「急遽、特集を変更した理由とは?」

第67回の「粋な夜電波」は、特集<Lの世界〜レズビアン・ミュージックの現在>。
「ロンドン・オリンピック特集」の予定を急遽変更してまで、なぜにこの特集を組むに至ったのか、その理由があまりにも面白過ぎたので、その部分を文字起こししてみました。
いや〜、こんなに自由なラジオパーソナリティは、ほかにいらっしゃらないんじゃないでしょうか(笑)。

The Fox

The Fox

え〜…ま、そういうわけでですね、…覚えてらっしゃいますかねえ…第1シーズンの前口上に必ず決まり文句みたいなのがあって、「国籍、宗教、性別、年齢、人種、そしてあらゆるセクシュアリティの差別なく…」というふうに申し上げてましたけども。ま、あの…もう全部いますね、ワタシ…。仕事仲間はね、意外といないんですけど、意外とヘテロ…な人が多…前やってたバンドはいたな…。…ま、全部いますよ。えーと、オカマちゃん、トランスの人もいるし、ゲイ君もいるし、レズビアンの友達もね、いますし…。同一性障害のね、FTMの友達もいましたよ。身長145ぐらいしかないのに、「俺!」とか言ってね(笑)。意外と胸でかいんで、サラシ、バンバンに巻いてね、「菊地さん、俺…」っていう友達いましたけども(笑)。…遊んでましたけどね、はい。まあまあ、それはともかく…。
…とはいえ、今日の特集は大した…あの…やる根拠に大した意味はないんで。
えーと…前番組で紹介したことありましたっけ…二丁目のど真ん中に、…ま、二丁目よく遊びに行くんですけど…、二丁目のど真ん中に、美味しい中華料理屋さんがあるんですよ。そこがね…まあ…中華料理屋さんてこう…なんていうか、商売のためだったらどんなサービスでもするっていう人達じゃないですか。まず冷房の音頭が異様に低いしね。それはともかく、内装のバランスが壊れてもいいからとにかく、でっかいモニター買って壁にバーンと置いたりしてね。
でまあ…時間によっては、ノンケなのアタシとあと数人ぐらい、他はとにかく全部…清潔にして、夏なんか半パン半袖でもう綺麗にミリ単位であらゆるものを整えた、美しい美しいゲイ君たちが一緒になって「これ美味しいね♡」とか(笑)、鴨食ったりしてる中で、アタシだけこう…見てる、と。…言いましたね、これね。シーズン1だったっけな。
まあ、そん時にWOWOWかな?…日本のJ-POPの歌姫たちのライヴを次々流すっていう番組があって。まあまあ…これ、音楽の善し悪しとか関係ないですよ。そん時の単なるレポートですけどね。まあまあ、加藤ミリヤさん…もう誰も振り向かない、音も聞いてない、絵も見てない。隣の人にちょっとこう…よそってあげたりするので精一杯でね。「美味しいね♡」とか言いながら「ねっ♡」とかやるんですけど、どうやってやってるか見えますよね。「美味しいね♡」ってやるんですけど(笑)…あの…彼等が。「美味しいね」とか言いながら、まあこう…やって、ま、加藤ミリヤさん終わりました。ほいでその他も次々と…吉田美和さんが出て来たり、えー…あと誰だ…西野カナさんとか次々出てくるんですけど、まあ変わらず、店内はガヤガヤガヤと…。で、ライヴがパッとJUJUさんに切り替わって、JUJUさんが登場した瞬間に、ほとんど全員が、両手をこう…マリア様の前で膝まづく時のように、手をこうグッと組んだまま、「JUJUかわいい!」っていう悲鳴が…もう嬌声が挙がったっていうね。もうその時に、やっぱわかんないな、マーケットは…って思いましたよ。その…JUJUさんはイケてんだな、二丁目では…ってことを、はっきり確認したんで、JUJUさんとお会いした時に、よっぽど言おうか言うまいか悩んだんですが、言えないまま今日まで来てますけどね。
…その店で、ワタシ…これ裏送りの時に言ったんで、聞けなかったという方もたくさんいらっしゃると思うんですが、今ワタシ、鞄の中に秘密兵器がふたつ入ってまして。ひとつがCDウォークマン、俗に言うDiscmanですけどね(笑)。それともうひとつがですね、一味唐辛子なんですよ。で、これがBIRD EYEってのを昔使ったんすけど、伊勢丹が扱わなくなっちゃったんで、京都のね、一味唐辛子一味唐辛子の日本の三強ってのは、長野・京都・どっか…三つなんですね。…ま、その話したら、今日もう早速BIRD EYEが番組に届いたんで、なんかねだっちゃったみたいですいません(笑)って感じなんですけど。いただかせて…ね、遠慮なく頂戴させていただきますけども。
