「ハロー・グッバイ。」

TBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」第387回放送。
番組冒頭の前向上で、急遽重大発表。
ついに黒幕もマイクの前に現れた、トークの一部を文字起こししてみました。

いやあ、いきなりお寒うございます。寒暖差激しいですよね。
赤坂だけかしら?…でもなんか、思えば…ですよ。「最近は異常気象ですねえ。自律神経がやられっぱなし。」みたいな話って、ここ20年ぐらい、ずっと言ってるような気がするんですけど。どうでしょうね。
「観測史上、初」とかなんとかね。「ゲリラ豪雨」とかね。もう、どんだけ聞いたかね。
ま、ただ20年経てばね、どんな異常も正常になってくるもの。我々は異物や異常性を飼い慣らして、当たり前の事にすることを繰り返してるだけの生物ですよね。
だから、この20年間ってのはつまり、00年代と10年代ってのは、気象が異常になってゆく事が定着してくる20年間だったような気がしますよね。
気象に対する日本人の遠い記録っていうか、さほど遠くないですけどね、まあまあまあ…ある極地じゃなくて都市部ね、街と言いますかね、CITYが持っていた記録がありますよね。「しとしと雨」「急なお湿り」「打ち水に虹」…なんつってね。打ち水は、まあ…気象じゃないですけど。「汗ばむ程度の夏の日差し」「梅雨時」「天気雨」「寒の戻り」ってのはね、粋でいなせな…そして全体的に軽くてシュッとした感覚をね、もっとエグい、ドラスティックなものにしましたね。この20年間でね。
それは環境と人類の関係なわけだから、下部構造的であって、マルクス的に言うと。「マルクス」なんて、この番組で初めて言いましたけどね。つまりは、事の全域に渡るわけですよね。
気候と…天候と我々の関係が、粋でいなせなものからドラスティックでエグいものに変わってしまったというのは。
ま、要するに、古来東京のシティボーイ達の国是だった「粋でいなせ」なんてことは、もう完全な寝言になっちまって、平成と共に終わるって感じですよね。
で、平成だって、もうさ…残すところあと少しだっていうのに、もう安室ちゃんとさくらももこさんで「平成ロス」してるわけですからね。今、昭和の話なんかしてる年寄りってのは、昭和の時代に明治の話してた剛の者と一緒ですよ(笑)。はい。二つ飛ばしっていうね。


はい。と、ここで突然ですが、番組から…これはね、おそらくね…番組史上最大だと思うんですよね。重要な告知がございます。
え〜…みなさん、落ち着いて聞いてください。落ち着いてお聞きください。
特にこの番組に依存形質ができつつあった皆さんね、ショックを受けやすい方とか、気が弱くてすぐに怒り出す方とか、鬱病質で全身の力が抜けやすい方とか、パニックで過換気を起こしやすい方とかね、お気をつけてください。お気をつけてください。
今から心臓にちょっと悪い事を言うからね。はい。「救心」持って。「救心」(笑)。
「救心」が歌舞伎町とかにあるマツモトキヨシで、箱買いされて…爆買いされて、何箱も何箱も…大陸からの観光客の方が「救心」を買ってたって話も懐かしいですけどね。シーズン6ぐらいにしましたけれども。
はい。「救心」持って、水持ってね。アタシは薬は水無しで飲みますけども。はい。
当番組「菊地成孔の粋な夜電波」は、この12月いっぱい…年末をもって終了します。
はい。長い間ありがとうございました。
今シーズンではなくて、今年いっぱい…年内いっぱいということは、これはまあ…実質上のですけど、打ち切りですね。
いやあ…8年間ね、やりたい放題やりまして(笑)。「いつクビになってもいいや。」とは思ってましたけどね。ええ。
ワタシは…なんての?…預貯金も無いですし、宵越しの金も持たないタイプで、「明日の我が身もどうなるものや。」といったような…ま、それほど格好良くないですけどね。どっちかっていうと、そういうタイプですけども。
だから番組のほうも、「こんだけ好き放題やってるんだから、いつ肩叩かれても仕方ねえな。」と思いながらやってきたんですけど。
何て言うか…因果ですなあ。
アタシ、1年しか続かなかったJ-WAVEも、1年半しか続かなかったTFMも、打ち切りでクビ刎ねられてるんで(笑)。
ま、正直…こっちが「打ち切り上等」過ぎたんですけどね。どっちもね。
多分ね、1回目で同じ事言ってると思うの。「今日から始まるけど、やがてクビ切られると思います。」っていうのを、1回目の口上で言ってる気がしますね。同録の記録見てみないとわかんないですけどね。
まあ…先ほども申し上げましたJ-WAVEもTFMも、内容が「打ち切り上等」過ぎたんですよ、とにかく(笑)。
だから、まあ…腹の底ではきっと、好きなんでしょうなあ…打ち切られるのが。
ともあれ、最近アタシがずっと…これはシャレですけど、「数字を下げたい。」とかね、番組の中で。あるいは「自由に甘えて、例えばニッポン放送で『粋な夜電波』やって、気楽に戻ってきたい。」とかね。ま…シャレにしてもっていうかね、半分以上シャレじゃないんですけど(笑)。
マイク前で面白おかしく言ってきたんで、純朴な方なんかはね、「そんな事言ってて、菊地が怒られたんじゃないか。」とか、あるいは「菊地が本当は内心もう辞めたくて、降りたいに違いない。」とか思われると、第一に事実とは全然違うんで。
ま、あとほかにもね…「体調を崩したじゃないか。」とかね(笑)。この年になると言われたりしますけどね。
とにかく、いろんな憶測が飛びまくっちゃっているんですけども、あの〜…普通に終わるんですよ(笑)。
なので…まあ、アタシが何言ったところで、憶測する方は憶測するんでね。ええ。
というわけでですね、もうこんな時しかこんな事は出来ない…という、ラジオの常識をね、破りたい(笑)。AMラジオの…今はバイウェーブですけど…AMラジオの常識を破り続けた番組、横紙破りの反逆児としましてですね。ここは当然、黒幕ことプロデューサーの長谷川さんにマイク前に来ていただくということに相成りました。
長谷川さんよろしくお願いします。

