「狭間美帆さんの明るいNYライフ。」
TBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」第283回放送は、作曲家の狭間美帆さんがゲスト。
大西順子さんのアルバム「Tea Times」のレコ発公演の参加のために来日、NY在住の狭間さんにお話を伺えた貴重な回となりました。
普段のNYライフから、最近の音楽について思うこと等々…明るくハキハキと話す狭間さんの人柄に魅了されたトークの一部を文字起こししてみました。

- アーティスト: 挾間美帆,m_unit,キャム・コリンズ,ギル・ゴールドスタイン,ジョシュア・レッドマン,庵原良司,ジョイス・ハマン,アンドリュー・グタウスカス,サラ・キャズウェル,マシュー・ジョドレル,ロイス・マーティン
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2015/09/23
- メディア: CD
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菊地 はい、どうも。「菊地成孔の粋な夜電波」、ジャズミュージシャンの菊地成孔がTBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。今週はニューヨーク、ハーレムを拠点に…拠点にというかハーレムにお住まいですが…活躍するコンポーザー、アレンジャー、ピアニストの狭間美帆さんをお迎えしております。後半も引き続きよろしくお願いします。
狭間 お願いします。
菊地 はい。どうですか?…一般層が一番聞きたいのは「ニューヨークライフってのはどんな感じなのかな?…女の子が一人で。」っていう。
狭間 そう…ですね。
菊地 ま、一人でっていうかね、そのなんか…
狭間 そうですね。もともと住み続けようと思った理由は、やはりその大学院を終えて、ジャズミュージシャンとして、ジャズコンポーザーとして特にその…インプットが欲しかった時に、今こそここに住めばいろんな刺激が得られる…しかも簡単に。パッと行って20ドル札一枚で、ジャズずっと聞いていられる…みたいな。
菊地 そうですよねえ。
狭間 そういう事が今あったらいいんじゃないかな、自分にとって…って思って。
菊地 はい。
狭間 そこで住み続けたっていうのが大きな理由だったんですけれども。
菊地 狭間さんって…あの(笑)…見かけとのギャップ…よくある話なんですけど。
狭間 はあ…。
菊地 ものすごい男っぽいっていうか、投機的に物を考えて、計画的にちゃんとステップアップされていく事が出来る方ですよね(笑)。
狭間 いえいえいえ(笑)。でも…なんでしょうね。もともと、きっと…与えられた事をやることが好きな子供だったはずなんですけど。
菊地 はい。
狭間 ある日突然、狼人間みたいになって。何でも自分で、こう…「何とかなる。やってみよう。」みたいな、そういう人に。
菊地 なるほど。
狭間 どっからどうなってそうなったのか、全然わかんないんですけど。
菊地 ん…何かあったんでしょうね。失恋ですかね(笑)。
狭間 いやいや(笑)…それでそんなんなりますかね。
菊地 いや〜、わかんないですねえ、ちょっと(笑)。
狭間 自分でも全然わかんないです。
菊地 あの…結局ね。話、ごめんなさい…ごちゃごちゃ行ったり来たりするんですけど。
狭間 はい。
菊地 (ロバート・)グラスパーが出てくるまでっつーのは…
狭間 はい。
菊地 いわゆる「今ジャズ」と呼ばれる…柳樂(光隆)君とかがやってる「New Chapter」…の直前、ウィントン(・マルサリス)とかが、どんなに頑張っても…
狭間 はい。
菊地 「NYに行ってジャズ漬けになろう!」っていう気に、あんまりさせない街だったじゃないですか。
狭間 あ、そうですかね。
菊地 うん。だけどやっぱ2010年代くらい…やっぱグラスパーの「Black Radio」が11年?
