「90’sに対してどういう態度をとるか?」

「粋な夜電波」第258回放送は、不定期好評企画「韓流最高会議」。おなじみのお二人…社会学者の韓東賢(ハン・トンヒョン)さんと音楽ブロガーのヴィヴィアンさんをお迎えして、最新の韓国の音楽を紹介しつつ、なぜかオリラジとベッキーについての言及が飛び出すなど、幅広い話題について語られました。
韓国に限らず、今世界中の最新の音楽が、90年代という黄金期に対してどういう態度をとるか?という課題に直面しているという事について指摘されていた部分を、文字起こししてみました。

1集 - Press It  (ランダムバージョン)  (韓国盤)

1集 - Press It (ランダムバージョン) (韓国盤)

菊地 え〜、「菊地成孔の粋な夜電波」、本日は「韓流最高会議」第十一次。11回目になりましたね。
 フフ…。
菊地 韓流的にはテレビドラマ、そして映画専門になってまいりました菊地成孔と…
 (笑)。
菊地 アイドルは、さすがの疲労によって引退して、自分の青春時代であるインディーロックに戻りつつある社会学者の韓東賢さん…
 (笑)。
菊地 そして、オタク体質によって、K-HIPHOP界をさらなる邁進しておりますヴィヴィアンさんをお迎えしてお送りしております。
ヴィヴィアン はい(笑)。
菊地 じゃあ、そんな中…そうですね…この5曲目聞いてみましょうか。
ヴィヴィアン はい。
菊地 今日はまあ…アイドルのR&B系の曲から始まって、ちょっとK-HIPHOP・R&Bの流れが、期せずしてできた感じですけども。アーティストを紹介していただけますか。
ヴィヴィアン はい。今、韓国で一番アツいと言っても過言ではない、DEAN(ディーン)っていう人なんですけど。
菊地 はい。
ヴィヴィアン 今、めちゃくちゃグイグイきてて…
菊地 DEANね。
 名前だけ聞くと、すごい過去な感じがして(笑)。
ヴィヴィアン 昔の日本のバンドじゃなくて(笑)。まだ二十歳そこそこなんですけど、もともと作曲家チームにいたそうで。
菊地 はいはい。
ヴィヴィアン EXOにも曲を提供したことがあるっていうのが売りなんですよ。EXOの「アンフェア」って曲、知ってます?
 ……。
ヴィヴィアン …を、作詞作曲したらしいんですが。
 うんうんうん。
菊地 ち、ちょっと待って(笑)。今の韓さんの…「知らない。」っていう回答でいいんですか?
 いや!…アルバムの曲とかだとタイトル覚えてないんですよ。
菊地 (笑)。
 聞いてても、シングル曲じゃないと…タイトルだけだと、ちょっとわかんないですね。
菊地 それ、EXOペンの人が槍持って「ワーッ!」って後ろから追っかけて来ますよ。「裏切り者〜!」って(笑)。
 いやいや…大丈夫、もうアタシなんか相手にされないんで。大丈夫です。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 ほんとですか。わかりました。
ヴィヴィアン それが…話題作りだと思うんですけど、まず去年の夏にアメリカで先にデビューしたんですよ。
菊地 はいはいはい。
ヴィヴィアン 所属しているレコード会社がすごく大きいところなんで。
 ある時期の日本みたいだね。アメリカで先にデビューさせるとか。
ヴィヴィアン そうですね。で、かつクリス・ブラウン周りのプロデューサーとやたら一緒にやって、すごいコストかかってるんですよ。
菊地 逆輸入的にね。
ヴィヴィアン そう。で、「秋に韓国でデビュー!」みたいな。「ついに本国上陸!」みたいな感じでデビューして。
菊地 はいはい。
ヴィヴィアン そのアメリカでデビューした時のシングルを紹介したいんですけど。「I’m Not Sorry」って曲で、例によってクリス・ブラウンのプロデューサーとしても知られているエリック・ベリンジャーっていう方とデュエットしてる曲なんですけど。
菊地 はい。
ヴィヴィアン けっこう今風の曲で、電子音ビュンビュン系で、なんかあと「フゥーッ!」とか言ってたりして…
菊地 はいはい。
ヴィヴィアン それも今流行ってるじゃないですか。
菊地 流行ってますね。
ヴィヴィアン もう「フゥ!」とか(笑)…
菊地 R&Bがね、もうそんなにスロウダウンじゃなくなってきたっていう。
 うーん。
ヴィヴィアン そうなんですよ。すごく今風のサウンドを楽しめる曲なので。DEANとEric Bellingerの「I’m Not Sorry」。

(曲)

