「次世代ジャズピアニストサミット。」

「粋な夜電波」第234回放送は、若手ジャズピアニスト3人をゲストに迎えての「次世代ジャズピアニストサミット」。
御三方それぞれのジャズピアニストを志すきっかけとなった曲を紹介していただいた部分を文字起こししてみました。

Love Theme

Love Theme

NEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL

NEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL

BUTTERFLY バタフライ

BUTTERFLY バタフライ


菊地 え〜…今週は「第一回次世代ジャズピアニストサミット」桑原あいさん、「fox capture plan」の岸本亮さん、西山瞳さんをお迎えいたしまして、ジャズの未来について…ということなんですが。
(中略)
今日はじゃあ…残り時間も少ないですし、まあまあ…あまりに御座成りなパターンですけど、今でこそ…こういう現代的なジャズピアノトリオを演ってますが…つまりクラシックスタイルを採ってないけれども、ヰタ-セクスアリスじゃないですけど、「これ聴いて『もうジャズピアニストになろう!』と思った。」っていう経験がね、あると思うんですよ、どなたも。それをおひとかたずつ…これはマイク上げっぱなしでいいんで。まず誰からいこうかな?…桑原さん。
桑原 はい。あの…私はジャズに目覚めたのは、アンソニー・ジャクソンがベイスを弾いている「Captain Fingers」って曲なんですけど、初めて聞いたピアノトリオがオスカー・ピーターソンの「ウエストサイド・ストーリー」なんです
菊地 へえ〜〜。
桑原 それが最高に素敵で。
菊地 あれ、ヤバいですよね。
桑原 はい。
菊地 ピーターソンってね…これ、小曽根真さんの名言ですけど、アメリカで『Jazz』っていうのは、一般的にオスカー・ピーターソンのことだ。」って言われてますよね。
桑原 ああ、そうだと思います。
菊地 ま、この番組ね…お年寄りも聞いてるんで、そん中にはジャズ親父もいっぱいいると思うんですよ。で、最初にみなさんの曲聴いて、ワタシの曲なんか聴いて、「ケッ!」と思ってるオヤジさんも実際いっぱいいると思うんですよ、これは。
桑原西山岸本 (笑)。
菊地 ま、ゼロではない…ね。この世の中はユートピアじゃないから
西山 はい。そうです。
菊地 ゼロではない。いっぱいいるわけじゃないけど。でもね、そんなお爺さま達も目を細める…「うん。あいちゃんもピーターソン聴いてたのか。」っていう(笑)。
桑原 聴いてますよぉ〜。もうメチャメチャ聴いてますよ。
菊地 (笑)。
桑原 ケニー・ドリューとかも大好きですよ。
菊地 ヤバいですねえ。
桑原 はい。どっちにしよう?
菊地 ピーターソン、どれにしますか?
桑原 えーと…
菊地 「Captain Fingers」でもいいですよ。
桑原 いや、やめます(笑)。バラードと明るいのどっちにしますか?
菊地 えーと…明るいのにしましょうか。
桑原 じゃあ3番。「Tonight」で。
菊地 あ、「Tonight」ね。
桑原 はい。
(曲)

