「TABOOレーベルの良心。」

「粋な夜電波」第193回は、2月11日に東京公演を控える〈ものんくる〉のお二人を迎えての生放送。
若き才能に驚愕しつつも、全幅の信頼を得ているプロデューサーの菊地先生。すごくいい関係性で音楽が制作されていることの窺える、お三方のリラックスした会話の一部を文字起こししてみました。

南へ

南へ

菊地 はい、え〜…「菊地成孔の粋な夜電波」、ジャズミュージシャンの菊地成孔TBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。今週はものんくる〉のリーダー角田隆太さんと、ヴォーカルの吉田沙良さんを迎えての生放送です。え〜…よろしくお願いします。
角田 よろしくお願いします。
沙良 よろしくお願いします。
菊地 はい、え〜…どうでしょう、紹介…する必要がありますかね?
沙良 今さら?
菊地 この番組には、バンド単位では〈ものんくる〉が一番数多く出てるんですよね。
角田 あー、ほんとですか。ありがとうございます。
菊地 そして、個人ゲスト単位では、吉田さんが一番多く出てるという…(笑)。
沙良 えー、ほんとですか!
菊地 コントの本数、一番多い。吉田さんが。
沙良 うわー。
角田 うーん。
菊地 吉田さんの次が江藤愛さんですよ、確か。
沙良 そうなんですか〜。
菊地 そうなんですよ。…とはいえですね、この時間帯…金曜の夜12時になってからは、初めてですね。
角田 うーん、そうですね。
沙良 そうですね。
菊地 ですので、ま…すごい速さで紹介してしまいましょうかね。
沙良 (笑)。
菊地 ま、先ほど聞いていただきました「南へ」というアルバム、ワタシ菊地成孔SONYさんの中に「TABOOレーベル」というレーベルを持ってまして、ま…〈ものんくる〉は今のところですけどね、「TABOOレーベル」の良心と言われてますので(笑)。
角田 良心!
沙良 おおう。
菊地 「TABOOレーベル」の天使と言われてますけどね。
沙良 (笑)。
菊地 ま、「TABOOレーベル」の善人とも言われてます。
角田 (笑)。
沙良 ほんとですか?
角田 「いい部分担当」ってことなんですかね、なんか。
菊地 そうですね、いい人担当ですね。
沙良 うあ〜。
菊地 後がもう、菊地凛子とかですね…(笑)。
角田 (笑)。
菊地 UAとアタシとかですね。あとペペ・トルメント・アスカラールでしょ。
角田 あー、ワルそうですね、確かに。
沙良 (笑)。
菊地 はい、あともう悪いのばっかりなんで。
角田 (笑)。
菊地 今年の1枚目はジャズ・ドミュニスターズで、大谷君ですからね。
角田 うわ〜。
沙良 おおー。
菊地 そん次がDCPRGなんで、ま…とにかく〈ものんくる〉だけがですね、手折ってはいけない花としてですね…
沙良 (笑)。
菊地 うちのレーベルの天使なわけですけども。ま、うちのレーベルから出した1枚目が「南へ」ということで。
角田 はい。
菊地 その前のアルバムも、2作連続でワタシがプロデュースさせていただいて。
沙良 はい。
菊地 ま、プロデューサーなんて言うとね、秋元康さんみたいで偉そうですけども、全然何にもしてないんですけども(笑)。
角田 いやいやいや…そんなことないじゃないですか(笑)。
菊地 まあまあ…「すごいな!」って思って、「レコード出しませんか?」って言っただけですけどね(笑)。
沙良 いやいやいや(笑)。
菊地 平均年齢、おいくつですか?
角田 えーと…平均年齢は26ぐらいになったのかな、多分。
沙良 みんな結構30…
(サブから「何人組でしたっけ?」の質問。)
菊地 9人組か?
角田 9人組ですね。
菊地 厳密にはメンバーお二人…でいいんですか?