ま、その鞄に入れて歩いてるんですよ、今。ちょっといろんな実験が…こないだなんかね、二つ星行きまして、ミシュラン二つ星ね。二つ星で、サッとかけたんですよね(笑)。ササッとかけて、怒られるかな?…とか、いろいろ…。ま、ああいうところはみんな、衆人環視っていうか、必ずどんな遠くに、どんな角度で、遠くにいるように見ても。どんな広い店のどのテーブルでも、絶対ギャルソンが会話から何から全部しっかり押さえてますから。まあ…鞄の中からサッと一味唐辛子なんか出して(笑)…一味唐辛子なんかかけないですからね、フランス料理屋。
…ン!…ンンッ!…今日ちょっとあれですね…喉の絡みが…すいませんホントに。りりこの役に入り過ぎて…ま、それはともかく(笑)。
…ササッとかけて、試しにこれで注意されるか面白がられるかやってみようって、サッとホロホロ鳥にかけたんですよ。それでもまあ、何にも言われませんでした。黙って…ま、店がどことか言えませんけどね、これね。「そこ行ってかけてやれ」みたいな悪い奴出てくるといけませんから(笑)、言えませんけど。まあ…二つ星でもだいじょぶだったんで、これはもう二つ星でだいじょぶだってことは、どこでも大丈夫だなと思って。
…で、その中華料理屋さんで、ササッとかけたんですよね。腸詰めチャーハンにかけたんですよ。腸詰めチャーハンは塩味でこう…台湾風のね、ほっこりした出来なんで、ここにかけたら香りもいいし、辛くなるしいいだろう…っつって。でまあ…床に置いてる鞄の中から、ちょっと小瓶なんて手に隠すようにしてふりかけた…という。しかもまあ…いちおう違法っちゅうか、ダメはダメじゃないですか。なんでちょっとこっちもドキドキしてるんですね。この…なんかスリルを味わおう…というところもあるんでしょうけどね。
そしたらね、英語で話しかけてきたの。ササッとかけて、よっしゃ…これ美味しいに違いないと…もうこんななってアガってかけてたら、「What is this ?」って言われて、やべえやべえって思って(笑)、これはヤバイ…なんていうんですか、うしろめたさっていうんですかね、サササッってかけてたんで、「ノーノー!」。…「What is this ?」って言われて「NO, NO !」って言ってしまうってのは、もう英語の返答としては最悪ですよね(笑)。うしろめたいことあるのバレバレになっちゃって…。「No, no. Japanese cayenne pepper, you know?」…あの「Safety…」とか言っちゃって(笑)、「You can use…」とか言ってこんな見せたりなんかして(笑)。
そしたらね、女の子の二人組だったんですよ。で、どう見ても一人は日本人っていうかアジアっていうか…。二丁目は人種のるつぼですから、いろんな国の人いるんですけども。ま、日本人だろうって思って、で、もうひとりの人は…コーカソイドっていうかね、ユーラシアの血がちょっと入ってる感じの、あるいはもろロシア人とかね、そういう感じかなっていう女性の二人組がいて。「…えっ?…日本語喋れるけど?」って言ったら、「ああ〜…中国人かと思った!」って言われて(笑)。…どういうことかな?っていう…。「どうして?」っつって、「いやいや、なんかかけてるからさあ…。」とか言って。…で、まあ意気投合して、「じゃあかけていいよ、これ超美味いよ。かけなよ、ほらほら…」とか言ってたら…もう、ほんと美味しいんですよ。今…自分の一味持ってかけるとなんでも美味いですよ、とかいうことに、どれぐらいの説得力とオーラがあるのか、自分でもさっぱりわかりませんけど。ほんとに美味いのね。
