「デパートを制した男。」

「粋な夜電波」第369回放送は、「デパートを制した男」と題してデパートにまつわる音楽を選曲。
イセタニアンの菊地さんが、館内音楽を選曲した時期には伊勢丹になかなか行けなかったという話をされた部分を文字起こししてみました。

MR.LUCKY + MR.LUCKY GOES LATIN

MR.LUCKY + MR.LUCKY GOES LATIN



えーとですね、今回はまあ…音源集めが楽しかったっていうだけの理由で、いちおうテーマとしては「デパートを制した男」。
ワタシね、まだ記憶に新しいですけど、SPANK HAPPYの再デビューが、非常にありがたい事に三越伊勢丹さんの5月のグローバル・グリーンキャンペーンのキャンペーンソングとして採用されまして。
そのキャンペーン中には「夏の天才」…SPANK HAPPYの曲のみならず、館内音楽…これ夢だったんですよね。夢って簡単に叶っちゃうと、つまんないね(笑)
「つまんないね。」って言っちゃいけないですよね。大変光栄なわけですけども。
ぶっちゃけ行けなかったですね。期間中は。
期間の…今日始まったって時と、終わりって時に、せめてODと一緒に記念撮影しとかないと、何も残さないってのもなんだから…っつって、さすがにそれは行きましたけど。期間中は恥ずかしくて行けなかったですね。自意識過剰だって言われるかもしんないですけど。
ほんとはね、ニンマリしたかったんですよ。もうワタシが「イセタニアン」になって40年以上経ちますからね。
伊勢丹エスカレーター上りながら、さっき聞いたばっかりのね…「ヘンリー・マンシーニの『Mr. Lucky』とか聞くんだ!」…ていうね。「デューク・エリントンとか聞いていくんだ!」…っつって。
こう…頭の中ではそれこそ架空消費じゃないですけど。
デパートってのはね、今では当たり前ですけど、買わないんだけど、頭の中で「あれ買って、これ買って…。」って、みなさん計画して楽しんだりするでしょ。そういうその…自己沈潜っていうか、人間が自分の中に閉じこもっていくいうことの、きっかけの一つですよね。その…架空消費は。それはデパートが出来るまでは、この世に無かったわけですよね。
ま、一番人間を自己沈潜させて、集団から切り離した物は、書物だって言われてますけどね。
だからまあ…電車の中でiPhone…ワタシの世代だったらウォークマン、「あんなもんかけてるんじゃねえ!」とかいう問題じゃないですよ。最初から人間はね…グーテンベルグの頃から、自分に閉じこもる…っていうね。そいで外側の掟から隔離されて独りになっちゃうっていう生き物なんで。今さら止められないわけですけども。ま、そんな話はともかく。
やっぱね、本当に子どもの頃からの夢。で、子どもの頃からの夢が叶うと、やっぱり人間…感無量っていうかね…っていう感じになって(笑)。その…感動したりするものなんでしょうけど、やっぱ舞い上がっちゃって。
「これとこれとこれをかけてください。」っつーんで。で、「これが伊勢丹で流れたら最高だ!」って思ったものをいくつか集めて…ね。自分が聞きたいやつですよね。
で、さらにそのうえに、自分と…自分だけじゃないODと共作ですけど…一緒に作った曲が流れて、自分の歌が流れるわけですよね。さらには御丁寧なことに、なんか余所行きの声出しちゃって、「5月は爽やかな夏の気分…。」とかって(笑)…今、真似しようかと思いましたけど、長くもたねえなと思ってやめましたけど。比較的眺めのテメエのナレーションが、周期的に流れるんですよ。
で、その期間中はね…やっぱ恥ずかしくて伊勢丹行けなかったですね。はい。
長い伊勢丹活動を、自分が選曲してた時には行けなかったってやつですけどね。
ワタシはあれですよ、ほんとに伊勢丹ファンが高じて、今無くなっちゃったんですけど、「伊勢丹通信」っていう小冊子が上顧客用に…伊勢丹カード持ってる人かな?…用に配られる小冊子があったんですけど、それで唯一署名でエッセイ連載した人間でもあるんですよ。だから、結構なイセタニアンだったんですけど。
「だから、SPANK HAPPYのタイアップが来た。」とか、そういうふうにね、話がきれいに繋がってないんですよね。いろいろ企業もでかくなると、いろんな事が別口でね、別々の方角からいろんな話がきたりするんで。だから別口だったんですけど。
まあまあまあ…その期間も終わりまして、やっとワタシが自分の中で…「自分が伊勢丹の館内音楽とキャンペーンソング!」とかいって…わちゃわちゃしてる時期も終わって、落ち着いてきたといったところですけどね。はい。
その時に選曲したもう1曲、これなんかは…
さっきのね、「Mr. Lucky」は絶対バッチリ合うじゃないですか。現に去年の冬のバーグドルフ・グッドマンで流れてたんだもん。だから…やっぱNYはNYでいい選曲しますよね。こういうのはベタですよね。で、ベタがあったら、やっぱり外しがないとダメなんで。
で、この曲はね、一見ちょっと暗いしアバンギャルドな…naomi & goro & 菊地成孔…ワタシもちゃっかり入ってるんですけど。「calendula」ってアルバムが出てて。
懐かしいですね、震災の時が製作中だったんで。HDが余震によって何回も…
あ、今日ね、この事最初に言おうと思ってたの。
この番組は、どこか…日本のどこかで、ま…世界…日本の外でもですけど、なんか大きな災害があった場合は、鎮魂のために…たくさん人が亡くなった場合とかね、鎮魂のためにDJをやって。熊本の時やりましたよね。…やったりしたもので、それがこの番組のマナーになってました。
大阪の被災された方、ほんとに…何と申しましょうか、軽口は叩けないですね。ただ、ワタシは信じています。大阪の皆さんが、辛気臭い…なんか重々しいDJよりも、楽しい話のほうが好きだろう、と。和むだろう…という判断をもって、今日は相当雑な面白おかしい話をする回にね(笑)…しましたけども。大阪に届け!という…ね。
ま、大阪から一番遠い文化圏というかね、極東ですからアタシ。東京より東ですからね。日本の最東端、一番最初に日の出が見える街ですからね。一番最初に日の出をイルカと一緒に見る場所です。ええ。子どもの頃は、そのイルカも食ってたりしましたからね(笑)。今の常識じゃ考えられませんけどもね。
ま、そういう一番極端な…西の都、んで…最東端の漁師町の人間として、「大阪に届け!」という気持ちでやっておりますが。
これはね、外しの曲ですね。「これがデパートに流れたら、暗くなっちゃうんじゃないの?」と思うかもしれません。でも、想像していただきたいんですけど。特に新宿本店に行かれる方は、そうですね…楽しい曲の合間に、これがちょっと…そうですね…「ReStyle」とかね。「ReStyle」はちなみに…伊勢丹が誇るセレクトショップですけどね。「ReStyle」の一角、あるいはそうですね…「コム・デ・ギャルソン」とかね。あるいはそうですね、日本人の…パリ・コレで展開してても、日本人がやってるブランドあたりで、これが流れたりすると、ちょっといい雰囲気。買い物してても、ゾクゾクするんじゃないかな〜っていう感じで選曲しました。ブリジット・フォンテーヌの曲です。naomi & goro & 菊地成孔で、アルバム「calendula」より、部ブリジット・フォンテーヌ作曲の「Brigitte」。


calendula

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