狭間 そうですね、はい。
菊地 あの辺りから、また…なんか70年代に戻ったっていうか、あるいは違う音楽にとっての80年代に…ヒップホップにとっての80年代に戻ったっていうか…
狭間 うんうんうん。
菊地 「NYに行けば、とにかくジャズ漬けになれるので、それでジャズ勉強しよう!」っていうモチベーションと、あれが…こう成り立つ…成立する街に、また戻りましたよね。
狭間 あ、そうなんですかね。なんか私の印象としては…私はでも住み始めたのが、なにしろ2010年なので…
菊地 はい。
狭間 その前の事を知らないんですよ。その地に行ったことが一度もないので。
菊地 はい。もう…NYの名だたるジャズクラブが全件赤字…下手したら倒産っていう状況があったんですよ。
狭間 あ、そうですか〜。
菊地 で、結構アンダーグラウンドな、面白いって言われてた店も、みんな軒並みダメってなってた時期があって。
狭間 なるほど。
菊地 NYもう…ジャズ的に、「ジャズ的に」ですよ。ジャズ的にはもう死にかけてたっていうぐらいだったんですけど、なんか急に蘇生したんですよね。
狭間 なるほど〜。
菊地 狭間さん、上手いね。乗っかんのがね(笑)。
狭間 いや…そうですか(笑)。
菊地 うん。狭間さん運もいいし、持ってますよ、やっぱり。
狭間 そうなんですかね。
菊地 オレが狭間さんに「持ってますよ。」ってのも無礼千万な話ですけどね(笑)。
狭間 いえいえ…ありがたい話ですが(笑)。
菊地 いやいや…。
狭間 でもなんかその…なんでしょう。観光客も絶対に多いですし、そういう人もジャズクラブに来るようになっているし、もちろんローカルな人も来るようになっているし…っていうのはあると思いますけど。
菊地 はいはい。あの…ファッション的にはね、ずーっと上がり続けてるんですよ。NYコレクションがあるんで。
狭間 へえ〜。
菊地 今どっちかっていうと、NYのイメージってのは「ジャズとブロードウェイ」っていうのは昔で、今はNYっていうと「オシャレな街」っていう。
狭間 ええっ!?
菊地 「バーグドルフ・グッドマン」とか行ったことあります?
狭間 ありますけれども…じゃあ、もうちょっとオシャレな人、街に増えてほしいです。
菊地 ま、それはしょうがないんですよ。アメリカ人なんで(笑)。
狭間 そうなんですよ。
菊地 アメリカ人はもう…とにかくバクバク食うんで。
狭間 そうですねえ。
菊地 ええ。今日もなんかね、ほんとに朝から晩までリハで、お忙しいところをお付き合い頂いちゃって。で、女性の顔をね、そんなチェックするような…手酷い奴…なんですけど、ワタシは(笑)。
狭間 はい。
菊地 ちょっとピロっと…熱の花みたいなのが…
狭間 (笑)。
菊地 出てて、「それ何ですか?」っつったら、「チョコレートとピーナッツです。」っておっしゃってたんで。
狭間 そう。もう…チョコレートが大好き過ぎて。
菊地 チョコレートに即反応する唇の人っていますよね。
狭間 そう、でも…チョコレートでほんとに肌が荒れることが、最近になってわかりました。
菊地 最近わかったんですか。
狭間 ずっと食べ過ぎてて…何でなんだろうな?って思ってたんです。
菊地 はい。
狭間 でも、どうやらそれを止めれば大丈夫になるらしい、と。
菊地 ああ、なるほど。スキンケアとしてね。
狭間 はい。
菊地 あの…チョコって…ワタシと狭間さんが言うから説得力あると思ってほしいんですけど、リスナーの人には。
狭間 うん。
菊地 太んないですよね。
狭間 太んないです。
菊地 チョコで太ってないよね、アメリカの人って。
狭間 多分違うと思います。
菊地 ジャガイモですよ、あれ。
狭間 コカ・コーラと…
菊地 そう、コーラと。バターでしょ。
狭間 そうです、そうです。あとポテトですね。
菊地 ポテトですよね。絶対イモでしょ、あれ(笑)。
狭間 私もう…ほんっとに…そのフライドポテトとステーキとポテトチップスとハンバーガー…が、理解できない。
菊地 ああ〜。
狭間 じゃあ、なんでアメリカに住んでるんだ!って話なんですけど(笑)。
菊地 ほんと、ほんと(笑)。それでNY住んでたら大変でしょ、食生活…と思うんですけど。自炊されてるんですよね。
狭間 自炊…しますね。白米が無いと生きていけないから。
菊地 なるほど。なんか白米がダメ…とかいう人もいるじゃない。
狭間 そうですよね。
菊地 白米で太るっていう。
狭間 私、ベーグルもたいして好きじゃないから、もはや致命的なんですよ。
菊地 そうすっと、もう炭水化物は白米で…っていう。
狭間 大好き!