菊地 あ、これいいよね。ピーターソンなんか聴かれました?
西山 ピーターソンは…いちおう有名なものは全部聴いてますけど、あんまり私は…ハマらなかったですね。
菊地 ハマらなかったですか。岸本さんは?
岸本 僕も家にあるのを聴いてたぐらい…です。
菊地 なるほどなるほど。
岸本 僕はビル・エヴァンスとかバド・パウエルとかのほうが…
菊地 はいはい。ピーターソンって…量るよね、人を。
西山 うーん。
菊地 要するにガーン!って「もう絶対これだ!」ってなる人と、「わー、すごいなぁ…でも…。」っていう感じと別れますよね。絶対凄いことは間違いないんだけど。…桑原さん、今もうエアーで弾いてますけどね。
桑原 これ、耳コピして中学校の頃やってました。
菊地 うぉ〜…スゴイですねぇ。中学生でこれ耳コピしたの?
岸本 へえ〜。
桑原 耳コピしてましたぁ〜。
菊地 早熟ですね。
桑原 (笑)。
菊地 なるほど…ちょっと、今、影響無いとは言えないですよね。
桑原 言えない?…ですよね。
菊地 展開が…調性の濃淡だけで、こう…いろんな展開があったりするところなんか似てると思います。
桑原 あ、多分そうだと思います。
菊地 ね?
桑原 はい。
菊地 あと、こう…ベイスが…リズムに任せといて、自分が出てきたらバリバリ弾くとか…似てますよ。
桑原 そうそう(笑)。
菊地 なるほど。オスカー・ピーターソンですね。では、西山さんのルーツは。
西山 はい。私は…それこそヘヴィメタルをずっと高校の時に聞いてて…
菊地 あ、ヘヴィメタ少女だったんですか?
西山 はい。その…ピアノをクラシック止めてた時期に、もうどっぷりで…たまたまその時にジャズのCDをジャケ買い
菊地 ちょっと待ってちょっと待って(笑)。もともとピアノを習ってたんだけど、嫌になって…クラシック嫌いになって止めて、ヘヴィメタに行ったわけね。
西山 はい。
菊地 もう絵に描いたような左から右じゃないですか。
西山 (笑)。完全な反動で、「もうギターしか聞かない!」みたいな状態で。
菊地 上から見たら同じですけどね。
西山 そうそう(笑)。
菊地 その事をのちにね…36にして証明してるんだってことですよ。
西山 はい(笑)。それでたまたま買ったのが、チック・コリアの「Now He Sings, Now He Sobs」と…
菊地 名盤ですね。
西山 あとビル・エヴァンスの「Undercurrent」で。
菊地 はい、名盤ですね。
西山 私それまで…父親がジャズ好きだったんですけど、いわゆるその…60年代の物ばっかりで、ホーンが入ってるのが好きだったので、ピアノトリオを家で全然聞いたことなかったんですよね。
菊地 なるほど。
西山 「こんな…ピアノでジャズってカッコいいんだ!」と思って。もうすぐ「ジャズやる!」って決めたんです、はい。
菊地 なるほど。いや…「Now He Sings, Now He Sobs」は、今でこそワタシ…サックス奏者ってことになってますけど、「Now He Sings, Now He Sobs」だけはね…「ピアニストになりたいな。」って思わせる力がね…ありますよね、ちょっとね。「Matrix」でいいですか?
西山 はい。
菊地 チック・コリアですね…今やもう好々爺ですけどね。チック・コリアの…これ何年だっけ?…ま、こういう御時世ですから検索してください。まだまだ若き日のチック・コリアですね。「サークル」より前ですよね。
西山 はい。
菊地 同時期か?…ま、だいたい…チック・コリアチック・コリアとして自己更新してバーンッ!と売れる「Return to Forever」の前史ですよね、はい。
(曲)

菊地 桑原さんなんかは…聴いたりしました?
桑原 聴きました〜。チック・コリアもメチャメチャ聴きました。一番好きなチック・コリアのアルバムは「マッドハッター・ラプソディ」でした。
菊地 ああ、ほんとですか。
桑原 はい。
菊地 ほーう。一番好きなチック・コリアのアルバム何ですか?
岸本 えーっとね…「I Hear a Rhapsody」とかが入っている…ロイ・ヘインズとやってるやつかな。
菊地 はいはいはい。
岸本 あれが一番好きです。
菊地 なるほどなるほど。ワタシは「Three Quartets」ですね。
西山 ほお〜…いいですね。
菊地 うん、あれはヤバいですね。すごい今、ジャズ喫茶話になってますけど(笑)。
桑原西山岸本 (笑)。
菊地 関係無い人、何の事が全然分かんない(笑)。…まあ、ある種のデジタリズムっていうかね、打ち込んだみたいな…いわゆる…良い意味でですけど、打ち込んだみたいな…一糸乱れぬっていうかね。
西山 はい。
菊地 まあ、もともとジャズピアノは…それこそビーバッパーの頃から一糸乱れないんだけど、それにしても乱れないですよね。
西山 うんうん。

(中略)

菊地 というわけで、今日はお三方、ありがとうございました。
桑原西山岸本 ありがとうございました。
菊地 というわけで…一人だけルーツを訊いていなかった岸本さん…
岸本 はい。
菊地 …のルーツを聞いて、今日はお別れしたいと思います。はい、これに対する思い、解説などなど…いただけますか。
岸本 そうですね。最初はあの…フュージョンしか聞いたことが無かったんですけど、親が家で掃除しながら、これかけてて。
菊地 はい。
岸本 なんか…イントロから…曲も有名中の有名なんですけども、そのアドリブのピアノソロが、全部においてなんかキャッチーだな〜と思って。
菊地 そうですね、うん。
岸本 こういうピアノ弾けるようになったらカッコいいな…っていうのが、ジャズピアニストになったきっかけなので、この曲を選びました。
菊地 なるほど。…というわけで、まだ誰の何とは言ってません…が、プレイをすれば、ジャズファンの方には自ずとどの曲か分かると思います。というわけで、敢えて曲名は伏せて、お別れしたいと思います。「fox capture plan」の岸本亮さんのルーツの曲であります。来週金曜深夜0時にまたお会いしましょう。お相手は菊地成孔でした。みなさん、ありがとうございました。
桑原西山岸本 ありがとうございました。
(曲)

ポートレイト・イン・ジャズ+1

ポートレイト・イン・ジャズ+1