「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」


(まだ14日の話…)
TOHOシネマズ・シャンテで「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」。
「当選おめでとうございます!」という、よくある手口のインチキな通知DMの内容を真に受けて、賞金をもらいにモンタナ州からネブラスカ州まで行こうとする老人と、それを放っとけずに同行する息子のロードムービー
これも町山さんの解説を聞いて観たいと思っていた作品だったが、なかなか観るタイミングが合わずにいたところ、「ムービーウォッチメン」で宇多丸氏が高評価した回も聞いて、「これは急いで観に行かなければ!」と決心。
アレクサンダー・ペイン監督の前作「ファミリー・ツリー」を観た記憶もまだ新しく、ユーモラスながらも不完全な人生に対するシビアな視点もあり、観終わった後に心がじんわりと温かくなる良作だったので、今作もそういう映画だと確信して観に行った。
結果的に主演のブルース・ダーンカンヌ国際映画祭で男優賞を獲得するなど、国際的にも高い評価を受けたが、確かに地味な印象の映画ではある。
製作者側は、父親役息子役ともに、大物スター俳優の起用を望んでいたらしいが、監督は脚本を読んだ段階でイメージしたブルース・ダーン、その他のキャストもあまり有名でない俳優を起用した。
さらに全編モノクロで撮影。派手な見せ場もなく淡々と進む物語、涙を誘うような過剰な演出もない。
だけどやっぱり観終わった時に、「いい映画観た!」と思えるような作品だった。
思うようにならない人生でも、決して無価値ではないということを、安易な美談にもせず、同情や憐憫の視線で甘やかすこともせず、小さなドラマの中に様々な感情を織り交ぜることで、静かに伝えてくる。
やっぱり、こういう監督には、目先の興行収入だとかにとらわれて余計な口出しをせず、思い通りに撮ってもらうのが正解なんだろうと思う。
そして大きく宣伝した派手な映画に埋もれがちなこういう作品を、きちんと紹介してくれる人たちがいるのだから、それを信じて観に行ってみた方がいいはずなのだという思いを強くした。