角田 そうですね、ユニットって感じでやってるんですけど。
沙良 はい、うん。
菊地 ですよね。…ですが、先ほどの演奏なんか入ってたブラスの人は、スタジオミュージシャンじゃなくて、メンバーなんですよね。
角田 はい、そうですね。
菊地 で、その総勢9人。ノネット…ジャズ用語ではノネットと言いますが、ジャズだけじゃねえか…クラシックでも言うけど、それで今活動されているということですね。
沙良 はい。
菊地 まさに「アンファンテリブル」っていうね。大変な演奏能力、作詞作曲能力、編曲能力ですけど、30いってる人がほとんどいないっていう…。
角田 そうですね。特にリズム隊だけでみると、核となってる4人とかでみると…そんなもんで。
沙良 そうですね。
角田 でも結構、年齢の振れ幅が大きいので。
菊地 誰が一番年上なんですか、今。
角田 えーと…それは言っていいのか…
菊地 それは言ってはダメですね。
沙良 (笑)。
菊地 女性も多いですからね。
角田 そうですね。
菊地 とはいえ…とにかく、普通バンドでは珍しい…かなり珍しいんだけど、それは編成ではなくて、作詞作曲編曲を男性が一人でやってるっていうのが、多分日本のバンドの中で唯一でしょう。
角田 そうなんですかねえ。
菊地 普通こういう体で、何て言うんですか?…まあ…離婚調停に来てる人と弁護士みたいになってますけど(笑)。
沙良 ええ〜っ!
角田 (笑)。
菊地 今、並び方がね(笑)。
沙良 ちょっと遠いし(笑)。
菊地 縁起でもない。ちょっとね、よそよそしい(笑)。
角田 (笑)。
沙良 距離感が(笑)。
菊地 結婚されてないですけどね。…ですけども、普通こういう形だと、吉田さんが作詞して、そして角田君が作曲して、アレンジはみんなでやる…とかね。
角田 ええ。うんうん。
菊地 あるいは吉田さんが作詞作曲して、角田さんがアレンジして全体をまとめてる…とかいうのはあるんだけど、角田君が全部やって、吉田さんは歌うだけだっていうね。
角田 そうなんですよね。
沙良 何もしてないス。
角田 ちょっと夏休みの自由研究みたいな感じで、全部自分でやっちゃってるんだ…みたいな感じになってるんです。
沙良 (笑)。
菊地 しかも、9人中8人が音大なんだけど、在野が角田君だけですよね。
角田 そうなんですよね(笑)。そういえば。
沙良 あー、そっかー。
角田 そうだわ。
菊地 でしょ?
角田 はい。そうです。
菊地 だから、音大のバンドで音大だから…ま、今、音大のバンド、芸大のバンドいっぱいありますけども…
角田 ええ、ええ。
菊地 ワタシ、音大も芸大も先生やってるタイプですけど。音大のバンドなんていっぱいあって、ま…「だからすごいんだな、作詞作曲が!」って思うと、作っている人は音大じゃないっていう(笑)。
沙良 たしかに。
角田 ほんとですね。
沙良 そうですね。
角田 まあ…だからこそのコンプレックス、めちゃめちゃありますけどね。
菊地 ほんと!?
角田 ええ。メンバーに対するっていうか。
菊地 ほんと!?
角田 僕よりいろんなことメッチャわかってますからね、みんなのほうが。
菊地 …ほんと!?
沙良 (笑)。
菊地 さっきから「ほんと!?」を4回…(笑)。
角田 (笑)。
菊地 パーソナリティとしてダメかな?と思うぐらい「ほんと!?」を4回連続で言いましたけど…ほんと!?