菊地 この人どういうルックスの人なんですか?
ヴィヴィアン なんか…韓国人なんですけど、すっごい西洋風の顔立ちの…イケメンなんですけど。
菊地 ああ。
ヴィヴィアン なんか…スタイリストが悪いんですけど、全体的にちょっとダサいんですよね。
 (笑)。
ヴィヴィアン でも、顔はすごくイケメンで、それ活かせば相当ファンも付きそうな
菊地 なるほど。その…エリック・ベリンジャーと並んで歌った時のルックスがどうなのかな?と。
ヴィヴィアン あ、イケてますよ。結構。
菊地 あ、ほんとに?…(笑)。ま、今のR&Bも停滞したと言われてますけど、少しずつの進化っていうかね。
ヴィヴィアン はい。
菊地 トレンドがみんな入ってますよね。三連符とかね。「タタタ、タタタタ、タタタタタタ…フゥ!」ってのが、やたら入ってると。
ヴィヴィアン うんうん。
菊地 まあ…トレンドだっていう感じですね。
ヴィヴィアン はい。
菊地 韓さん、どうですか。全然、こういうの…
 今の?
菊地 ええ。今の。
 えっ…なんか…言ってよければ…古臭い感じするんですよ。
菊地 (笑)。
ヴィヴィアン ああ〜、逆に?
 どうなんでしょうか。なんかね…昔の番組の主題歌とかみたいな感じ。
ヴィヴィアン (笑)。
菊地 そうね。
 …なんだけど、わかります?…歌い上げてる感じ
菊地 よくわかります、よくわかります。
ヴィヴィアン ああ〜。
 日本の昔の…「歌い上げ感」が、なんかちょっとアナクロニズムを感じたんですけど。どうなんですかね。
ヴィヴィアン うんうん。
菊地 やっぱり…R&B特にそうなんだけど、ノスタルジックにいこうと…
 ああ〜。
菊地 なんか懐かしいし、アレだよね?…っていう
ヴィヴィアン うんうん。
菊地 まあ、今…結局…ゴールデンエイジって言われてるの、結局90年代なんですよ。
ヴィヴィアン そうですね。
菊地 90年代なの。
 うんうん。
菊地 で、ナインティーズに対して、どういう対処をとるかっていうのが…
 うんうん。
菊地 これはもう、「韓流最高会議」もなんもなく、世界中の音楽が、90’sに対してどういう態度をとりましょうか?…っていう事ね。
 うんうん。
ヴィヴィアン でも、DEAN…実際ちょっと90’sっぽい感じですよ。うん。
菊地 その態度のとり方が、もうモロの人と…
 うん。
菊地 あるいは、どこの…何をして90’sとするか?
ヴィヴィアン うーん。
菊地 まあ、韓国にも韓国の90年代があるでしょうし、日本には日本の「渋谷系」っていう特殊な90年代がありましたし。
 うん、うん。
菊地 80年代に対する態度は、みんな決まってんの。だいたい。
 はいはい。わかります、わかります。
菊地 それは…「80年代ってこういうことよね?」、で…「ちょっと入れてみたよね。」
 共通のね…
菊地 そうそう。で、「マイケル・ジャクソンの曲、カバーするよね。」
ヴィヴィアン うんうん。
菊地 みたいな感じで、80年代に対しての…何て言うか…プランニングはね、散らばってないんですよ。
ヴィヴィアン うんうん。
菊地 だけど、90年代に対しては、とにかく行かなきゃいけないんだけど、どういうプランで行くか?って事がバラバラで…
 まだ共有されてないんですね。
ヴィヴィアン ああ〜。
菊地 共有されてないの。とはいえ、リリースはしなきゃいけないから(笑)。
 はいはいはい。
菊地 どんどんどんどん締め切りはやってくるじゃないですか。
 (笑)。
菊地 だから…「とりあえず、ベタでやっとけ!」っつって処理しちゃうと、古臭い感じになってしまうという…
 なるほどね。
菊地 すごいリスクがありますよね。
ヴィヴィアン ああ〜。
菊地 でね、聞いた事ないような音楽狙って、結構キテレツなエレクトロみたいなのにすると、00年代に聞こえるの、今度。
 はいはい。わかります、わかります。
ヴィヴィアン ああ〜。
菊地 レイ・ハラカミさんが出てきたばっかりの頃とか…に聞こえる可能性があって。
 うんうん。
菊地 ポップミュージックどうなんのかな?って、今すごい曲がり角で。
 うーん。
菊地 21世紀も15年経って、すごい…何て言うんですかね…それこそタイムラグじゃないけど…
 うんうんうん。
菊地 21世紀も15年目にして、相当大きく変わるんじゃないかな?っていうのは…言われてるんですけどね。
ヴィヴィアン うーん。

Go Hard (2CD) (韓国盤)

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大韓不法集会 Transmission

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