「コンテイジョン」

コンテイジョン(Contagion)」…(病気の)接触伝染,感染。(接触)伝染病。
9月に町山智浩氏が「キラ☆キラ」の中で紹介していて気になっていた映画(スティーブン・ソダーバーグ監督作品)をレイトショーで観に行った。(以下ネタバレ含みます)
マリオン・コティヤールマット・デイモングウィネス・パルトローケイト・ウィンスレットジュード・ロウローレンス・フィッシュバーンほかが出演という豪華キャスト。
致死率の高いウィルス感染症が急速に広がる、パンデミック・スリラー映画。
ソダーバーグ監督作品は、実は「トラフィック」しか観たことがなかったのだが、「オーシャンズ」シリーズも撮っているということだから、やはり群像劇を得意としているのだろう。
この作品も登場人物のそれぞれのキャラクターを描き分け、世界各地を舞台にし、同時進行的にそれぞれの話が進むという難しい状況を105分にコンパクトにまとめる手腕は見事だと思う。無駄なシーンがほとんどない。
ただ逆にいうと、それぞれの人物の心理面での葛藤にまで踏み込んでいかず、「この時のこの人の状況はこうでした」と断片的に切り取って見せているので、グッと感情移入して観る感じにはなれない。
しかしこの作品に関しては、簡単に人が死んでしまう状況の恐怖を描くのに、この淡々としたトーンが合っていたのだと思う。グウィネス・パルトローも冒頭でいきなり死んでしまうし、ケイト・ウィンスレットも被害状況を確認する医師の役なので、最後まで関わってくるのかと思ったら、自身も感染してあっさり死んでしまった。
残された側、グウィネス・パルトローの夫のマット・デイモンも、あまりに急に妻と息子を亡くしてしまったので、状況が全然飲み込めず、ほとんど呆然としている。そしてその残されたマット・デイモンと娘の回復の物語を中心に話が進むのかと思ったら、そんな個人にこだわっている場合ではないといわんばかりに、世界各国でバタバタ人が死に始め、対策は見つからず、デマに煽られて群衆はパニックを起こし…と、被害は大きくなっていく。ひとりの人間としての無力感を痛感する冷酷な状況。シミュレーションとしても非常によく出来ていて、観ておいて決して無駄ではないと思った。
いちおう最後にようやくマット・デイモン親子にも安息の時が訪れ、ホッとさせて映画は終わる…と思いきや。
「ちなみにね…」と軽い感じで、「実はこのウィルスの拡大はここから始まってました〜」とネタばらしを付け加えるのだが、意地悪かと思うほど、そのラストを観てゾッとさせられた。
…いやこの話が「2日目」というテロップが出て始まって、3日目、4日目…と感染拡大していく様子を追っていくのだが、なぜ「2日目」からなのかと、ちょっと疑問に思ってはいたんだが…。いやあ、やられた。

ちなみにジュード・ロウがどうしてもデーモン・アルバーンBlur)に見えてしまうのはワタシだけでしょうか。皮肉なイギリス人ブロガーという役どころで、小憎たらしくて印象的だった。
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