菊地 狭間さんって、何かスポーツとかされてます?
狭間 いえ、しないんです。運動嫌いです。
菊地 もともと細い派ね。
狭間 今は体質だと思いますね。
菊地 なるほど。じゃあ、チョコレートいくら食っても大丈夫なんだ。
狭間 でも気を付けないと。
菊地 肌にくるからね。
狭間 そうなんです。我慢しないといけないんです(笑)。
菊地 なるほど。
狭間 キツイんです。ハァ〜…食べたいな。
菊地 (笑)…食べたいですか。
狭間 はい、食べたいです(笑)。
菊地 美味しいチョコレートいっぱいあるもんね(笑)。
狭間 はい。
菊地 (笑)…狭間美帆さんとオレで…わざわざラジオ番組で「美味しいチョコレートいっぱいあるからね。」って言うのも、どうかと思いますけどね。「ジャズの話もっとしろ!」って話ですけど(笑)。
狭間 はい、すいません。そうだった。
菊地 いえ、とんでもないですよ。
狭間 いや…なんかね、NYに一箇所だけ、「MarieBelle(マリベル)」っていうチョコレート屋さんがあって…
菊地 マリベル、有名じゃないすか〜。お菓子の話とか得意ですよ。
狭間 そこに夏限定の、カルダモン味のチョコドリンクってのがあるんですよ。
菊地 はいはい。
狭間 もうどうしても自分に…自分にとことん甘いので、自分にご褒美って言って、勝手に飲んじゃうんですけど。
菊地 はい。
狭間 美味しいですよねぇ〜。
菊地 (笑)。
狭間 何のオチもないんですけど、話に。すいません。
菊地 いやいやいや…女子が甘い物の話してるってのは、それだけでエンターテインメントになりますからね。
狭間 (笑)。
菊地 充分(笑)。今相当、分数稼いだな…っていう気がしてんですけどね。
狭間 すいません。ジャズの話しなきゃ(笑)。
菊地 いやいや、ま…それはまた次の来日の時に、ゆっくり。
狭間 あ、じゃあまた呼んでください、是非。
菊地 はい、是非。
狭間 こんなんで…すいません。
菊地 ほんとに…貴重な価値なんですよね、チョコレートの話してる場合じゃないんですけど、ついついね。
狭間 いえいえ、とんでもない(笑)。
菊地 でも、狭間さんって…こないだそれこそ、一緒に和食屋でね。
狭間 はい。
菊地 あん時…美味しかったですよね。
狭間 美味しかったです。
菊地 ワタシの事務所の近所の荒木町に行ったんですけど。そん時ちょっと話出たんですけど。狭間美帆さんって…
狭間 はい。
菊地 「普段何聴いてるんだろう。きっとギル・エヴァンスとか、マリア・シュナイダーとか、デューク・エリントンとか…そんなんばっかり聴いてるに違いない。」って思ってる人は…
狭間 ンフフフ…。
菊地 まあ…少なくともジャズ村が…100人の村だったら(笑)…
狭間 はい。
菊地 なんかありましたね、そういう本。100人の村だったら、70人ぐらいそう思ってると思うんですよ。
狭間 はい。
菊地 狭間さんはなんと…アリアナ・グランデなどに代表される、アメリカ…USオーバーグラウンドのヒットチャートの上のほうの人も、結構チェックされてる…方。
狭間 なんか急に…思い始めたんです。「私は作曲をしているし、曲を作る職業をしているのに…」
菊地 はい。
狭間 「今現在この世の中で、いったい何が流行っていて何が売れているのか…何も知らないな。」と思って。
菊地 はいはい。
狭間 せめて…「じゃあ、聴くぐらいはしてみよう。」と思ったんです。
菊地 はい。
狭間 でもそうすると、ミュージックビデオをまとめてくれているサイトみたいなのがあって。
菊地 幾らでもありますよね。
狭間 そうなんです。で、それをこう…ビルボードのチャートみたいなので、20個まとめてちょっとずつ見せてくれる…みたいな。
菊地 なるほど。
