「耳、ゲシュタルト崩壊。」

「粋な夜電波」第177回放送はフリースタイル。
シーズン8のOPテーマ曲も決定し、文字通り鉄板のファミレス爆笑エピソードも披露。
ますます面白くなっていく番組の中の、「声ロレックス(労力士)」トークの部分を文字起こししてみました。
(※今週の大ネタ「COCO'Sで焼しめる」話は、既にみやーんZZさんが書き起こしされていたようなので、他の部分を起こしてみました。…録音に失敗して月曜の朝にようやく聞けた次第でして。)

Classic Film Scores: Laura/Forever Amber/the Bad &

Classic Film Scores: Laura/Forever Amber/the Bad &

(メールを読んで)
え〜…何が言いたいかというとですね、ワタクシ昔…何ていう雑誌だったか忘れましたけど、「恋と声の話」っていうね、「Story of Love and Voice」っていう、声にまつわる恋の話を…半年ぐらいかな?あれ…1年ぐらいやったかな…連載したことがあって、我ながら気に入ってるんですよ。
で、それの1回目がね、ある時悲しい事があって、そいで…ファミリーレストランで…
ワタシはとにかく悲しい事があるとファミリーレストランに行くんで(笑)。ま、悲しい時だけじゃなく、行くんですけど。
ファミリーレストランに行って、自分でドリンクバーで好きなカクテルを作って…ノンアルコールを作って飲んでたんですよね。
そしたら、そん時にね、ちょうどね、P-VINEからメジャーに移籍したばっかりのCRAZY KEN BANDの「ガールフレンド」っていう曲が流れてきたんですよね。すごいいい曲で、聞きながらちょっと泣いちゃったんですよね。「ああ、いいな…。」と思って。
で、聞きながら泣いちゃったんですけど、ま…これは「声ロレックス(労力士)」っていうか、一種の耳、ゲシュタルト崩壊っていうかね。
その…ずーっと聞いてると、誰の声かわかんなくなってきて、あまつさえ違う人の声に聞こえてくるっていうことが、あるんですよ。
ゲシュタルト心理学」っていうのがあってね、ま…視覚上のゲシュタルト崩壊は、皆さんご存知ですよね。
ずーっと同じひらがな…「な な な な…」って書いてると、何書いてるかわかんない…変な絵書いてる気分になる…ね。記号と記号の意味が剥離するってことなんですけど。
ま、耳もそうで。そん時にクレイジーケンバンド横山剣さんの歌声がですね、当時あの…「ぐっさん」っているじゃないですか、「DonDokoDon」って、もう今言ってもわかんないですかね。山口(智充)さんって方ね、…が、吉本の中でも歌が上手いってことで、雨上がり決死隊の宮迫さんと一緒に「くず」っていうデュエット…ま、企画物のデュエットチームを作って、企画物でありながら、やはり芸人さんの力がものすごい世の中ですから、ヒットチャートでチャートアクションした…っていう時期だったんで、ぐっさんの歌を日常的に…別にCDを買ってとかじゃないんですけど、日常的に聞いていた時期に、横山剣さんの歌を聞いていて、ゲシュタルト崩壊して、ぐっさんの声にしか聞こえなくなってきて
「同じ歌唱力のあり方だな…。」って。歌唱力のあり方にはいろんな形があるんですけど、この話も細かくしてると面白いんですけど、ま…バッと端折りますけど。
「歌が上手い。」と思われてるのね、二人とも、巷間。歌唱力がある人だと思われてるんですけど、で…実際あるんだけど、そのあり方がそっくりで、プラスティックな歌唱力なんですけどね。もう…エグいレアな、こう…何て言うんですかね、生ものみたいな歌唱力じゃなくて、いい意味でですけど、あの二人の歌唱力は、ポルノ女優さんが喘いでいるのと同じで、演技的な歌唱力なのね。そこも似てるし、そもそも声が似てると思って。
そのことを書いたんですよね。で、頭の中で横山剣の歌声がぐっさんの歌声にモーフィングした…っていうのを、深夜のファミレスを舞台に、ちょっとした軽いロマンティックな筆致で書いて、「我ながらいいこと書いた。」って思ってたのが、5年前ぐらいかな。もっとだったかも、6年ぐらい前かもしんないです。
そしたらね、こないだテレビ観てて、なんかね…ぐっさんが散歩する…いろんな方と、ゲストと一緒にいろんな街を散歩するって、ま…ありがち…ね。ありがちって悪いことみたいですけど、いかにもありそうな企画の番組やってて、パーッと観てたんですよ。歯なんか磨きながら。
そしたらなんと、横山剣さんとぐっさんは、十年来の家族ぐるみの付き合いがあって、大親友だったということを知ってですね、「なんだよ〜。」っていう…ネタバレというかね…ネタバレじゃないですけどね、オチが付いてしまったというね。
その番組の中では、「タイガー&ドラゴン」を二人でデュエットしてたんですけど、どっちがどっちかわかんないぐらい似てましたから(笑)。
「まあ…友達じゃしょうがねえや。」って思った、というようなこともありました。…といったような感じですよね(笑)。
この話がしたくて今のメール読んだんですけども(笑)。
1曲聞いてみましょう。…ウビエットさん。
クロンチョン」という音楽がありまして。これはクロンチョンというくらいで、語感でわかると思いますがインドネシアの音楽です。
しかも歌謡曲ですね。クロンチョンは、ものの本によればですが、「世界最古のポピュラー音楽」…要するに、宮廷音楽や宗教音楽があって、そしてポピュラーミュージック…つまり一般人がお金で買って楽しむ…要するに市場経済ですとか、いろんな時代の変容に合わせて音楽も、一般市民の娯楽用の音楽ってのが、こう…ちゃんと産業として成立していくっていう。ま、それは20世紀なんですけどね。
そん中でも実は一番古いのはインドネシアで、その中でもクロンチョンってものが、世界最古だと言われているんですけども。
そのクロンチョンの中には、スタンダードナンバーがジャズみたいに決まってるんですよね。
で、このウビエットさんという方は、そのクロンチョン自体をですね、「クロンチョン・トゥンガラ」っていうんですけど、クロンチョン自体は大衆音楽とはいえ、歴史古いですから、「こういう楽器で、こうやって伴奏する」っていうのが決まっちゃってるんですよね。民族楽器かなんかで。
それをね、そこに改革を起こしたっていうか、まあ…企画盤なんですけどね、2007年の音源ですけど。
思い切ってそのクロンチョンを、クラシック、ジャズ…要するに全く新しいモダンな和声やモダンなリズムを駆使して、クロンチョンを現代風にしたっていうアルバムがあるんですよ。
で、そうですね…好事家の皆さんには、「インドネシア版のスティーリー・ダン」って言った方が、一番聞こえがいいかもしれない感じの、非常に変わった音楽になってますので、まあ…秋の夜長だし、ちょっとこういった珍味もお試しあれという感じで
ウビエットさんで、アルバム「クロンチョン・トゥンガラ」より「クロンチョン、ケマヨラン」かな?…ちょっと発音わかりませんけど、…をお聞き下さい。
(曲)