沙良 (笑)。
角田 いえいえ(笑)。…ありますよ。
菊地 見えないですよね。
沙良 ああ…見えないですね。そうですね、うん。
菊地 角田君ってもう…絶対的なリーダーとして…まあ、当たり前だけど…全部やってるわけだから。
角田 ええ。
菊地 作詞もやってるわけでしょ。メンバーの人は全員そのソングライティングに酔いしれてついて行ってるっていう感じにしか、プロデューサーとしては見えないんですが。
角田 いやいや、そういう構造は別にないですね。
沙良 うーん、いやでも、みんな酔いしれていると思いますけどね。
角田 どうなんでしょうね。でもやっぱりバンドの中で絶対的な存在なのは沙良で、沙良の歌があって、ま…そこが一番求心力があって、みんなついて来てるような感じはしますけどね。
菊地 沙良さん、カリスマすごいですからね。
角田 ええ。
沙良 いやいやいや。
(中略)
(「夜電波が誇るコメディエンヌ・沙良さんの大暴れも楽しみにしてます。」というメールを読んで。)
沙良 …そんな!
菊地 大暴れされますか?…今日は、ぶっちゃけ。
角田 うーん。
沙良 そう…ですね、ぶっちゃけ…ね、しないといけないですね。
菊地 そうですね。なんか…マストになってきましたよね。
沙良 大暴れねえ…。
菊地 このシーズンになってからね、お相手がいるコントはあんま書いてないんですよ。
沙良 あ、そうなんですか。
菊地 昔はやたら書いてたんで。
角田 うーん。
菊地 だって…吉田さんとだけで、もう5〜6本やってますよね。
沙良 そうですね。そこまでやってないかもしれないですけど…3本?
角田 もうちょっとあるんじゃない?
菊地 いや、もっとある、もっとある。
沙良 はっ…忘れている。
菊地 一回まとめて全部聞いたらいいと思いますよ。「復讐の少年」から始まって…
沙良 そんなやりましたか。ああ〜。
菊地 やったやった。ウェットパフォーマンスもドライパフォーマンスも、クレイジーパフォーマンスもありましたけどね。
角田 うーん。
沙良 あ、そうか〜。
角田 幅が広いですよね。
菊地 幅が広い。4〜5本やってるもん。で、すごい人気ですよ、「サラ太郎」が
沙良 (笑)。
菊地 いつも男の子だからね。
沙良 私もでも…サラ太郎の時、すごいストレス発散になって楽しいんです。
角田 (笑)。
菊地 吉田さん、ストレスがあんの?
角田 (笑)。
菊地 ほんとですか?(笑)。
沙良 いや、自分でも気付いてないレベルの…なんだと思うんですけど、言ってる時にワァ〜ッと…開いていく感じ?(笑)…があります。
菊地 その…なんての…不良物のコントを、普段しっかり…っていうか、フェミニンな方に振ると、だいたい皆さんスッキリするって言いますよね。
沙良 ああ〜。
角田 うーん。
菊地 今日はその点…今日のコントはね、逆ですから。角田君がゲイ役だっていうね!
角田 全然違うじゃないですか!(笑)。
菊地 今、思い付きで言っただけで、全然そんなことありません。
角田 (笑)。
菊地 そこまで極悪じゃないんでね。プロデューサーって何でもやらせられるんだ…ってね、そんなことありません、全然。
沙良 (笑)。
菊地 よくね…すごい言われんの。「オマエ、操ってるだろ!」みたいな。
角田 ああ〜。
菊地 威張ってるんじゃないか?…みたいなね。…全然そんなことないですよね。
角田 全然威張ってないですね。すんごい優しいプロデューサー。
沙良 優し過ぎて。
菊地 1曲…ね、終わったら、吉田さんの肩揉みに行って(笑)。
角田 (笑)。
菊地 そんなに優しくないですけどね。
沙良 布団もかけていただいて…。
菊地 (笑)。
角田 どこまで(笑)。
沙良 ほんとに…何から何まで。
菊地 リスナーがね、変な要らぬ妄想をしてしまいますから。
沙良 (笑)。