そいで、もうパパパッとかけたら、その二人も美味い美味いって食べて。で、まあ意気投合してですね、ちょっと一杯おごりあったりなんかして、盛り上がって…で、二件目行こうかっつって。…で、食い終わって3人でそっち行って…ま、そっちっつったって二丁目ですけど。…で、飲んでて、「あの…あれでしょ。ひょっとして…?」っつって「そっちの人?」って、まあ…言ったら。「うん、まあね。」っつって。「どう見える?」って言われて。「…わかった、少女時代が『パパラッツィ』って曲でこう…カシャッカシャッって写真撮んじゃん。で、あん時、手が両方カシャッってやるから、右手も左手もL(エル)の形になるよね?」とか言ってですね(笑)。…あんまよくわかんない…辛子と酒でおかしくなっちゃったんで、どういう風な高度な会話を楽しんでいいのかわからず、「こう両手で…ピュッとこうやるじゃん。ああいうのどうなの?」って言ったら、もう向こうもゲラゲラ笑い出して、面白いなコイツ…みたいな話になって、まあちょっと盛り上がったのね。
で、「何やってんの?」って言われたんで(笑)、まあ、おにぎりの外装フィルムのデザイナーって言うのが、だいたい定番なんですけど、まあ…もうちょっと、おにぎりの外装フィルムのデザイナーって言う流れじゃなかったんで。まあ半ば半分…あんまりこれやっちゃいけないんですけど、言っちゃったんですよね。「ラジオ番組やってんだよね、オレ。」って。「ウッソお〜!」って言われて(笑)。「やってるわけねえだろ、そんな唐辛子かけてる人が…」なんて言われて。「…いや、やってるやってる。日曜の夕方6時半からやってるよ。…いいよ!じゃあオレ、来週『レズビアン特集』するわ!」っつって(笑)。「…できるわけないじゃん!…できるわけねえ〜!」とか言ってもう…足バタバタバタバタさせながら喜んでるんで。「いやいや、聞いてみ! 『レズビアン特集』って言ってるから!…『エルの世界』って言うよ!」っつって(笑)。
「うっそお!」とか言って全く相手にしてないんですよ。…なんで、ちゃんと約束を守ろうってね。王子様になろうっていう…(笑)。なんだかよくわかりませんけど、全然。唐辛子の王子様ですけどね、王子様っつったってね、ピリッと辛いですよ。
…なんで、ま、それだけのことなんで。で、家にあるそういう音源を集めれば、特集になるかなっていうだけなので。さほど高邁な思想があるわけでもなんでもないんですけど。
…あの、かわいかったですよ、二人ともすごく。デカとチビでね。150くらいと180ぐらいでしたけど。
まあまあ、それはともかく一曲いってみましょうか。これはですね、何週前だ?…もう3〜4週前ですか、映画音楽特集をやった時に、時間の都合で…ていうか番組の進行の都合で、ほんのちょっとしかプレイできず、全部聞きたいというお声をたくさん頂戴しました。D.H.ロレンスの書いた「女狐」という…これもあの…50年代にレズビアン…なんつったらいいの…まだ時代が時代ですよね。今でもまだタブーっちゃタブーの側面ありますけども、50年代ってのは今からじゃ考えられない世界ですからね。その頃、禁断のレズビアンの愛、その悲劇を描く映画みたいなのが流行った時期があったんですよ。で、その中の一本で、「女狐」っていう映画がありまして、その「女狐」の中の一曲が、後にフランスで、女の子ふたりが絡み合って踊るっていう、カラーストッキング…タイツですね…のCMに使われて、それをゴダールが…っていう話をこう…する流れの中で、話が長くなっちゃって、曲が全部流せませんでしたので。今日はあらためて流しましょう。これはもう…全然、レズビアン・ミュージックっていうより、なにせ作曲したのはラロ・シフリンですからね。「燃えよドラゴン」作った人間ですから(笑)。あの…もう全然マッチョもマッチョなんですけど。
ま、男の想像する…ロレンスの小説を読んで男が想像する、ほんとにマンガみたいなレズビアニズムのイマジネーションで書かれた曲ですね。この楽曲がゴダールにどういうふうにいじられちゃったかっていうことに関しては、後ほど申し上げますが、文芸座というところで今度ワタシ、ゴダール映画の解説にイベントで伺いますので、その時にゆっくり話ますんで、今日のところはそんな感じで。
では全尺で聞いてください。映画「女狐」ですね、…のテーマ曲のボーカルヴァージョンです、「That Night」。

にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村