クロンチョン・トゥンガラ

クロンチョン・トゥンガラ


はい、クロンチョンの改革者、ウビエットで「Keroncong Kemayoran」でした。
ほとんどね…クロンチョンなんて、シンプルな曲ですから、元々のやつは何キー…キーっていうか長調短調ね、何メジャー何マイナーとかキーがあるんですけど、バックトラックの和声進行とかリズムとかに凝ると、キーが何だかわかんなくなってくるんですけど。キーが何だかわかんないぐらいイジってますよね(笑)。そういう意味では本当にスティーリー・ダン級のね、イジりかたで。
まあ、これは1曲目ですけど、他の曲もどんどんどんどんスゴくなってっちゃうんで。ぜひチェックしていただきたい盤ですけども。
え〜…ま、そうですね、自己治癒って言葉がありますね。自分で自分をトリートメントする、キュアするということで。
こう…何て言うんですかね、「土いじりが私の自己治癒です。」とかね。
ああ〜!…今、椅子が下がりました(笑)。…ヨイショ。はい、椅子を上げました。なんか生放送っぽいですね(笑)。なんでか今椅子がグッと下がりましたけどね。
「…土いじりが私の自己治癒になりました。」とかね。「意外と育児が自己治癒になりました。」とかいう言葉がありますけども。
とはいえ、自己治癒って言葉はですね、リエゾンすると「自己チュー」ですからね。
あの…微妙に、日本語ってのはホントにこう…雅やかで、遠回しによく出来た言葉だな〜と思う菊地成孔が…
あ、ここには入れなくていいんですね(笑)。
これ(「TBSラジオをキーステーションに…」のくだり)はCM明けの時だけでいいんだ。今、曲明けで言っちゃいましたけどね。
はい、ま…わざとですけども(笑)。

※文字起こしの「NAVERまとめ」あります。