長谷川P よろしくお願いします。
菊地 はい(笑)。
長谷川P こんな事でプロデューサーとして初登場するのは…大変忸怩たる思いがありますけれども。
菊地 とんでもございません(笑)。すごい面白いです。長谷川さんが喋ってるって事自体が。
長谷川P はい。あの〜…まったくそういう…何か特段の事っていうことではなくて、ましてや菊地さんが何か…
菊地 はい。
長谷川P 暴れた…とか。
菊地 問題を起こしたとかね。はいはい。
長谷川P そういうことでは…まったく、全く無くてですね。あくまでも、まあ…通常の編成上の判断です、と。
菊地 はいはい。
長谷川P …ということになります。
菊地 まあ、あの…よく言うところの「上の判断」っていう(笑)。
長谷川P まあ…。
菊地 なので、あの…ほんとに、何て言うんですかね、こういう時ってのは陰性になる方はね、文句言う方とか、特に番組ずっと聞きたいっていう人…それはいるでしょうから。ま、いらっしゃるでしょうけど、ま…ワタシは、忸怩たる思いは…あんま無いっていうか、いい子ぶるわけじゃないですけど、8年間好きなだけ好きな事やらしていただいたんで(笑)…まあまあまあ、もう十分だとも言えますし。ま、そういった話はのちのちゆっくりということで。いずれにせよですね、黒幕が事情の説明に出て来るっていうのは(笑)…どんな世界でも無いんで。
長谷川P はい。
菊地 黒幕ってのは、外に出て来ない人が黒幕なんで。これは番組史上初めてなのはもちろんですけど、下手するとTBS史上初めてかもしれないですね。出たことあります?
長谷川P あ、実はね、けっこうTBSラジオはスタッフが出がちだったりするんで(笑)。
菊地 (笑)。あ、そうか。ヤシマ君がコントやってるんだもんね。
長谷川P そうですね。ま、この番組では僕は出た事が無かったんで。今まで他の番組では時々出たりはしてたんですが。まあ、少なくとも特にこんな事情で…
菊地 はい。
長谷川P プロデューサーとして出るのは…ま、史上初ですね。
菊地 観測史上初って感じですね。
長谷川P はい。
菊地 では初めて尽くしにダルマの目が入る瞬間と言いましょうかね。事情を説明しに来たプロデューサーに、今夜の1曲目の曲紹介をお願いしたいと思います(笑)。
長谷川P …この曲ですか。
菊地 はい。
長谷川P え〜…The Beatlesで、アルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」より、「Hello, Goodbye」。

(曲)

はい。ワタシ…縁起でもねえんすけど、番組が始まった時から…第一回目から、「もしこの番組が何年後に打ち切りになるんだったら、この曲最後にかけよう。」と決めてました(笑)。
それでは、東京は港区赤坂、力道山刺されたる街よりお届けしております。TBSラジオ菊地成孔の粋な夜電波」シーズン16、387回。番組終了まであと10回。今日からカウントダウン・ラジオということで…面白え〜(笑)。
「ちゃんと真面目にやってればよかった」かって?…「まっさかー!」って感じですよね。
はい。自由にいきましょう。それがいかに難しくてもね。
「ちゃんと(C)まじめに(M)」…CMです!

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