送りしております「粋な夜電波」。
えーとね、新宿の話を熱っぽく話してたら、もうね…オンエアの時間が完全に無くなってしまったんで。もうあと二人紹介する予定がね、一人になっちまいましたけども。
そりゃもうヨスヴァニーしかいないですよ。
ヨスヴァニー・テリーは…実力だけで言ったら、下手したら今、世界一かもしれないです。ほんとに。
ジャズ・サキソフォン奏者なんで。もう、世界で一番上手いぐらい上手いと思うんですよ。
友達はみんなヨスヴァニーのことを「ヨス」って言うんだけど。ヨスは。
ちなみに、弟がユニオールね。ユニオールは誰かっつーと、大西順子さんのトリオのベース。ワタシがプロデュースした「Tea Times」の。
ま、ユニオールとヨスは兄弟だから、だいたいほとんどの作品、二人で演ってるんだけど。今から聞く作品もベースはユニオールですね。
ユニオールはね、11月にね、ワタシ…「ガンダム」で11月にNY公演するんですけど。そん時のベースが…誰になるのかな?(笑)…NYの誰になるんだろう?って思ってたら、ユニオールだったって事が分かってですね(笑)。小懐かしい感じですけどね。ええ。
まあまあ…そんなユニオールですけども、今回のアルバムはですね…
まあ、もう、散々ジャズサックス奏者としての…あるいは作曲家としても本当に才能のある…天才の兄貴と頑張り屋の弟っていう、よくあるパターンですね。ウチ(菊地兄弟)と一緒じゃないですかね(笑)。頑張ってます!、ハイ(笑)。
兄貴はもう天才肌ですから。ヨスはね。で、もう散々やる事やっちゃって、ヨスはね…やる事無いんですよ。あれが天才の悲劇だと思いますけどね。
もう10年ぐらい前に、「これ以上の音楽的な実験はキューバ移民からは出てこないだろう。」っていうアルバムを3枚ぐらい、ヨス…作っちゃってるんで。ま、この番組でも全部かけてますけど。
だから、もうヨスは…クラシック寄りのアカデミックなほうの仕事するか…それこそさっきのハファエルじゃないけどシンフォニー書くとかね…。あともう一個っていうのが、こっちですよ。
今回はねえ…バティスト・トロティニョンっていう、イケメンのジャズピアニストなんですけど。で、ジェフ・ワッツですよ、ドラムは。もう重鎮ですよね、ジェフ・ワッツ。
で、バティスト・トロティニョンのアルバムにヨスの兄弟…要するにユニオールとヨスが呼ばれて、4人で演ってるから。
まあ、何て言ったらいいかな…ヨスヴァニーにとったら、休みの日に遊んでたようなアルバムですよね、これね。簡単に言うと(笑)。それでも凄いですけどね、やっぱり。
もう、ジャケット見ると分かりますけど…調子良く…サングラスなんかかけちゃって、スーツでキメちゃって。何つったらいいの?…「メン・イン・ブラック(MIB)」みたいな感じでキメちゃって。なんかちょっと「カッコいいだろ、俺達?」みたいな。表3と表4がね、影絵っていうかさ、二人の輪郭だけになってて。バティストとヨスの。
で、「お互いカッコいいぞ。」…片方はキューバ移民のね、サングラスかけて身体もデカい、片方は優男的なピアニスト…「このツートップで行くぞ!」みたいな。なんか映画のさ、主人公みたいな感じで、いい調子でやってるんですけど(笑)。
まあ、バイトですよね(笑)。
超いいですよ、やっぱり。力が抜けてて。
めっちゃくちゃ上手いですよ。もう、口あんぐりでね。こんなに吹ける人、いないですよ。ほんとに。
「あいつが上手い、こいつが上手い。」って言いますけど、やっぱヨスが一番上手いんじゃないですかね。
てなわけで、まあ…重鎮ジェフ・ワッツと弟であるユニオール、さらにはスターですね…バティスト・トロティニョンのピアノ…トリオの上で悠々自適というかね。吹きまくっております、ヨスヴァニー・テリーっていうかね。
まあ、来月多分ユニオールと一緒にやるから、ヨスも来るでしょうね。したら…「行きつけのビフテキ屋とか教えてよ。」とかいう感じになると思いますよ。ええ。
で、「オマエは舌が肥えてるから、俺たちの金では連れていけない。」とか言われるんですよ、ギャグを。それに対して何と返そうかな?…とかいうことを楽しみに秋を待ってますね。はい。
というわけで、「菊地成孔の粋な夜電波」。そろそろお別れの時間となりました。
ネットが終わる局に関しましては、今週で本当にお別れ…ね。ありがとうございました。
TBSラジオと、ネットが続く局に関しましては、来週からも続きます。
シーズン14…いよいよ6年半を回って7年目に向かっていくこの番組をよろしくお願いいたします。
土曜の深夜4時、日曜早朝4時…これ同じ事ですけどね。そして、収録時間は変わらない(笑)…という形の放送になります。時間をお間違えなく。お相手は菊地成孔でした。
え〜…というわけで、長らく続いた夜帯の終わりに、適当に友達の音源をかける…と。ま、適当にっていうか、全員凄いですよ。オレなんかの友達でいいの?っていう人ばっかりだからね。リチャード・スペイヴン、ハファエル・マルティニ、ヨスヴァニー・テリー。音楽家としては全員、めちゃめちゃリスペクトしてますけど。なんだかしんないけど、向こうにも好かれてて、なんか付き合いがある連中のものを聞いていただきました。
では…そうですね、日本のジャズファン…うるさ型のジャズファンでだって、ヨスヴァニーのワンフォーン・カルテットなんて、ほとんど聞いた事ないんじゃないかなっていう世界の中、「The Call」…これは有名なジャズミュージシャンズ・スタンダードですけどね。「The Call」という曲でお別れしたいと思います。
まあ、流れ流れでね…ほんとはもうちょっと記念の曲みたいなので終わろうと思ったんですけど。新宿の話がつい長くなっちゃったので(笑)、ヨスヴァニーの比較的気楽にやった演奏でお別れ…という感じで、ま…この番組らしいのではないでしょうか。
思えば、2011年の4月という…ある種の極限状態から始まりました、この番組ですけど、まあ…夜帯が終わり深夜帯に。ま…一時的なのか、永遠になのかわかりませんけども(笑)、移動ということで。来週もよろしくお願いいたします。
それでは。ヨスヴァニー・テリー with バティスト・トロティニョン、ツートップですね。これ、アルバムのタイトルがですね、「ancestral memories」というタイトルでして。お聞きいただく曲はそれの1曲目ですね。「The Call」…これはバティスト・トロティニョンのほうが書いた曲ですね。で、「ancestral memories」っていうのが続いてて、それはヨスが書いてるんで。要するに「二人で楽しく曲を書きました。」っていう感じですけどね。その1曲目のほうをお聞きいただきたく思います。

Ancestral Memories

Ancestral Memories