狭間 そういうのを観るようにした、っていう話なんです。でもそこに必ずジャスティン・ビーバーはいるし、アリアナちゃんもいるし…
菊地 そうですね。いますね。
狭間 はい。
菊地 アリアナ・グランデは完全に、今シーズンからワンランク上のエロに行きましたよね。
狭間 そうなんです。…っていう話を…
菊地 しましたよね。
狭間 ひと通り盛り上がりましたよね(笑)。
菊地 盛り上がりましたし、僕が…狭間美帆さんとまさか懐石料理屋でこういう話をするとは思いもしなかったんですけど。
狭間 (笑)。
菊地 狭間さんが「最近のポップスとかヒップホップって、『サビでいかに何にもしないか』ですよね。」っていう話を振られて(笑)。
狭間 そうなんですよ。
菊地 「その通り!」っていう話になって。
狭間 これはでも問題だと思うんですけれどもね。
菊地 そうですね。
狭間 ビートだけで踊らせられれば何でもいいっていう音楽が、今蔓延したから…
菊地 はい。
狭間 そこで手を抜くんですよ。
菊地 そうですね。
狭間 そう。でもそれは…歌としては大変間違ってると思ってて。
菊地 なるほど。うーん。
狭間 だから…大体、今…Aメロだけの曲っていうのが最近発売されて、私はひっくり返ったんですけど。
菊地 あー、はいはいはい。
狭間 Aメロで…あ、またAメロだ…あっ、間奏だ…あっ!、Aメロだ…あっ!Aメロだ!…っていって、終わるんですよ(笑)。
菊地 ま…狭間さんの曲は…あっ!Aメロだ…Bメロだ…Cメロだ…Dメロだ…Eメロだ!…ってなりますからね(笑)。
狭間 (笑)。
菊地 逆に凄いですけどね。「多いなぁ!」っていう(笑)。
狭間 多かったっけ(笑)。
菊地 「多いな、狭間さん!」って思って、いつも聞いてるんですけど。
狭間 あ〜、ほんとですか。大変失礼いたしました。
菊地 だからやっぱり…狭間さんから聞いたら、Aメロしかない曲とか、ミニマル過ぎますよね。
狭間 ぶっ飛びましたね。こんな時代になったんだ…と思って。
菊地 なりましたよ。
狭間 それでビートとハーモニーが変われば、1曲。
菊地 そう。
狭間 儲かる…んですね、それで。
菊地 儲かりますよ。だって…大変な額が動くわけですから。
狭間 はぁ〜…困りましたね。
菊地 (笑)。まあ、そうですね〜。
狭間 作曲家…やる事無くなりますよ。
菊地 作曲家が不遇である事、CD売りが不遇である事。
狭間 (笑)。
菊地 NYにCD屋さんが1軒も無いっていうね。
狭間 ほんとです。
菊地 1軒も無いんでしょ。
狭間 ついに無くなって、「Forever 21」という洋服屋になりました。
菊地 もうCD屋としての不遇、作曲家としての不遇…そもそもジャズという不遇…という感じでですね(笑)。
狭間 私は一体何をやっているんだろう?
菊地 (笑)…三重苦のわりに、まあ…チョコレート食べ過ぎて、プチッと出てるわけですからね。
狭間 (笑)。
菊地 楽しい女の子でもあるわけじゃないですか。
狭間 はい。え…いやあ…楽しく生きています。
菊地 楽しく生きていらっしゃいますよねえ。
狭間 はい。
菊地 狭間さん、暗い顔してんの見たことないもんねえ。
狭間 (笑)。
菊地 あの…「鬼」は見たことあり…今日初めて見ましたけどね。あれは暗い顔とは別ですからね。
狭間 あ、そうですか(笑)。
菊地 暗くはないです、全然。ただひたすら恐いだけですけどね(笑)。
狭間 いや、恐くないですって(笑)。

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Jazz The New Chapter 3 (シンコー・ミュージックMOOK)
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