「東京ゴッドファーザーズ」

アニメ映画ってほとんど観ていなくて、みんなが常識のようにジブリ作品について語るのを聞いても、いまいちよくわかっていなかったりする。
ま、穿った先入観を捨てて、いろんなジャンルの映画を観ていこうじゃないの、と思っているところだったりするのだが。
先日、細田守監督の「サマー・ウォーズ」を観たので、同様に評価の高い今敏監督作品も観てみるかと思って「東京ゴッドファーザーズ」を観てみた。
どんな内容か全く知らないで観始めたのだが、なんとなく絵柄から「AKIRA」的な近未来感のある話なのかと思い込んでいた。
それが意外にも、3人の浮浪者が捨てられた赤ん坊を見つけて、その子の母親を探して回るという、日常に地続きのストーリーで、アニメとはいえリアリティ重視の演出で進んでいく。
次にきっと何か起こるだろう、もっと何か大事件に発展するだろう…と期待しながら観ていくと、3人それぞれの過去の独白が始まったりして…あまりに退屈なので苛々してきた。
途中でヤクザの親分と出会ったので、「ああ、ここからいわゆる「ゴッドファーザー」的な展開に?」と期待もしたが、特に抗争が始まるわけでもなく、そこはあまり重要でなかったらしい(え?じゃあタイトルの意味は?…ひょっとして「神の子の父親達」みたいな意味なのかな)。
そうかと思うと、鍵を握る人物に出会えるのも偶然なら、ピンチを脱出するのも偶然、おまけに宝くじにも当たる…と偶然の連続によるご都合主義的な展開で、唖然とした。
そもそも魅力的なキャラクターが描かれていないのに、じゃあリアルな描写でドラマを丹念に描くのかというとそうでもなく、見せ場として用意したのはカーチェイスだったりビルから飛び降りるとか実写映画でも可能で、アニメならではの表現を追求している感じでもない。
最後はなんかちょっといい話みたいにまとめられて終わったけど、観ていてものすごく苦痛な90分だった。
一旦ネガティブな感想を持ってしまうと、そもそも絵自体が全く好みではないとか、音楽もよくないし(鈴木慶一なのに)その使いどころもどうかと思ったりして、すっかりこの作品が嫌いになってしまった。
強いて挙げれば、東京の街並みは現実感もあり、きれいに描かれていたけど、見せたかったのは背景なのか?
今敏監督作品は海外で数多くの賞を受けているらしくて、じゃあ「パプリカ」はもっと面白いのか、「千年女優」を先に観たら印象はまた変わったのか、ということも考えないではないが、原作も作画も脚本もキャラクターデザインもすべてに関わっているとあれば、とりあえず今は、この監督の他の作品を観てみようという気にはなれないのだった。

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